あなたも「自分の経験や趣味を生かして起業してみたい」と思ったことはありませんか? ただ、昔よりも低リスクで始められるようになったとはいえ、やはり起業には“失敗”がつきもの。

米国公認会計士でビジネス書作家でもある午堂登紀雄氏によると、(1)最初に立派な事業計画書をつくる人、(2)最初に法人をつくる人、(3)最初にミッションやブランドづくりから入る人、(4)最初に組織づくりから入る人、(5)最初から商品ラインナップを広げて欲張る人、(6)本人の使命感や熱意がもてる分野ではなく、儲かりそうだからやる人、は失敗しやすいそうです。

それぞれ、どのような問題点があるのか? また、起業に成功するにはどのような秘訣があるのか? 午堂氏に解説していただきました。

起業で成功するには?

■1:最初に立派な事業計画書をつくる人が失敗する理由

起業するにはまずは事業計画書から……と考える人は多いのでは? しかし、午堂氏によれば、最初に立派な事業計画書をつくる人は起業に失敗しやすいとのこと。

「典型的な例としては、“3年後に黒字化”など、事業をまだ始めてもいない段階から、なんら根拠のない数値を出しているような例が挙げられます。

起業セミナーなどで、そうした書き方を推奨していることもあるようなのですが、商品やサービスがどれくらい売れるか、どれくらい利益が出るのかは、実際にやってみないことにはまったくわかりません。

いくら本人のなかで緻密な計画を立てたつもりでも、いざ事業を始めてみるとその通りにいかないことだらけなので、立派な事業計画書をつくる人ほど、起業が“夢物語”に終わりやすいといえるのです。

また、飲食店をやるなら流行のオーガニックで、店舗はこんなふうにして……など、自分のビジネスモデルに陶酔して、肝心の“集客”という視点がまったくない。こういうパターンも計画倒れに終わりやすいといえます」

午堂氏によれば、形から入りすぎるのはよくないようです。では、逆に、起業して成功しやすいのはどんな人物かというと……?

「たとえば、実際にあった例として、発展途上国にボランティアに行っていた人が、現地の人のニーズに応えようとしているうちに、事業に発展していったというケースもあります」

はじめに“計画ありき”ではなく、趣味やボランティアが結果的に事業につながり、それが成功するようなこともあるのですね。

■2:最初に法人をつくる人が失敗する理由

“法人のほうが、個人よりも信用度が高いので融資が受けやすい”……そんな説を聞いたことがないでしょうか? この点について、午堂氏は以下のように異を唱えています。

「スタート時点では法人のほうが融資を受けやすい、なんてことはありません。また、法人をつくることと事業の成否とはまったく関係ありません。最初に法人をつくる人は、ただ起業や社長に憧れているだけの“起業ごっこ”をしてみたい人に見られるパターンです。法人をつくるのは、事業を始めて軌道に乗ってからでも十分、間に合います」

具体的にはどのようなタイミングで法人をつくるのが適切なのか?についても、教えていただきました。

「ひとつには、事業が好調で人を雇う必要が出てきたときですね。雇われる側の一般的な感覚としては、個人よりも法人のほうが安心感がありますので、人材の募集をかけたときに、人が集まりやすいと考えられます。

もうひとつは、事業の利益が1,000万円を超える規模になったときです。これくらい利益が出ると、個人にかかる累進課税よりも法人税のほうが低く抑えられるので、節税の観点から法人化するのに適したタイミングだと思います」

■3:最初にミッションやブランドづくりから入る人が失敗する理由

「これから事業を始める、あるいは事業を始めたばかりの人が、Facebookに自分の社会的ミッションを書き連ねているのを一時期よく見かけたことがあります。立派なビジョンを並べているのだけれど、どんな事業をやっているのかというと、さっぱりわからない……。ただ事業家となっている自分を夢見ているだけの自己陶酔タイプです」

では、“ミッション”や“ブランドづくり”よりも、起業において大切なこととは?

