お気に入りのインテリア、心浮き立つ食器やグラス、リラックスできる音楽や本…。暮らしを彩るそんなアイテムに、今こそ「アート」を加えてみませんか? ステイホームが楽しくなる、Precious的「アートのある暮らし」をご紹介します。

今回は『Faliero Sarti』クリエイティブ・ディレクターのモニカ・サルティさんのご自宅を訪れました。

もっと豊かに、美しく!ようこそ!アートのある暮らし

モニカ サルティさん
『Faliero Sarti』クリエイティブ・ディレクター
1949年創業のテキスタイルメーカー『ラニフィーチョ・ファリエロ・サルティ』創業者の孫。大学で芸術史を修め、N.Y.に。帰国後、『ラニフィーチョ』の技術部門とデザインに携わる。1992年『ファリエロ・サルティ』のクリエイティブ・ディレクターに就任。統括兼デザイナーを務める。※展開ブランドの日本での取り扱いは『H.P.FRANCE』など

「エナジーを与えてくれる色とアートを取り入れて。遊び心や意外性を大切に、家づくりを楽しんでいます」

ラグジュアリーで上質なストールのコレクションが人気の『ファリエロ・サルティ』。クリエイティブ・ディレクターのモニカさんの自宅は、フィレンツェから車で約10分、緑豊かな丘の上、ボロニェーゼ地区にあります。1800年代、貴族の邸宅として建てられた一軒家で、2階部分に居住中。

ダイニングルームのランチセッティング。この日はリチャード・ジノリの皿に1800年代のアンティーク皿を重ね、サンルイのグラスはあえて色を違えて置く、ミックスを楽しむコーディネート。照明は「フォンターナ・アルテ」。向かって左は、ドメニコ・ビアンキの作品、右の2色のアートは、アリギエロ・ボエッティ。
ダイニングルームのランチセッティング。この日はリチャード・ジノリの皿に1800年代のアンティーク皿を重ね、サンルイのグラスはあえて色を違えて置く、ミックスを楽しむコーディネート。照明は「フォンターナ・アルテ」。向かって左は、ドメニコ・ビアンキの作品、右の2色のアートは、アリギエロ・ボエッティ。

「この家は、息子のマテオの『ここがいい!』というひと言で購入を決めました。夫は当時、あまり気に入ってなかったようですが(笑)。

約6か月かかった改装は、すべて息子のため。天井が高く、窓がたくさんあって陽光が入る。光のエネルギーを感じることができる点も決め手でしたが、ドアを大きくし、エントランスの壁は窓のように切り取り、ぶち抜くなど、さらに開放感を出しました。

なにより、マテオのために、彼の感性を刺激するアート作品をたくさん飾りたくて、壁はすべて白を基調にしたんです」

家具_1
第1リビングの一角。カラフルにお色直しされたイームズの椅子は、ペルーのアーティストの作品。白い作品はアゴスティーノ・ボナルーミ、赤い作品はパオロ・スケッジ。草間彌生のカボチャのオブジェも。
家具_2
リビングからフィレンツェ旧市街を望む。窓辺にはたくさんのオーキッドが。「手間がかかるオーキッドですが、育てるのは大得意!」

「カラフルなアートピースは、『色』のもつ力で生命力を喚起してくれます」

エントランスから廊下、リビングダイニングはもちろん、寝室やプレイルーム、トイレにいたるまで、絵画やオブジェなど、カラフルなアートピースが、所狭しと飾られています。

家具_3
手前は第2リビング、奥が第1リビング。黒板のアートはショーン・ランダースの作品。「カラフルで歓喜を与えてくれます」。奥の鏡に映っている黄色と白の3D作品は、フランチェスカ・パスクアーリ。

「はっきり言って、ここはマテオの家(笑)。彼が遊びながら、自然といろいろなアートに興味をもてるよう工夫しています。また、カラフルなアートピースは、色のもつ力で生命力を喚起してくれるとも思っていて。窓から降り注ぐ陽光とともに、エナジーを与えてくれるんです」

家具_4
アーチ型の照明はアキッレ・カスティリオーニのアルコ。壁上には「TORMENT(苦悩)」の文字が。これもアート作品でジャック・パーソンのもの。「私たちはだれでも、少し何かに苦しんでいると思うから」

