■6:むやみに仕事の激励をするのはNG

励ましが効果的かどうかは相手しだい
励ましが効果的かどうかは相手しだい

「人は誰しも期待されて悪い気はしません。ただ、今の若い世代では、上司からの期待をプレッシャーだと感じてしまう人もいます。

ですから、他愛のない雑談の最中に、『次の会議でのプレゼン、期待しているね』とか『例のコンペ、うちの社運がかかっているんだから、何が何でも勝ち取るのよ』など、むやみに仕事の激励をするのは考えものです。上司としては、部下を鼓舞しているつもりでも、相手は『今、それを言うか―』とうんざりしているかもしれません。

もちろん、“今の若い世代”とひとくくりにはできず、部下の個性は十人十色。上司の言葉に発奮する情熱系の部下もいないわけではありません。ただ、上司がよかれと思っての激励が、相手の心には響かなかったり、逆効果だったりすることはありがちだという点は、心にとどめておくべきでしょう。相手のタイプをよく見極めることが大事です」(吉井さん)

激励の言葉をかけたときの、相手の反応や表情をよく確認すること。気のないリアクションだったり、あるいは、声は明るくても目が笑っていなかったりする部下に対しては、過度な「がんばれ」メッセージを送らないようにしましょう。

■7:昔の武勇伝を語りたがるのはNG

昔と今では働き方も大違い
昔と今では働き方も大違い

「前述の激励の亜流ともいえるのですが、『私が君たちくらいの年齢のときはこんなにがんばっていたのよ!』という、“がんばっていた自慢”も禁物です。

たとえば、『昔は、連日残業続きで、ウィークデーは2時間睡眠とか当たり前だった』とか言われても、若い人たちにとっては、『へぇ、すごいですねー』としかリアクションのしようがないのでは?

そもそも、昔と今では、働き方が大きく変わってきているわけですし、過去の武勇伝を語るのは損しかありません」(吉井さん)

■8:ハラスメントのような発言をして「冗談だよ」と流すのはNG

知らずにハラスメントしていない?
知らずにハラスメントしていない?

「セクハラといえば、かつては男性が女性に向けてするものでしたが、現代では、逆のケースも十分にありえます。

たとえば、女性上司が男性の部下に対して、『彼女いるの?』としつこく尋ねたり、何かの拍子に『君、そんなんだから彼女できないんだよ~』と言ってしまったりなどです。

この手の発言は、相手が不快に感じている限り絶対にやってはいけないのは当然なのですが、さらにタチが悪いのは、相手の感情などおかまいなしに『冗談だよ』とか『ちょっと気にし過ぎじゃないの』など、自分の発言を正当化してしまうこと。

相手が嫌がっているのですから、冗談では済まされません」(吉井さん)

いわゆる“職場のいじられキャラ”的なポジションの部下でも、上司のいじりの度が過ぎれば内心では深く傷ついているおそれもあります。何でも冗談で済ますのは絶対にやめましょう。

■9:「今夜飲みに行かない?」と当たり前のように部下を誘うのはNG

「飲みニケーション」はもはや死語?
「飲みニケーション」はもはや死語?

「現在40代以上の人が新人の頃は、今よりも経費が潤沢に使えたこともあり、アフターファイブに上司と飲む機会が多かったのではないでしょうか。

そのときの常識を引きずって、『飲み会も仕事のうち』とばかりに、強引に部下を飲みに誘うのはやめましょう。

今の若い世代では、仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切っている人が多いです。もちろん、部下のなかには『奢りだったら喜んで♪』というちゃっかり屋さんもいるかと思いますが、『部下は上司と飲みに行くのが当然』という認識で、ぐいぐい誘うと部下に余計なストレスをかけてしまうおそれがあります」(吉井さん)

■10:「何かあったらいつでも相談してね」と安請け負うのはNG

「これは雑談に限らず、注意すべきことなのですが、上司の『何かあったらいつでも相談してね』は地雷フレーズ。

もちろん、本心から部下のことを気にかけていて、本当に部下から頼られたときに親身になれる度量があれば問題ありません。ただ、このフレーズは往々にして、真の部下思いではなく“優しい上司感”をアピールしたい人に使われがちなのが厄介です。

部下のためではなく、利己的な動機からの発言の場合、言行が一致しません。『いつでも相談してね』と言っておきながら、いざ部下からSOSを出された際、『えっ、そんなこともわからないの?』『それくらい自分で考えてよ』などと突き放したりダメ出ししたりするのは最悪なパターンです。

その場の気分で、『何かあったらいつでも相談してね』と安請け合いするのはやめましょう」(吉井さん)

部下にいいところを見せたいという邪心からリップサービスし、実際の行動が伴わないと、部下からの信頼を失う結果しか招きません。

最後に、吉井さんからワンポイント・アドバイスを。

「コミュニケーション全般に通じていえることですが、雑談においても『自分が逆に相手からこう言われたらどう思うか』という想像力をちょっと働かせることが鍵だと思います。

年代が違えば価値観や感じ方が違うのは当然。『あなたのことわかっているよ』と安易に共感を示したり、相手を勝手にジャッジしたりするのではなく、あくまで自然体、等身大で部下との雑談を楽しんでみては?」(吉井さん)

今回ご紹介した10種のNGパターンに、あなたに当てはまるものはありましたか? 部下との関係や職場の雰囲気をより良くしていくために、NGパターンはぜひこの機会に改善しましょう。

吉井奈々さん
一般社団法人JCMA 代表理事、コミュニケーション講師、コミュニケーションYouTuber、オトナの気くばり講座代表
(よしい なな)元男性でありながら、女性として結婚をして幸せを手に入れる。10代から水商売・ショービジネスの経営にも携わり、結婚を期に水商売を卒業し、現在はコミュニケーション講師として活躍する。日本全国の企業に呼ばれ、数多くの社員研修にて「現場で実際に使えるコミュニケーション」、スタッフの育て方、そして「自分を大切にするコミュニケーション」など教科書ではなくリアルな現場から学んだコンテンツを伝える。NHK・Eテレの教育番組「Rの法則」や、日テレ「解決ナイナイアンサー」レギュラー出演など、数多くのメディアに出演し、男女、年齢、職業問わず、数多くのクライアントの相談に応えている。毎週(水)(土)で発信しているYouTubeの映像は1日10万時間以上再生され、総再生回数は370万回を超す、コミュニケーションYouTuberとして多くの悩みに答えている。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美
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