日々の疲れを洗い流し、心身共にリフレッシュできる温泉旅。天然資源である温泉はその土地ごとの個性があり、ただ体が温まるだけでなく、全身の凝りがほぐれるのを感じられたり美肌に近づけたりなど、普段の入浴では得られないさまざまな恩恵をもたらしてくれます。
そうした温泉のポテンシャルをしっかりと実感できる近畿の名宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんがピックアップ。今回ご紹介するのは、和歌山県・湯の峰温泉にある「旅館あづまや」です。
世界遺産「つぼ湯」が目の前!江戸から続く名旅館で至高の湯に出合う
紀伊山地の奥深く、熊野古道の巡礼路にひっそりと佇む湯の峰温泉。開湯1800年の歴史を誇り、日本最古の温泉地として知られています。その湯の峰温泉に江戸時代から根差す老舗が「旅館あづまや」。熊野の豊かな自然と歴史、そして大地が育んだ極上の湯を心ゆくまで堪能できる宿として、国内外の多くの旅人を魅了し続けています。
「こちらの宿は、世界遺産『つぼ湯』から徒歩5分ほど。『つぼ湯』とは、湯の峰温泉の中心に位置する岩風呂で、世界で唯一の“入浴できる世界遺産”です」(植竹さん)


「『つぼ湯』は湯船の底から温泉がぷくぷくと湧き出ている希少な温泉。こうした足元湧出の温泉は空気に全く触れていないため湯の鮮度が抜群で、全国を見ても30あるかないかといわれています。
なかでも世界遺産『つぼ湯』は、“七色の湯”とも呼ばれ色が一日に何度か変化することもある神秘的な湯。利用は1組30分以内の先着順で、海外からも多くのゲストが訪れることから混雑時には数時間待ちになることもあるほどの人気スポットです」(植竹さん)


「その世界遺産『つぼ湯』と双璧をなす感動を提供してくれるのが『旅館あづまや』の温泉。泉質は、含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉です。さまざまな成分がブレンドされた効能豊かな湯は、硫黄の香りが高くツルスベ感もあり極上。とりわけ3本の自家源泉を贅沢に用いた内湯ではしみじみと湯のよさを実感しながら湯浴みできました」(植竹さん)

「内湯は、総槙造りの浴室。吹き抜け天井の太い梁が重厚さを感じさせ、開放感と同時に古き良き日本建築の風格を伝えています。源泉が92.5度と高温なため、大きさの異なる2つの浴槽のうち大きい浴槽は加水で湯温を調整していますが、もともと湯が濃いので薄めた感は全くありません。
そして、小さい浴槽の湯は、加水なしでじっくり冷ました源泉100%で成分がさらに濃厚。ノスタルジックな空間で湯の花も舞う歴史ある名湯にじっくり浸かることができて感無量です」(植竹さん)

「露天風呂は、日本庭園を専門とする京都大学教授の設計によるもの。こちらも風情たっぷりで、四季の移ろいを感じながら湯浴みを楽しむのに好適です。さらには、源泉が高温であることを生かして、温泉の蒸気を利用したミストサウナ(蒸し風呂)もあり、宿のこだわりとおもてなしの心が感じられます。硫黄の香りがたちこめるサウナで温泉のミストを浴びるのが実に心地よく、美肌湯治も叶えることができました」(植竹さん)

食事も温泉尽くし!名湯で調理したこだわりメニューが唯一無二の味わい
こちらの宿では古湯・湯の峰温泉の魅力を余すことなく伝えるべく、料理にもさまざまな工夫が凝らされていると植竹さん。
「紀州の梅を使った食前の梅酒は、温泉割り。ほのかに硫黄の香りがして、食欲も温泉旅気分も高まります。また、しゃぶしゃぶの出汁も温泉で、やや厚めにスライスされたブランド牛・美熊野牛が、温泉の成分によって柔らかくなり、とろけるような味わいです」(植竹さん)

「さらに、朝食のお粥も温泉仕込み。30分かけて常に空気を含ませるようにかき混ぜながら仕上げるというこだわりのお粥は、見た目的にも米がうっすらと黄味を帯びています。そして、口に含むとふっくら独特の風味が広がり、温泉の恵みを体内に取り入れる喜びをしみじみと噛み締めることができました」(植竹さん)

以上、湯の峰温泉「旅館あづまや」をご紹介しました。世界遺産「つぼ湯」にもほど近く、自家源泉の極上湯も楽しめるこちらの宿は、温泉好きにとって至高の環境です。次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先
- 旅館あづまや
- 住所/和歌山県田辺市本宮町湯峰122
客室数/全22室
料金/朝夕2食付き 2名1室1名¥18,150~(税込) - TEL:0735-42-0012
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)