「高級宝飾といえばパリ」という印象があります。当然、パリには有名な「ヴァンドームのグランサンク(ヴァンドーム広場に本店を昔から構える5大ジュエラー)」、ヴァンクリーフ&アーペル、ブシュロン、ショーメ、メレリオ・ディ・メレー、モーブッサンがあり、王の宝石商の異名を取るカルティエがあります。

しかし、ことダイヤモンドに関していうと、忘れてはならないのがロンドン。ロンドンにはダイヤモンドの聖地的な場所として、Hatton Garden (ハットン・ガーデン)という場所があります。イギリスでも、高級宝飾ブランドの多くがロンドンの中心、Mayfair(メイフェア)のBond Streetに店を構え、「高級宝飾品を買うならBond Street」となった昨今にあっても、ハットン・ガーデンにはダイヤモンド商が軒を並べ、「ダイヤモンドといえばハットンガーデン」という印象が残っているともいわれています。

そのハットン・ガーデンに1880年代初頭に居を構えたダイヤモンドカンパニーが、今もロンドンにあります。同社の歴史をさらに遡るとその起源は1789年といいますから、フランス革命の年。その後ハットン・ガーデンに移転したのも、日本でいえば明治初期。つまり、現存する最古のダイヤモンド・カンパニーのひとつと言われています。

その名はBackes & Strauss(バックス&ストラウス)。今はメイフェアに居を移し、特にダイヤモンド・ウォッチのジャンルで、比類なきクリエイションを続けています。

高級ホテルや高級ブティックがひしめくロンドン中心Mayfair地区のGrosvenor Streetにあるバックス&ストラウスのブティック。
高級ホテルや高級ブティックがひしめくロンドン中心Mayfair地区のGrosvenor Streetにあるバックス&ストラウスのブティック。

英国王室のお膝元だからこそ誕生し得た、贅沢なダイヤモンドウォッチ

そんなダイヤモンド・カンパニーに今年(2017年)6月、私アンドリュー橋本が突撃取材! 社長のヴァルケス・カナジャンさんにインタビューさせていただきました。

インタビューの主旨は2点。

「ラグジュアリーをどう考えるか?」。そしてもう1点が「ロンドンに居を構える宝飾ブランドの持つ意味」。

これに対して、カナジャンさんの答えはあまりにも明快で、アンドリュー感動しました!

「ラグジュアリーとはどこにもないような最高の素材を使って、どこにもいないような最高の職人の手で、思いもしないような最高のものを生み出すこと」なのだとか。その答えに対するアンドリューの、「昨今ファッション界に多くみられるようになった、マーケティング型商品開発(顧客ニーズから商品構成や価格帯等を設定して商品をつくり上げる手法)とは、真逆の企業理念ですね?」の質問に「そのとおり!」と一言。

アンドリュー自身、マーケティング重視の傾向がファッション界に広がっている昨今の状況に疑問があったので、このカナジャンさんとのインタビューには胸のすく思いになりました。

これだから、バックス&ストラウスのダイヤモンド・ウォッチは度肝を抜くほどに輝き、理屈を超えた強烈なオーラを放つのかと、合点!

さて、もうひとつの質問、「ロンドンに居を構える宝飾ブランドの意味」に対する答えは…。

「最高の素材、最高の職人は、昔から王のもとに集まってくるものです。ここロンドンは英国王室のある地です」

なるほど! エリザベス1世のころより何百年もの間、世界一の王室として英国王室が居を構えてきたロンドンには、世界一の宝石が集まり、世界一の職人もそろっている! だからこそ、この地でしか生み出せない、真にラグジュアリーな宝飾品を生み出すことができるのだと!

写真中央の人物が、同社中興の祖=マックス・ストラウス氏。
写真中央の人物が、同社中興の祖=マックス・ストラウス氏。

ダイヤモンド・ウォッチがこんなに輝くなんて! 驚異的贅沢感!

ここで、今のバックス&ストラウスの商品について触れておきましょう。バックス&ストラウスは今、特にダイヤモンド・ウォッチのジャンルで、ほかのブランドを圧倒する注目を集めています。同社のダイヤモンド・ウォッチは「こんなにダイヤモンドがキラキラと輝くダイヤモンド・ウォッチは見たことない!」と言われます。カナジャンさんのインタビューでわかったことによると、そこには3つの秘密があったのです。

【秘密1】ダイヤの質にこだわっていること。一般にダイヤモンドの質は4つのCで格付けされます。クラリティ(透明度、不純物がどれくらい混じっているか)、カラー(完全に白いか、濁りがないかなど)、カラット(重さ、つまり大きさでもある)、カットの4つですが、バックス&ストラウスの場合、通常なら"もったいなくって時計に使わずにジュエリーにする"ような、質の超高いダイヤモンドを使用するのです。まさにハイジュエリークラスにしか使用しないような上質のダイヤモンドを使用して、ダイヤモンド・ウォッチをつくる! その思い切りのよさ、究極のラグジュアリーを求める姿勢に瞠目せざるを得ません。

「アイディアル・カット」を施されたダイヤモンドを散りばめた、まばゆいばかりの同社の腕時計。
「アイディアル・カット」を施されたダイヤモンドを散りばめた、まばゆいばかりの同社の腕時計。

【秘密2】ダイヤモンドのカットにあります。そもそも世界最古のダイヤモンド・カンパニーとして、ダイヤモンドのカットと研磨の分野で、ほかの高級宝飾ブランドの受注も受けていただけに、そのカットへのこだわりはなみなみならぬものがあり…。特に「アイディアル・カット」という、ダイヤモンドの輝きを最大限に引き出すと言われるカットにこだわっているのだとか。ところがこのアイディアル・カットは、ダイヤモンドの輝きにこだわるあまり、原石の55%から60%ほどを削って捨ててしまうのだとか。これまた、なんともったいないことを! なのですが、そうすることで極限までダイヤモンドの輝きを引き出したい! という、ダイヤモンドカンパニーとしての譲ることができない矜持が、そこにあるのです。

バックス&ストラウス社に保管された1900年代初頭の台帳。誰もが知る、数々の有名宝飾ブランドとの取引があったことがわかる。
バックス&ストラウス社に保管された1900年代初頭の台帳。誰もが知る、数々の有名宝飾ブランドとの取引があったことがわかる。

【秘密3】そのデザイン。通常の宝飾ブランドがつくるダイヤモンドウォッチは、「時計を美しく見せるようにダイヤモンドの配置を考えてデザイン」するのに対して、バックス&ストラウスでは「ダイヤモンドが一番美しく輝くように時計をデザインする」とのポリシーがあるのです。これまた、ある面非常識な発想で、「そこまでダイヤモンドのためにやるか!?」 と、アンドリュー、度肝を抜かれました。

*これにて前編終了・・・次回後編では、世界が注目する「ダイヤモンドのための、ダイヤモンドカンパニーによる、ダイヤモンドウォッチのヒミツ」というテーマで、バックス&ストラウスのダイヤモンド時計がいかにスゴいか、についてお送りする予定です。まっちょってくださいよindeed! でございます。

・・・では、夕陽が出たからさようなら・・・

 
 
この記事の執筆者
自称大阪生まれ、イギリス育ち(2週間)。広島大学卒(たぶん本当)。元『和樂』公式キャラクター。好きなもの:二上山、北葛城郡、入江泰吉、Soho Squre、Kilkenney、Hay-on-Wye、Mackintosh、雨の日、Precious、Don’t think twice, it’s all right.