キリスト教のイベントといえば、クリスマスを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、クリスマスよりも重要とされる祝祭があります。それが「イースター」です。
海外では、通年ですと盛大にお祝いをしますが、日本でもイベントが開催されるようになり、認知度が上がりつつあります。
そこで本記事では、イースターとはどのようなものなのかをご紹介します。また、イースターの意味や由来、「復活祭」と呼ばれる理由、イースターはいつ行われるのか、「卵」と「うさぎ」との関連なども解説します。
■イースターの意味
イースターとは、日本語で「復活祭」と呼ばれるキリスト教のイベントです。このイースターは、キリスト教では、クリスマスよりも重要な意味を持つ行事といわれています。そのため、キリスト教圏の国では、イースター休暇があり、イースターの日の前後を挟んで連休になるところも。その休暇時期には、学校や仕事が休みになる場合もあります。
イースターの過ごし方は、一般的に、教会のミサに参加し、家族でご馳走を食べるのが習慣です。そのとき食べる料理には、ローストラムやハム、白の十字架が描かれた「ホットクロズバンズ」、卵形のチョコレートなどがあります。
また、イースターエッグと呼ばれる卵を使ったゲームや、うさぎの置物を飾ったりするのも風習のひとつです。
イースターの由来
イースターの由来は、イエス・キリストが起こしたとされる奇跡が関連しています。その奇跡とは、イエス・キリストが死から復活したことです。 イエス・キリストは、弟子であるユダに裏切られ、十字架にかけられ処刑されてしまいます。
しかし、「イエス・キリストは復活する」という予言どおり、3日後に復活したという奇跡を起こしたのです。この奇跡は、イエス・キリストが生涯で起こした奇跡の中で、最大の奇跡と考えられています。 この奇跡に、イエス・キリストの弟子たちは喜び、それが「イースター」というお祭りになったといわれています。
■イースターが「復活祭」と呼ばれる意味
イースターは、前述の通り、キリストが復活した日をお祝いするお祭りなので「復活祭」と呼ばれます。 英語では、「Easter(イースター)」と呼びますが、その由来は、古代ゲルマン神話の春の女神の名前「Eoster(エオストレ)」からきているのだそうです。
これは、イエス・キリストの復活と、春を象徴する女神のイメージが共通することから、と考えられています。エオストレは春の女神ですので、イースターには、春の訪れを祝う意味も含まれているようです。
イースターの呼び名
英語では「イースター」、日本語では「復活祭」と呼ばれますが、教派によってほかの呼び名があります。 正教会ではギリシャ語で「パスハ」、カトリック教会では「復活の主日」、プロテスタントなどでは「復活日」といいます。また、西方教会では、復活祭からの一定期間を「復活節」と呼ぶのだそうです。
■イースターはいつ?
イースターの日は2つあります。これは、教派による違いで、西方教会(カトリックやプロテスタントなど)と、東方教会(正教会など)とで日にちが異なります。また、どちらもその年によって日にちが変わります。どのように日にちが決まるのか、説明しましょう。
西方教会のイースターはグレゴリオ暦の日付
そもそも、イースターの日は西方教会でも、東方教会でも「春分の日の後の、最初の満月の日の翌日曜日」と決まっています。ただし、西方教会では、グレゴリオ暦を用いるのがポイントです。
グレゴリオ暦とは、1582年にローマ教皇グレゴリオ13世によって導入された太陽暦です。太陽暦は、現在、私たちが使っている西暦のこと。ですので、西暦を基に、「春分の日の後の、最初の満月の日の翌日曜日」を算出して、イースターの日が決まります。
2020年で算出してみると、 春分の日が3月20日。 春分の日後の最初の満月の日が4月8日。 最初の満月の日の後に来る最初の日曜日が4月12日。 よって、西方教会のイースターは、4月12日となります。
2020年から向こう5年間の西方教会のイースターの日は、
2020年は、4月12日
2021年は、4月4日
2022年は、4月17日
2023年は、4月9日
2024年は、3月31日
となっています。
東方教会のイースターはユリウス暦の日付
一方、東方教会のイースターの日の決め方は、ユリウス暦を使います。 ユリウス暦とは、紀元前45年に、ローマの英雄ユリウス・カエサルによって導入された太陽暦です。これは、1582年にグレゴリオ暦が導入されるまで使われていた暦で、旧太陽暦とも呼ばれます。
イースターの日は、「春分の日の後の、最初の満月の日の翌日曜日」というのは、西方教会と同じです。しかし、ユリウス暦は、春分の日が3月21日に固定されており、満月の日は一般的な満月の日ではなく、教会暦朔望表で決まります。 そのことから、東方教会の2020年のイースターは、4月19日となります。
2020年から向こう5年間の東方教会のイースターの日は、
2020年は、4月19日
2021年は、5月2日
2022年は、4月24日
2023年は、4月16日
2024年は、5月5日
です。 なお、2025年は、西方教会、東方教会も4月20日となります。
■イースターには、なぜ「卵」と「うさぎ」? その意味は?
