元CAで、元ホテルコンシェルジュの菊地麻衣子さんは、現在はホスピタリティーマインドトレーナーとして活動している「接客の達人」。
たとえクレームが来ても、そのお客さんにリピーターになってもらえるくらい、その接客術に長けています。どんなお客様も、たちまち虜にしてしまう接客術のやり方とコツを、教えていただきました。
これが本物の接客!ダメ出しばかりのお客様が上顧客に
まずは、菊地さんの接客成功体験を伺います。
「私がいた会員制ホテルには、サービスや商品に対し、非常に目の肥えた厳しいお客様が多いです。ある日、コンシェルジュデスクに厳しいと有名なお客様がお見えになり、独り言のようにホテルのオリジナル商品を見ながら、駄目出しをされていました。
私はすかさずメモを手に取り『是非、ご意見聴かせてください!』と歩み寄り、たくさんの有効なご意見をいただけました。また自らクレームを取りに行った私を『あなた、変わっているね』と面白がってくださり、それ以来、私宛てにたくさんの宿泊予約をくださるようになりました。
結果、会員様のなかでも利用率上位の上顧客になり、独立した今でも私を応援してくださる、大切なお客様のひとりになりました」
心に留めておきたい!お客様からクレームが来たときの応対手順
このすごい体験談のなかで、菊地さんが応対していた接客術の詳しい手順を教えていただきました。
■STEP1:傾聴姿勢で状況を把握する
「お客様は自分の言いたいことを言い切らなければ、相手の言葉は耳に入りません。まずはしっかりと聴きましょう」
■STEP2:お客様の背景にある「痛み」を汲み取り共感する
「クレームは、ついお客様の怒りにばかり目がいってしまいますが、お客様がおっしゃりたいのは、自分の『残念』『がっかり』『不安』などの『痛み』です。そこに共感します」
■STEP3:謝罪をする
「謝罪をする際は、何に対して申し訳ないのかを明確にします」
例)「貴重なお時間を無駄にしてしまい、申し訳ございませんでした。」
■STEP4:解決案、代案の提案
「代案の提案は、早すぎると『そういうことを求めているのではない』と二次炎上を引き起こします。しっかり謝罪をしたうえで、代案を提案しましょう。その場で回答出来ないことは、『後日回答させてください』と申し出るのもひとつの誠実な対応です」
■STEP5:感謝と再利用の依頼
「クレームをおっしゃるお客様は、その場では虚勢を張っていても、少なからず、自分がクレームを言っていることに対して気まずい思いをされています。このことから、最後の感謝と再利用の依頼をすることが、リピーターにつながる最大のポイントです」
クレーム対応の最初の応対方法
菊地さんの応対手順を知ると、なんだか自分にもできる気がしてきませんか?
でも、クレームを最初に聴くときは、誰もが緊張するものです。そこでクレームがきたときの、最初の応対のコツを教えていただきました。
不満の声をあげるのは4%。いかに有難いことかという認識をもつ
「まず、『この人はクレーマーかしら』などと、『クレーマー』という概念をもたないこと。最初から何か賠償を取ってやろうなどと考えている悪質な方は、クレームをおっしゃる方の2~3%といわれています。
また、不満を感じても、声を出されるのは不満を感じた方のたったの4%です。いかに、声をあげてくださることが、その組織にとって有難いことであるかという認識をもつことが大切になります」
「是非聞かせてください」という姿勢で聴く
「動きとしては、可能であれば、お客様の目線よりも下の高さになるように膝を折り、こちらから『是非聞かせてください』という姿勢を取ります。メモを手にもつのも有効です。
そして適度な相槌を打ちながら、しっかりとお客様の話を遮らずに聞き切るという応対を最初にできるかが、その後の展開に大きく影響します」
「お客様をリピーター」にする5つの極意
クレーム対応の優れた方法を知った今、クレームを寄せてくださった貴重なお客様には、ぜひリピーターになっていただきたいものです。そこでクレームを寄せたお客様に、リピーターとなってもらうための極意を5つ、菊地さんに挙げていただきました。
■1:クレームになる前に、こまめに感想をうかがう
「普段から、お客様がお帰りの際などに『ご満足いただけましたか?』と感想を聴くことで、クレームになる前に、口を開いていただけます」
■2:クレーマーだという先入観をもたずに対応する
「声をあげてくださった方に対し、クレーマーだという先入観をもたずに対応をする。『面倒くさい』というような、こちらの感情を、お客様は敏感に読み取ります」
■3:その場しのぎのいい加減な回答をしない
「長いお付き合いのためには、時間をかけてでも『誠実』な印象をもっていただく必要があります。早くクレーム対応から逃れたいなどの一心で、その場しのぎのいい加減な回答をしないことです」
■4:次に利用する際には自分宛に声がけしてもらうよう伝える
「最後に改めて自分の名を名乗り、利用の際には自分宛に声がけして欲しいと伝えておきます。お客様情報を他スタッフに共有しておいても、気付けないケースが多いです。せっかくいただいたチャンスを無駄にしないよう、自分の顧客にしてしまいましょう」
■5:再会時には御礼と報告をする
「再度お会いできた際には、前回、声をあげてくださったことの御礼を改めて伝え、その後、どのような改善があったのか報告すること。これでファンになってくださること間違いなしです」
このリピーターにつなげる方法は、手順をシミュレーションしてみるだけでも、確かに効果がありそうな気がしませんか?
日々のお客様対応は、接客業のみならず、どの業種や職種でも求められること。ぜひ実践に生かしてみましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利
- EDIT :
- 安念美和子、榊原淳