世界各地にラグジュアリーリゾート、ホテル、スパを展開する「シックスセンシズ」。その初の都市型リゾートとして誕生した「シックスセンシズ シンガポール」は、築90余年の有形文化財をリノベーションした、2軒のホテル(「シックスセンシズ マックスウェル」「シックスセンシズ ダクストン」)からなり、歴史が息づく街・チャイナタウンを心ゆくまで満喫することができます。

【前編:シックスセンシズ  マックスウェルの楽しみ方】

2軒のうちのひとつ「シックスセンシズ ダクストン」は、チャイナタウンならではのオプションメニューをそろえていることも、こだわりのひとつ。さっそくそのサービスを利用して、中国の伝統文化を堪能できる街へと繰り出して参りましょう。妄想トリップのスタートです!

脈診や茶藝体験も。チャイナタウンの楽しみ方5

「シックスセンシズ シンガポール」の大きな利点は、2つのホテルを行き来して互いのレストランやファシリティを共有できること。2軒の距離は徒歩3分ほど。風情あるダクストンヒルの坂道を登ると現れる「ダクストン」は、インテリアデザインをかつて女優としても活躍したイギリス人デザイナー、アヌーシュカ・ヘンペル女史が担当。

黒とヴィヴィッドイエローを基調に、18世紀の英国スタイルと地元の伝統様式をミックスした空間は「マックスウェル」とはまた異なる趣があります。また、文化遺産の保護のため、全館に断熱ガラスを採用。過剰な冷房を防ぐことにもつながり、ここにもサステナブルの精神が息づいています。

ダクストンヒル通り
レストランやパティスリーが立ち並ぶ、風情ある「ダクストンヒル」を登ってもうひとつのホテルへ。

■1:予約の取れない人気店「Yellow Pot」でモダン広東ランチを!

まずはランチをしに、「ダクストン」1階のメインダイニング「Yellow Pot」へ。伝統的な広東料理をベースにしたモダンチャイニーズで、こちらも「シックスセンシズ」の理念に基づき、地元の農園からサスティナビリティ に配慮した方法で仕入れたオーガニック食材を使用しています。

yellow pot内観
店名の通り、店内には黄色の陶器がいたるところに。

ヘルシーでギルトフリーな広東料理とあって、瞬く間にシンガポールの話題店となり、今や予約困難なほどなのだとか。黒を基調にした店内は、黒漆で仕上げた中国式のスクリーン(衝立)や、鮮やかなイエローのシルク製ファン(扇)など、中国の伝統的意匠が効果的に使われたスタイリッシュな雰囲気です。

プレート
「Yellow pot」のテーブルセッティング。印象的なショープレートは、フランスの「LEGLE(レッグ)」のもの。

シェフを務めるのは、シンガポールの5つ星ホテルで腕を振るっていた実力派、セバスチャン・ゴー氏。できる限り無添加で仕上げる料理の数々は、どれも野菜やハーブがふんだんに使われ、ヘルシーな食べ心地です。

料理
伝統的な薪窯にこだわった「ローストダック」。パリパリ食感に感動!

たとえばシグネチャーメニューの「ローストダック」は、昔ながらの薪の火力で皮目をパリパリに焼き上げ、自家製梅ソースで仕上げた一皿。

もうひとつの看板料理「Steamed Barramundi(蒸し白身魚)」も、ふくふくと肉厚な白身魚にネギや生姜をたっぷり使ったソースをまとわせた上品な味わい。油っぽさなどのストレスは皆無、肉も魚もリッチでジューシーな味わいでいて食後感は軽やか……! なるほど、人気の理由も納得です。

モクテル
本日のモクテルは(左から)ベリー&ミント、アップル&シナモン。トッピングの自家製 ドライフルーツも美味。

そんなモダンカントニーズにぜひ合わせたいのがモクテル。優秀なバーがあるホテルは、やはりナチュラルトニックのクオリティも高いのです。こちら、瑞々しくてすごく美味しかった。

もちろんシロップやドライフルーツはホテルメイド、ハーブ類も屋上のガーデンで摘んだばかり。 「Yellow Pot」にもバーがあるので、陽が暮れたら「マックスウェル」のバーと交互に楽しむのも素敵です。

■2:ホーカーズでローカルフードを満喫!

豆花
ツルンとはかない喉越しが堪らない豆花。小豆などのトッピングがないのがシンガポール流のよう。

もちろん、チャイナタウンはローカルグルメの宝庫。「シックスセンシズ」のギルトフリーな食で身体をリフレッシュさせたなら、庶民派グルメも果敢にトライしたいところ。

シンガポールでも有数のホーカーズ(屋台が集まるフードコート)である「マックスウェル・フードセンター」は、ホテルから通りを隔ててすぐ目の前。かの有名な「天天海南雞飯店」などのチキンライスを始め、蠔餅(オイスターケーキ)やお粥など庶民派グルメが目白押しです。

デザートにオススメなのは日本でも人気上昇中の豆乳スイーツ「豆花」の人気店「老伴豆花」。大豆の風味が濃厚な台湾の豆花に比べ、こちらは軽くエアリーな食べ心地にびっくり!(そしてこれもまた美味)。

さらに、近くには老舗のプラナカン料理店「ブルージンジャー」もあるので、ローカルフードを網羅するにはまさに最高の立地です。

■3:シックスセンシズ エクスペリエンス1:脈診を体験

脈診ROOM
虎の壁画が描かれた「伝統中医学ルーム」。黒漆で仕上げた中国式の衝立が美しい。

さて、ランチの後は「シックスセンシズ エクスペリエンス」体験プランへ。ホテルが建つ土地の伝統文化を尊重し、発信することをポリシーにする「シックスセンシズ」には、シンガポールならではのオプショナルツアーが用意されています。そのひとつが中医学。