アートへの関心は、夫のファミリーがアートコレクター、ということにも影響されているとか。

「メインリビングのカラフルな立体作品は、息子のために飾っています。今注目の若手アーティスト、ジェイコブ・ハシモトの作品で、鮮やかな色使いと、人によって見方が変わる3Dの面白さに惹かれて、ロンドンの『サザビーズ』で購入しました」

家具_5
モニカ・サルティ邸のリビングでは、こんな独創的なアートがお出迎え。無数の小さなカイト(凧)のようなパーツで構成された立体的な作品は、ジェイコブ・ハシモト作

とはいえ、古い家とコンテンポラリーアート、アンティーク家具をバランスよく配置するセンスはさすが。

暖炉脇には、イタリアの彫刻家マルチェッロ・グアスティの猫。
暖炉脇には、イタリアの彫刻家マルチェッロ・グアスティの猫。

「大切なのは、重くなりすぎないこと。色やデザインなど、同じテイストでそろえたりせず、意外性や遊び心を意識して組み合わせます。インテリアは、ライフステージや気分に応じてしょっちゅう変えていい。それくらいフットワークが軽くていいんじゃないかな。

それと、私は片付けマニア。家が整理されていれば、頭の中も整理されるはずなので。モノがあるのに重い印象でないのは、それも理由かもしれません。ちなみに今、欲しいのはシャネルの店頭にあるコスメ用什器。整然と収納できそうでしょう?(笑)」

家具_6
アリギエロ・ボエッティ「刺繍レター」などのアートピースと一緒に、マテオ君の描いた絵や工作が飾られている。
花瓶のアートピースはプラートのペッチ現代美術センターにある作品のレプリカ。
花瓶のアートピースはプラートのペッチ現代美術センターにある作品のレプリカ。

「家は、私にとって家族のためだけの場所。自分の世界ともいうべき場所なんです」

家では仕事をしないと決めているというモニカさん。

「家に帰れば仕事のことは忘れ、家族とのリラックスした時間をなにより大事にしています。家は、私にとって家族のためだけの場所。よく人を招きますが、招待するのは本当に親密な友人であり、私の一部だと思える人だけ。それくらい、自分の世界ともいうべき場所なんです」

家具_7
寝室の入口。「LOVE(&PEACE)」のネオンが。東洋の木像の手には、マテオ君のサッカーグローブが積まれている。
家具_8
エントランスホールから客室と子供部屋へと続く廊下。ドア上には、息子の名「matteo」のネオン。
家具_9
第2リビングのソファでくつろぐモニカさん。

そうはいっても、クリエイティブ・ディレクターとして世界中を駆け回る、超多忙なモニカさん。実は、ポンテ・ヴェッキオの近くに、彼女専用の家があり、ときどき逃避行することも。

「逃避期間は2日ほど。わがままだとは思うけれど、仕事をするうえで、やっぱり自分のスペースが必要で…」

エントランスホールのコーナー。カラフルなミッドセンチュリーのチェアは、パリで購入したペルーのアーティストの作品。赤い手の写真は、写真家カルロ・フェイの作品。
エントランスホールのコーナー。カラフルなミッドセンチュリーのチェアは、パリで購入したペルーのアーティストの作品。赤い手の写真は、写真家カルロ・フェイの作品。

家をつくり、育むのは自分であり、家族である。家は住んでいる人に似ていなくてはいけない。そう語るモニカさんの家は、確かに、陽気で明るく、おおらかでポジティブなオーラに包まれている気がしました。

家具_10
寝室。ひとりがけソファはルイ14世時代のアンティーク。ベッドヘッドの上は、アレクサンダー・カルダーの作品。ベッドの足元には、古いトランクとアンティークレースのクッションを組み合わせて、ベンチに。
家具_11
マテオ君の部屋。壁には自由に落書きできるスペースが。子供部屋も、散らかすそばから片付けまくる、というモニカさん
家具_12
プレイルームの棚に並ぶオリーブピックは、コレクションのひとつ。
家具_13
キッチンとダイニングの間のトイレ。いぶし金の壁にかけられたのは、ミロの作品。
プレイルームには、さまざまなゲームが置かれている(ここもきれいに片付けられている)。なにげなく置かれている右端のベースは、ダミアン・ハーストの作品。
PHOTO :
Marco Bertoli
EDIT&WRITING :
田中美保、古里典子(Precious)