上司にとって、部下と何気ない雑談を交わすのも仕事のうち。打ち解けた会話を通じて、部下の意外な一面や適性を発見したり、職場の士気やチームワークが高まったりなど、雑談にはさまざまなメリットがあります。

とはいえ、上司がよかれと思っての雑談が、実は、部下にとっては重荷だったり、人心掌握どころか逆に部下から嫌われる結果を招いたりすることもあるようです。自分は相手と距離を詰めるつもりが、相手からはますます敬遠される……。そんな勘違い上司にはなりたくありませんよね。

そこで、今回は、コミュニケーション講師の吉井奈々さんから、できる上司は絶対にやらない雑談のNGパターンについて教わりました。

できる上司は絶対やらない「部下との雑談のNG」10選

■1:相手の趣味をジャッジするのはNG

趣味は人それぞれ
趣味は人それぞれ

雑談の流れによっては、お互いの趣味に話題が及ぶこともあるでしょう。その際、絶対にやってはいけないのは、相手の趣味を自分の価値観でジャッジしてしまうこと!

「読書やゴルフなど、仕事に結びつきそうな趣味だけを良しとして、それ以外の趣味を低俗なものを決めつけてしまうのは、やめましょう。

たとえば、部下が昼休みにスマホでゲームをやったり、漫画を読んだりするのを見かけて、『えっ、いい歳をした大人なのに、ゲームなんかやるの?』とか『漫画ばかり読んでないで、たまにはビジネス系の本でも読んだら?』などと、部下の趣味に難色を示すなどです。

趣味というのはプライベートな領域なわけで、部下にしてみれば、余計なお世話以外の何物でもありません。部下の趣味が自分とは合わないと感じたら、その思いは心の内にとどめておくこと。わざわざ説教じみたことを口にしても、煙たがられるだけだと心得ましょう」(吉井さん)

後述のように、相手におもねる必要はありませんが、自分の価値観のみを基準に部下の趣味に難癖をつけては、「頭の固い上司だな」と思われかねませんよ!

■2:昔の芸能人などを過度に持ち上げるのはNG

昔のスターはすごかった?
昔のスターはすごかった?

10歳以上、年の離れた部下と話していて、「えっ、それ知らないの?」とジェネレーションギャップを感じることはありませんか? そうしたときのNGは、昔を過度に礼賛すること。

「テレビ番組の『さんま御殿』などで、昭和生まれの芸能人と平成生まれの芸能人が、“世代対抗トーク”をやっていることってありますよね。『え~っ、そうなの!?』というジェネレーションギャップは、なかなか興味深いもの。

もちろん、職場の雑談でも、ジェネレーションギャップネタで盛り上げるのはよいかと思います。しかし、この手の話題では、上司が部下に対してマウンティングをとって、面白がっているのは上司だけ……という残念なケースが、往々にして見られます。

たとえば、『昭和のアイドルは本当に華があって、これぞスター!って感じだったのよ。それに引き換え、最近のアイドルってよくも悪くも親しみやすいというか、芸能人オーラがないよね』など、自分がよく知っている昔を過度に持ち上げて、現在をディスるなどはご法度。

はっきり言って、部下にしてみれば、『だから何?』という感じです」(吉井さん)

当時は当時。今は今。心の内で「昔はよかった」と思うのは自由ですが、それをうかつに口にするのはやめましょう。

■3:若者文化に媚びるのはNG

トレンドを無理に追いかける必要はない
トレンドを無理に追いかける必要はない

「さきほど、昔の芸能人などを過度に持ち上げるのはNGだとお伝えしましたが、逆に、今の若者文化に合わせようとしすぎるのも痛いものがあります。

もちろん、上司本人が『へぇ~、今ってこんなの流行っているんだ』と好奇心をもち、純粋に楽しむのは問題ありません。

NGなのは、本当は興味も関心もないのに、無理に若者文化になじもうとすること。心が若いアピールなのか、若者へのゴマすりのつもりなのか、歯を食いしばってTikTokで踊ったり、好きでもない原宿のタピオカ店に並んだりするのは、おすすめできません。

本当は楽しくないのに無理に合わせている感は、おのずと相手に伝わります。若い人たちが雑談で盛り上がっているところに、『それ、私も知ってる~。いいよね!』と強引に入ろうとしては、部下としては息苦しさを覚えてしまうでしょう」(吉井さん)

上から目線になるのでもなく、おもねるのでもなく、フラットな立場で雑談を楽しみましょう。

■4:自己啓発的なことを語るのはNG

勉強自慢はほどほどに
勉強自慢はほどほどに

「これは仕事への意識が高い上司ほどありがちなのですが、雑談のつもりが『私、学んでます』アピールにならないように要注意です。

たとえば、『先週の日曜日、●●のセミナーに行ってみたんだけど、すごく勉強になったわ』とか『この心理学の本、仕事にも役に立つのよ』とか、何かにつけ“成長”、“学び”について語りたがると、部下はマウンティングのように感じてしまうおそれがあります。

もちろん、部下のほうから、『~~さんって、どういう勉強されているんですか?』とか『おすすめの本はありますか?』と尋ねてきた場合は、気軽に答えてあげればよいかと思うのですが、部下から求められもしない情報の押しつけは控えましょう」(吉井さん)

■5:お金があるアピールをするのはNG

職場でお金の話は極力避けるべし
職場でお金の話は極力避けるべし

「雑談風マウンティングのもう1つのパターンは、“お金がある”アピールです。

『いや~、マンション買っちゃったんでローンがきついわ~』とか『この前、銀座で食べた焼肉、塩だけで食べるのが最高だったの!』などです。

同じ会社で働いているといっても、正直言って、今の20~30代の人は、なかなか昇給できず金銭的に厳しい人が多いです。その人たちの前で、大判振る舞いした話をひけらかすのは鼻につきます。

ましてや、『ローンはきついけど、やっぱり持ち家っていいものよ。だから、あなたも今のうちから貯金しておけば』とか『コンビニで安いものばかり食べてないで、もっといいもの食べないと体に悪いわよ』など、合わせ技で説教を繰り出すなど、もってのほかです」(吉井さん)

自分では自慢のつもりはなくても、相手にはそうとられてしまうことも、あるかもしれませんね。お金が絡む話題は、あまりエレガントでもありませんし、避けるのが無難です。

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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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