ヘルムズデール Helmsdale[南青山]
大人のパブで味わう黄金色のエール
イングランドとスコットランドの代表的ビールと言えばエール。ロンドンの万国博覧会を訪れた世界中の人々が驚愕した、クリスタルパレスの輝きに象徴されるように、国家として発展し続けた19世紀中期の英国。エールは、その繁栄の波に乗って、市場を世界に大きく広げていった。
建国の父と称されたアメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンは、名を成す以前の18世紀前半、ロンドンで植字工として働いたことがある。
その頃の思い出として、英国の職人たちが朝から夜まで、ことあるごとに1パイントのエールを飲んでいたことを、驚きと共に自伝に書いている。産業革命によって労働者が都市に集まり、同時にエールの需要がうなぎ登りに増えていった時代でもあった。
大麦麦芽を原料にする英国伝統のビール、エールは、カロリーも高く食事を補うものとして、特に労働者の生活には欠かせない飲料とされていた。
ロンドン万国博覧会を経た1870年代には、ひとりあたりのエールの消費量は年間160リットル。ジンやウイスキーなどのスピリッツが6リットルだから、その量の多さは群を抜いている。その後も愛され続けたエールだが、1960年頃から急速に勢いを失う。世界的に流行した軽快なドイツ系のラガービールに人気の座を譲ることになったのだ。
「エールの悪口を言う人間はイギリス人の名に値しない」。
作家ジョージ・ボロー(1803〜81年)のこの言葉は、栄華に満ちたこの時代を生きた英国人たちが胸に刻んだ、誇り高きプライドとも言えよう。
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■Helmsdale ヘルムズデール
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- クレジット :
- 撮影/荒木大甫 構成・文/堀けいこ