「生命保険は受け取るタイミングで相続税が変わるって本当?」

祖父母から親世代へ、親世代から自分の世代へ、そして自分の世代から子の世代へ…。「相続」はいつかは必ず訪れることですが、なかなか事前に知識を備えておく機会、ないですよね。

そこでPrecious.jpでは2020年の幕開けに「知りたい相続!女性税理士に学ぶシリーズ」を短期集中連載します。相続・贈与・遺言のエキスパートである税理士の井口麻里子さんに、相続に関する素朴な疑問に全10回に渡り、答えていただきます。

第7回目は「生命保険は受け取るタイミングで相続税が変わるって本当?」です。

井口 麻里子さん
税理士
(いぐち・まりこ)税理士。辻・本郷税理士法人相続部に所属。富裕層の大規模な相続から、一般家庭のミニマムな相続、さらには国際相続まであらゆるケースに精通した相続・贈与・遺言のエキスパート。近年はあらかじめ作成すれば、要らぬトラブルを避けられる遺言の啓蒙に力を入れている。
井口麻里子のブログ

受け取るタイミングで相続税が変わるのは「リビングニーズ特約」

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生前に受け取ることができる「リビングニーズ特約」

こんな噂を耳にしたことはありませんか? 生命保険の契約によっては、相続税が増えてしまうというものです。井口さんに聞いてみると、それは生命保険の「リビングニーズ特約」に関わることだといいます。どういうことなのでしょうか? さっそく、解説してもらいましょう。

リビングニーズ特約とは?

「リビングニーズ特約とは、余命6か月の宣告を受けた場合に、死亡保険金の一部または全部を生前に受け取ることができる特約のことです。生前に受け取った分は、死亡保険金が減額されて支払われることとなります。生前に全額受け取った場合、主契約は消滅し、死亡保険金は0円となります」

リビングニーズ特約で受け取る給付金は、相続税の対象になる

「生前に受け取った給付金には、『心身に与えられた損害に起因して支払われるもの』として、所得税はかかりません。そのせいもあり『非課税ならたくさんもらっておこう』という気持ちになってしまうものです。

しかし、ここで大きな注意点があります。受け取った給付金が未使用で、つまり現金で残っていれば、それは相続財産として相続税の対象となるという点です。余命6か月の宣告を受けるような状況では、現実的には体の具合もあり、思うようにお金を使うことができないものです」

死亡保険金として受け取っていれば非課税に

「被相続人が亡くなってから受け取る死亡保険金には、『500万円×法定相続人』の数だけ非課税枠があります。例えば、法定相続人が妻と子ども3人の、合計4人のケースでは、『500万×4人』で2,000万円の非課税枠があります。

例えば、2,000万円の保険に入っていたとして、リビングニーズ特約で生前に全額の2,000万円を受け取り、まるまる使わないまま、現金として2,000万円を残して亡くなったら、2,000万円が相続財産となり、相続税の課税対象になります。

一方、生前にリビングニーズ給付金を受け取らず、2,000万円を相続開始時に死亡保険金として受け取ったら、非課税枠の範囲内のため、相続財産は0円ということになります。

せっかくの死亡保険金の非課税枠が使えず、単に相続財産として課税の対象となってしまうのは残念なので、リビングニーズ特約を使うときは、給付を受ける金額を計画的に検討しましょう」


親が生命保険を契約していれば、将来、リビングニーズ特約を使うケースもあるかもしれません。その場合には、ぜひこの内容を思い出しましょう。

相続について学ぶ全10回シリーズ、明日更新の8回目は「40~50代で親の生前贈与を受けはじめるべき?」という疑問にお答えしていきます!

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子、榊原淳
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