去る3月24日、時節柄クローズド空間で行われた「アジア50ベスト」の発表会場にルカ・シェフの姿があった。この日「ブルガリ イル リストランテ ルカ・ファンティン」はアジアで18位にランクイン。

これはアジアにおけるイタリア料理店として、またイタリア人シェフとしても最高位に位置する快挙だった。会場では母国イタリアへの連帯を表す「#andràtuttobene きっとなんとかなる」というパネルを手に、他のシェフたちとともに記念写真におさまるルカ・シェフの姿は感動的でもあった。

ブルガリが東京の病院に特製のランチボックスを寄付

銀座ブルガリタワー前に立つルカ・ファンティン氏。現在レストランは休業中だが5月6日再開予定で準備を進めている。
銀座ブルガリタワー前に立つルカ・ファンティン氏。現在レストランは休業中だが5月6日再開予定で準備を進めている。

その2週間後、日本における新型コロナウイルスの感染も増加を続け4月7日に緊急事態宣言が発出されると「ブルガリ イル リストランテ ルカ・ファンティン」も即座に閉店を決断。

5月6日再開を目指して現在休業中だが、ルカ・シェフは休業期間中も止まってはいなかった。スタッフを率いてイタリア料理を詰め込んだランチボックスを作成し、新型コロナウイルスと最前線で闘う病院に無償で配達を始めたのだ。

医療従事者の元に届けられたランチボックス

特製のランチボックスには生ハム、サラダ、ラザニア、ドルチェが詰められており、医療従事者の元に届けられた。美しいパッケージと料理は嬉しいサプライズだったはずだ。
特製のランチボックスには生ハム、サラダ、ラザニア、ドルチェが詰められており、医療従事者の元に届けられた。美しいパッケージと料理は嬉しいサプライズだったはずだ。

「ブルガリ お弁当プロジェクト Bvlgari Lunch Box Project」と題されたこのプロジェクトでは栄養・衛生面にも配慮し、イタリア料理で彩る弁当を製造・配送までを行うことを決定。東京都内の感染症指定医療機関で日夜戦う医療従事者を対象に4月22日より提供が開始された。

まず最初にルカ・シェフとスタッフが向かったのは東京都立駒込病院。ルカ・シェフ自らが車に積み込み、台車を押して医療従事者の元へ180食のランチボックスを届けた。翌23日には、同様に新宿の国立国際医療研究センター病院へ差し入れがわりのイタリア料理を届けた。今回の無償提供を受け、東京都立駒込病院の神澤輝実院長はこうコメントしている。

「新型コロナウイルスへの対応には、予断を許さない状況のなか、日々医療スタッフが真摯に向き合っております。そのような折、お弁当をご提供いただきましたことは、働く医療スタッフの励みとなり、一同、心より感謝申し上げます。みなさんの温かい気持ちに支えられていることに心から感謝し、大切な命を救うために、感染症指定医療機関として、多くの方のご期待に応えられるよう、これからも努力してまいります。このたびは誠にありがとうございました。これからも一緒に新型コロナウイルスと闘っていきましょう。」

ルカ・シェフ(左)とともにブルガリ ジャャパン社長ウォルター・ボロニーノ氏も配達を手伝った
ルカ・シェフ(左)とともにブルガリ ジャャパン社長ウォルター・ボロニーノ氏も配達を手伝った

ブルガリはこれまでにも積極的なCSR(企業の社会的責任)活動を実施しており、国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレンへは、パートナシップ締結後10年間以上で9000万米ドル(約97億円)の寄付を行うなど慈善活動にも率先的に取り組んてできた。今回の新型コロナウイルス撲滅活動に関してはイタリア国立感染症研究所デル・ヴェッキオ・パビリオンへ最先端の3D顕微鏡を提供する支援を行っている。また、ブルガリのフレグランス製造に於ける専門知識により、ICR 社(Industrie Cosmetiche Riunite S.p.A)とともに消毒剤を用いたハンドジェルを数十万本生産。イタリア全土の医療施設に配布した後、スイスの医療施設への提供も開始しているのだ。

4月23日には国立国際医療研究センター病院にも、医療従事者のためにブルガリ特製のランチボックスが届けられた。

今回のメニュー構成から実際の調理を担当したルカ・シェフは「仕事の枠を超え、生命を守る最前線で戦う医療現場の方々に敬意を表します。このプロジェクトはシンプルなイタリアンのメニューですが、私たちが常に大切にしている『季節』を感じていただけるよう、栄養価が高い旬の食材を中心にメニューを構成しました。医療現場の忙しいひとときに、少しでも、見た目と味で春という季節を感じ、すこしでもなごんでいただけることを願っています」とコメント。

なお、この活動は政府の緊急事態宣言期間中、週2回のペースで行われ、ルカ・シェフ特製のイタリア料理ランチ・ボックスが無償で届けられる予定だ。

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この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。