「まずは売り上げを上げること。“商品やサービスが売れる=買ってくれるお客様がいる”ということは、それが誰かの役に立ったり、人をハッピーにしたりするからこそです。とすれば、逆に事業がもうかっていないということは、商品やサービスが誰の役にも立っていない、人をハッピーにするものではないということになります。

社会貢献よりも、まずは目の前のお客様の“ありがとう”を集めることが先なのではないでしょうか。企業の社会的ミッションのようなものは、事業を続けていくうちに、おのずと気づいていくものだと思います」

 

■4:最初に組織づくりから入る人が失敗する理由

「はじめに立派な容れものだけつくっても、中身が空っぽ。つまり、商品を売りたい、サービスを提供したいということよりも、まずは組織づくりから入って、結局、売り上げがさっぱり上がらず解散……という失敗パターンがあります。

“まず組織ありき”という姿勢ではなく、“事業の成長に合わせて組織づくりをしていく”ことが、大切だと思います。事業を始めてみて、それが軌道に乗り始めると、おのずと人手が足らなくなる。そこで初めて人を雇う必要が出てくるわけです。

さらに、人員が増えてくると、より効率的に事業を回すために、部署などをつくったほうがいい、ということになるかもしれない。このように、組織というのは、あくまで事業を行うための“手段”であって、それが目的化しては事業はうまくいかないでしょう」

■5:最初から商品ラインナップを広げて欲張る人が失敗する理由

牛堂さんの著書『33歳で資産3億つくった僕が43歳であえて貯金ゼロにした理由 使うほど集まってくるお金の法則』によれば、最初から商品ラインナップを広げると経営資源が分散し、全部中途半端になるとのことです。逆に、商品ラインナップを絞って成功した具体例を挙げていただきました。

「たとえば、飲食店を始める場合、ただの“健康食レストラン”とするのではなく、“ごま料理”に絞る。“エスニック料理”や“タイ料理”とするのではなく、“パクチー料理”に絞る。身近な一例を挙げさせていただくと、私の妻はボイストレーニングスクールをやっていますが、これは従来のよくある“ボーカル”レッスンではなく、“ビジネスマンの話す声”に特化したものです。

このように商品ラインナップを絞ると、小規模で始めることができますし、またその商品を必要としているターゲットにも届きやすいというメリットがあります」

■6:本人の使命感や熱意がもてる分野ではなく、儲かりそうだからやる人が失敗する理由

同書では、本人の想いが強くないと、ちょっと壁にぶつかるだけで頓挫しやすいと述べられています。つまり、起業に成功するには「使命感や熱意」が不可欠な要素であるようです。

「起業で成功するケースのほとんどは、本人の情熱だと思います。もちろん、例外的に、ものすごくセンスがある人なら、自分の熱い想いから始めるのではなく、儲かりそうという感触でビジネスに参入して成功させるというパターンもありますが……。

ただ基本的には、本人が好きな分野、楽しめる分野だからこそ長く続けることができて、結果的にうまくいくものなのだと思います。

起業すれば困難なことがたくさんありますが、はじめはうまくいかなくても、好きなことであればあきらめずに続けられる。その過程でたくさん失敗を重ねれば、経験値が貯まっていきますので、成功の可能性が高くなると考えられます」

まさしく“好きこそものの上手なれ”ですね!

午堂氏の解説によると、“起業して失敗しやすい”人というのは、事業の形にばかりこだわり、具体的な行動に移そうとしない、という問題点があることが見えてきました。また、具体的な行動を起こせないのは、「この商品、サービスでお客さんに喜んでもらおう!」という熱い想いに欠けているためであるとも考えられます。

逆に、ビジネスへの情熱があり、まず自分のできる範囲でアクションを起こしていく……。そういう人ならば、さまざまな失敗を重ねつつも、長い目で見ると成功をつかむことになるのかもしれませんね。

PROFILE
午堂登紀雄(ごどう ときお)

米国公認会計士。東京都内の会計事務所、コンビニエンスストアのミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして勤務。2006年、不動産仲介を手掛ける株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。2008年、ビジネスパーソンを対象に、「話す」声をつくるためのボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を秋葉原に開校。2015年に株式会社エデュビジョンとして法人化。不動産コンサルティングや教育関連事業などを手掛けつつ、個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動している。

『33歳で資産3億つくった僕が43歳であえて貯金ゼロにした理由 使うほど集まってくるお金の法則』午堂登紀雄・著 日本経済新聞出版社刊
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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