テレビ東京 報道局キャスター・大江麻理子さんの"人生に刺激を与えた一冊"は『OPTION B 逆境、レジリエンス、 そして喜び』
<Story>
2015年5月、メキシコでの休暇中に夫を突然死で失ったシェリル。悲しみに打ちひしがれる彼女に、友人の心理学者は、回復するための具体的なステップを教える。
人生においては、最善の選択肢「オプションA」ばかりではなく、「オプションB」=次善の選択肢を選ばざるをえないときが、だれにでも訪れる。そのときに必要なのは、逆境や苦難から回復する力「レジリエンス」であり、それは、鍛えることができる。
著名心理学者アダム・グラントとの共著の形で、その過程をていねいに説く。
この本を読んだきっかけは、平日23時からの番組を担当するようになったこと
平日夜、23時からのニュース番組を担当するようになってから、私の読書時間はもっぱら深夜から明け方に。やっぱり、放送が終わった後は脳が興奮状態なので、しばらくは寝つけないんです。おかげで、「日が昇るのがずいぶん早くなったなあ」なんて、季節の移り変わりがよくわかるようになりました(笑)。
フェイスブックのCOO(最高執行責任者)であるシェリル・サンドバーグの『OPTION B』を読んだのも、そんな仕事終わりの明け方でした。
「伴侶の死という絶望から立ち直っていく姿に涙し、背中を押されました」
私は彼女のフェイスブックをフォローしているのですが、’15年に、彼女が最愛の夫を突然死という形で失った後にアップされていたとても悲しい文章も、その後に折りにふれ載せていた生前の夫との素敵なツーショット写真も見ていて、それが、とても心に響いて。
それで、この本を手に取ったんです。IT業界のトップキャリアであり、妻として、母として、これまでにもさまざまな困難を克服してきた彼女が、想像もできないような悲しみに向き合い、それを乗り越えていく姿は、感動的であり、勇気をもらえます。
タイトルの「オプションB」とは、「オプションA」(彼女にとってはキャリアを築き、夫とともに子供を育てるという最善の選択肢)がかなわなくなったときに選ぶ、次善の選択肢のこと。考えてみれば、人生は、オプションBの連続ですよね。
速く、大きく変化する時代、「意志ある楽観」が必要
特に今の時代は、すごいスピードで、しかも大きく変化しているから、「これまでどおり」が通用しない。かつての価値観や常識は変わり、新しく生まれたものについていくのも大変な世の中で、次々と目の前に現れる課題を、私たちは克服していかなければならない。
そんなときに必要なのは、鉄のような強さではなく、しなやかな、やわらかな強さなんだということが、よく伝わってきます。
なかでも印象に残ったのは、人が苦難に直面したときにとらわれがちな「3つのP」の話。
「自分だけが悪い(Personalization=個人化)」「この苦難は人生のすべてに影響する(Pervasiveness=普遍化)」「この出来事の余波は永遠に続く(Permanence=永続化)」という考え方が、立ち直りを妨げるのだということです。すごく納得しました。
フランスの哲学者、アランの言葉に、「悲観はムード、楽観は意志」という格言があるのですが、「意志ある楽観」こそが、この世界をサバイブするために必要だと、最近つくづく感じます。
年齢を重ねるにつれて積み重なってくるたくさんのあれこれに固執することなく、しなやかに自分の人生を歩んでいきたい。そう改めて気づかされた一冊でした。
こんな本も読んでます…
『生きて行く私』 著=宇野千代
恋に仕事にと、波乱の生涯を送った作家・宇野千代の自伝的小説。「思い立ったら即行動、今いちばん大切にしたいことを優先させる。とにかく自分に正直に生きた宇野さんの考え方は、真似できませんが、惹かれてしまいます」
『くま母さんちの家族絵日記』 著=吉川くま子
ツッコミ担当の娘、ボケ担当の息子、天然なダンナ。家族の日常を描いた絵日記ブログ『くま母もよう』を書籍化。「笑えて、ときにホロリと泣ける、おすすめの漫画。ブログも愛読しています。心が温かくなって落ち着けます」
※掲載した商品は、すべて税抜です。
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- PHOTO :
- よねくらりょう
- EDIT&WRITING :
- 樋口 澪・宮田典子・剣持亜弥(HATSU)、喜多容子(Precious)