イースターの時期に、カラフルにペイントされた卵や、うさぎのモチーフを見かけたことはありませんか? それは、イースターのシンボルとなっているのが、「卵」と「うさぎ」だからです。しかしなぜ、イースターに卵とうさぎがシンボルとなっているのでしょうか。その意味を解説します。
■イースターエッグの意味
イースターの時期に見かけるカラフルにペイントされた卵。これを、「イースターエッグ」といいます。イースターエッグは、生命の始まりや復活の象徴となっています。
これには、鳥が卵の殻を破ってこの世に誕生するように、イエス・キリストも、死という殻を破って復活した、よみがえった、という意味が込められているのだそうです。
イースターエッグは、カラフルにペイントされているのが特徴ですが、それぞれの絵柄や色に意味があるといわれています。
イースターエッグの色の意味
赤:キリストの血の色、太陽、幸福、情熱
オレンジ:強さ、力、持続 黄色:知恵、ひらめき
ピンク:成功 青:空、健康 緑:豊穣、子孫繁栄、あふれる希望
紫:信頼、忍耐 白:清浄、誕生、純潔
イースターエッグの絵柄の意味
星:キリスト、厄除け
太陽:生命、情熱、成長、富
木:繁栄
麦:豊穣
波:富、永遠
へび:魔除け、永続性
魚:キリスト教のシンボル
カエル:恵、女性、若さ、美しさ
農耕器具:土の恵み、結婚
イースターエッグの国ごとの装飾の違い
また、国によっても装飾の仕方にも違いがあるようで、
ドイツ:卵に色を染めて、木に吊り下げる
アルメニア:イエスや聖母マリアの絵を描く
ウクライナ:卵に蜜蝋で柄を描き、染色して、蜜蝋部分を取り除く
ルーマニア:ビーズで装飾する
などがあります。
イースターエッグのゲーム
キリスト教圏では、イースターエッグを使って、ゲームをする風習もあります。
そのゲームには、隠された卵を探し、誰が一番多く集められるかを競う「エッグ・ハント」、イースターエッグの殻を破らないように転がして遊ぶ「エッグロール」、スプーンの上にイースターエッグを乗せてゴールまで運ぶレース「エッグスプーンレース」などがあり、イースターの楽しみのひとつとなっているようです。
■イースターバニーの意味

なぜイースターにうさぎが登場するかというと、うさぎは1度にたくさんの子うさぎを産み、さらに1年に何度も妊娠と出産を繰り返し多産であることから、子孫繁栄を象徴すると考えられていることが由来です。世界的にイースターでうさぎが登場するようになってから、数百年以上の歴史があるといわれているのです。
このうさぎは、「イースターバニー」と呼ばれており、イースターエッグを運んでくるといわれています。イースターのシンボルとしてイースターバニーが登場する理由に、先程ご紹介した「子孫繁栄の象徴」という理由のほか、次のようなさまざまな説が伝えられています。
うさぎが子どもにプレゼントを届けてくれる説
クリスマスにはサンタクロースが子どもたちへプレゼントを届けてくれますが、それと同じように、イースターではうさぎが、キャンディやおもちゃなどのギフトを子どもたちに届けてくれるといわれています。
イースターの日には、庭に隠されたイースターエッグを探す遊びがありますが、これもイースターバニーが隠したものと考えられています。今でも子どもたちは大人から「うさぎがたまごを運んでくる」と教えられている国もあります。
うさぎが裁判官役だった説
ドイツでは昔、イースターの時期になるとうさぎが裁判官役となって、子どもたちの普段の行いを見て「良い子」「悪い子」のように評価していたという説があります。そのうさぎが、お菓子やおもちゃを子どもたちに届けていたことから、うさぎがイースターに定着したという考え方もあります。
うさぎが女神エオストレの使いだった説
もともとイースターのルーツは、ゲルマン神話に出てくる春の女神エオストレという話があります。エオストレとは英語で「Eostre」で、これにちなんで「イースター(Easter)」が始まったといわれ、イースターの語源と考えられています。
そして女神エオストレが使いとして従えていたのが、野うさぎでした。そのためイースターではうさぎが必ず登場するという説もあります。
■イースターバニーとたまご(イースターエッグ)の関係
ではイースターバニーとイースターエッグには、どんな関係があるでしょうか?
もともと女神エオストレに使えるウサギが、春の訪れに感謝して美しく装飾したたまごを贈ったところ、女神がそれを喜んだことから、イースターではイースターバニーが色とりどりのイースターエッグを庭のあちこちなどに隠して、子どもたちに贈り物としてあげるようになった、といわれています。
春の訪れを意味するイースター
当記事では、イースターの意味や由来、イースターが「復活祭」と呼ばれる理由や、各教派のイースターの呼び名をご紹介しています。
また、2020年のイースターはいつなのか、西方教会と東方教会のイースターの日はなぜ違うのか、イースターに「卵」と「うさぎ」が出てくる意味もチェックしてみました。
さらに、イースターエッグの色や絵柄の意味や、国ごとの装飾の違い、イースターエッグを使ったゲームやイースターバニーの意味も掲載しています。
クリスチャンではないとしても、イースターエッグやイースターバニーを飾ったり、イースターの食べ物を食べたりして、イースターを楽しむことができます。イースターで、春の訪れを感じてみませんか?
- TEXT :
- Precious.jp編集部