コンビニエンスストアで手軽に買えるものから、老舗の銘菓まで、バラエティ豊かな和菓子。繊細で上品な見た目や味わいから、外国人の間でも高い人気を誇りますが、当の日本人である私たちは、美しく食べることができているでしょうか?
お箸や洋食のカトラリーの使い方などとは異なり、和菓子の食べ方は誰かから教わることもありません。改めて考えると、自己流でOKなのか実は自信がない……という人が多いかもしれませんね。
そこで今回は、『さりげないのに品がある気くばり美人のきほん』の著者で、マナーコンサルタント・美道家のマナーズ博子さんから、和菓子の美しい食べ方のコツについて教わります。
Q&A方式で解説していくので、自分の食べ方を振り返りつつ、照らし合わせていきましょう。
今さら人に聞けない!「和菓子の上手な食べ方」7つの秘訣
Q1:和菓子に添えられている、太い楊枝(黒文字)の使い方は?
A1:生菓子などは、黒文字で左側から一口分ずつ切り分けます。利き手の指をそろえて黒文字を持ち、反対側の手は皿に軽く添えましょう。
羊羹や栗きんとん、おはぎなど表面がしっとりした和菓子を食べるときに用いる黒文字。使い方の秘訣はあるのでしょうか?
「黒文字を使って和菓子を食べるときは、左側から一口分ずつ切って食べます。利き手の指をそろえるようにして黒文字を持つと、美しく見えるでしょう。親指、人差し指、中指の3本の指で持ち、薬指、小指は添える程度にします。
また、黒文字を使う際は、利き手の反対の手の扱いに要注意です。和食のマナーでは、両手を使うのが原則ですので、利き手と反対の手は、皿に軽く添えるようにしましょう。あるいは、手のひらサイズの小さい皿であれば、手で持ち上げてもかまいません」(マナーズ博子さん)
Q2:大福はかぶりつかず、一口サイズに割って食べるほうがいい?
A2:可能であれば割って食べるとよいですが、かぶりつくのもマナー違反ではありません。懐紙でくるんで食べるとよいでしょう。
大福などは黒文字を使わず手で持って食べますが、かぶりつくのはマナー違反なのでしょうか? かぶりつかず、一口サイズに割って食べるほうが、上品という情報も見かけるのですが……。
「大福にかぶりつくのはマナー違反とはいえません。たしかに、かぶりつくよりも、一口サイズに割ったものを口に運ぶほうがきれいに見えるようにも思えますが、皮がもちもちと伸びて、うまく割れないことも多いのではないでしょうか。
その場合は、無理に割ろうとせずに、直接かぶりついてもよいでしょう。大福の粉が散ったり、口の周りを汚したりしないように、懐紙にくるむと美しく食べることができます」(マナーズ博子さん)
Q3:懐紙がない場合に、大福や最中を美しく食べるにはどうすればいい?
A3:粉が落ちないように、左手を下に添える手皿はNGです。お皿を手で持ち上げて食べましょう。
大福は懐紙でくるめば粉を落とさず食べることができますが、もし懐紙がない場合、美しく食べるにはどうすればいいのでしょうか?
「大福や最中は懐紙にくるまずに食べると、表面の粉や皮がポロポロこぼれ落ちるおそれがあります。それを受け止めようと、左手を下に添える手皿をするのはNGです。
和食では小さい皿は持ち上げてもよいので、粉や皮の食べこぼしが気になるときは、手皿をするのではなく、皿を持ち上げて食べるとよいでしょう」(マナーズ博子さん)
Q4:桜餅の葉は食べるほうがいい?
A4:葉を食べるか残すかはお好みで。残す場合は、食べ終わった後に軽く畳むようにしましょう。
桜餅など葉に包まれている和菓子は、葉ごと食べるほうがいいのでしょうか?
「葉を食べるかどうかはお好みしだいでしょう。かつて、食事のマナーでは、作り手の気持ちや立場を考えることを第一とするような傾向もありましたが、現在では、食べる側がいかに心地よくストレスなく食事を楽しめるか?が重要です。桜餅の葉も、食べたい人は食べる、食べたくない人は残す、というスタンスでよいと思います。
なお、葉を残した場合、広げたままにしておくのではなく、二折り程度に小さく畳むとよいでしょう」(マナーズ博子さん)
Q5:串団子は、串から団子を抜いて食べる? 串から直接食べる?
A5:串から団子を抜いて食べる方法もありますが、串から直接食べてもOKです。
串団子を串から直接食べるのはマナー違反に当たるのでしょうか? 串から団子を抜いて食べるほうがいいという情報を見かけたのですが……。
「串団子に黒文字が添えられている場合、黒文字を使用して串から団子を抜き、抜いた団子を黒文字に刺して食べるのが美しい食べ方です。とはいえ、串から直接食べるのがマナー違反というわけではありません。どのようにして食べるかは、周りに合わせるのが最善でしょう。周りに合わせることもマナーの一種です」(マナーズ博子さん)
Q6:串の奥のほうの団子を、きれいに食べるには?
A6:奥の団子は、半玉ずつ串の向きを変えて食べるとよいでしょう。
串から直接食べる場合、先端は食べやすいのですが、奥の団子はどのように食べるときれいに見えるのでしょうか?
「奥の団子を歯で引き抜くようにして食べるのは避けたい、という女性が多いかもしれません。奥の団子は、まず半玉をかじり、それから串をくるりと回して残りを食べると、美しく食べることができます。
ただ、この食べ方では、どうしても串に団子が少し残ってしまいますので、気になる方は、食べ終わったら串を懐紙で隠すといいですね」(マナーズ博子さん)
Q7:最後に、和菓子をいただく際に最も大切なことは?
A7:和菓子に限りませんが、何が正しいかにこだわるよりも、一緒に食べる人に合わせて楽しくコミュニケーションをとりながらいただきましょう。
ネットで和菓子の食べ方のコツについて調べると、いろいろな情報が出てきて、中には「こんな堅苦しい食べ方しなきゃいけないの?」と思うルールもあるのですが……。
「和菓子に限らず、食事で最も重要なのは、周りの人と楽しく味わうこと。何が正しいかにとらわれすぎると、場の雰囲気にそぐわないこともあります。
たとえば、ネット上では正式なお茶の席での和菓子の作法なども紹介されているようですが、これを常に守ろうとすると、かえって周りから不自然に見えることもあるかもしれません。
美しく食べることも大切ですが、『英国ヴィクトリア女王が、来賓に合わせてフィンガーボウルの水を飲んだ』という有名な逸話があるように、周囲を思いやることのほうが、よりマナーに適っているといえるでしょう。
また、和菓子には、季節感があり、見た目が美しいものも多くありますので、ただ食べるだけでなく、目で見て楽しんだり、季節の話題などで周囲の方々とコミュニケーションをとったりしながら、和気あいあいと味わってはいかがでしょうか」(マナーズ博子さん)
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和菓子は日本が世界に誇るスイーツ。誰かと一緒に食べるときはもちろんのこと、自宅でひとりで楽しむときにも、ぜひ今回ご紹介したマナーをご参考に、品格ある美しい振る舞いを心がけてみては?
『さりげないのに品がある気くばり美人のきほん』西出ひろ子・著 かんき出版刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美