「シックスセンシズ ダクストン」の1階にはなんと「伝統中医学ルーム」があり、老師(先生)に診ていただけるのです。筆者はさっそく、代表的なメニュー「脈診」を体験。

脈診 問診
脈診による健康診断は予約制で58SGD(所要時間:15分〜20分)

まずは生年月日や体調などを書き込んで問診のスタート。簡単な質疑応答のあと、いざ脈診が始まります。先生は手首にそっと指をあて、指先にしばし集中。やがて静かな口調で告げられたのが「Eat Too Much, Drink Too Much(あなたは食べ過ぎ・飲み過ぎです)」。

ああ、フードライターの日常が瞬時に見破られる結果に。さらに旅先まで原稿の締め切りを持ち込んだ憂鬱からか、「身体が緊張して、呼吸が浅くなっていますよ」とも。老師には何もかもお見通し…なのでした。

脈診
いざ脈診。日頃の行いが見事に脈に現れていたようです。

最後に、適度に胃腸を休める工夫や意識して身体の力を抜くことなど、現在の体調を改善するためのアドバイスをいただき、診療終了。「伝統中医学ルーム」では、漢方の処方や鍼灸・指圧などのメニューも用意しているので、旅の疲れを感じたら訪ねてみるのもいいかも。

■4:シックセンシズ エクスペリエンス2:中国茶を学ぶ

「怡心軒」の入り口。ショップハウス越しには建築事務所「WOHA」が手がけたシンガポールを象徴するデザインホテル「Oasia Hotel Downtown」が見える。
「怡心軒」の入り口。ショップハウス越しには建築事務所「WOHA」が手がけたシンガポールを象徴するデザインホテル「Oasia Hotel Downtown」が見える。

次なる「シックスセンシズ エクスペリエンス」は中国茶体験。ホテルからすぐ、パステルカラーのショップハウスが連なるタンジョンパガーロード添いにある茶館「怡心軒」を訪ね、老闆(ラオバン/ご主人)のヴィンセント・ロウさんに中国茶の基礎を教えていただきます。

「シックスセンシズ」が「コミュニティ」を理念のひとつに掲げている通り、こうした地元文化に触れるご近所探訪ツアーも力を入れています。

茶葉
本日の茶葉は、左より白茶(白毫銀針)、青茶(台湾烏龍茶)、緑茶(龍井茶)、紅茶(雲南紅茶)。

さて、初級編レッスンの本日は、まずは中国茶の茶葉のレクチャーから。代表的な4種である白茶、青茶、緑茶、紅茶の茶葉を見ながら、それぞれの特徴や産地、味の違いを分かりやすく説明してくれました。

余談ですがヴィンセントさんの前職は銀行員で、一念発起して中国と台湾に渡りお茶の勉強を重ね、1989年にこの店を開いたのだとか。現在は娘のシャーリーンさんと共に店を切り盛りし、世界中から訪れる人々に中国茶の文化を伝えているそう。

ヴィンセント老師
老闆(ご主人)のヴィンセントさん。お気に入りの茶壺(チャフー/中国茶用の小さな急須)に茶葉を移し、功夫茶のスタート。

後半はお待ちかねのティーテイスティング。功夫茶(中国茶のお点前)でヴィンセントさんがお茶を淹れて下さいます。茶壺や茶海(ピッチャー)、聞香杯(香りを嗅ぐための茶器)や茶杯など、中国茶ならではの茶器を間近で見るのも楽しいはず。

茶葉は4種の中から気になるものを選べるので、台湾茶ラバーの筆者は凍頂烏龍茶をリクエスト。台湾烏龍茶の清香な風味に、心和むひと時でした。

茶杯
聞香杯から茶杯にお茶を移し、聞香杯から立ち上る香りを楽しむ。中国茶体験は1レッスン45分。事前にホテルから予約を。

レッスンは数種類ありますが、本日のような初級編なら中国茶ビギナーさんも安心。中国茶は茶葉の形状や発酵度、味わいもさまざまで、とても奥が深い世界。英語で受けるお茶のレクチャーもきっと新鮮ですよ。

■5:「コミュニティー」の精神は客室のお茶にも

ティーセット
客室で雲南紅茶を淹れてホッと一息。プラナカン様式のランプスタンドも美しい。

ゲストルームには中国茶用のティーポットと茶杯が常備され、茶葉もブーアールやジャスミンティー、雲南紅茶などがそろっています。

オリジナルの紙パッケージに入っているので一見わからないですが、実はこの茶葉が「怡心軒」のもの。客室でお茶を飲んで興味を持ったらすぐ、販売元のお店を訪ねることもできる。こんなところにも「コミュニティー」の精神が隠されていました。

客室_夜
陽が落ちたターンダウン後の客室もいい雰囲気。

チャイナタウンのど真ん中&低層階という環境ゆえ、時には夜半まで賑やかだったりするけれど、その喧騒すらもオールドタウンに泊まる醍醐味。

ヘリテージ(文化遺産)を、ラグジュアリーかつエコでヘルシーな空間に生まれ変わらせたホテルの手腕を楽しみながら、中心部の高層ホテルにはない、街との“コミット”を満喫する…。何度目かのシンガポールも、「シックスセンシズ」を旅の拠点にすれば、新たな魅力がきっと発見できるはずです。

外観夜景
「マックスウェル」の「シックスセンシズ ブラッセリー 」側からの外観とエントランス。

ホテル詳細

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PHOTO :
藤森陽子
WRITING :
藤森陽子
EDIT :
石原あや乃