俳号「風天」って誰のこと?日本中に愛されたスターの意外な一面です!
本日8月27日は「『男はつらいよ』の日」です。故・渥美清さん演じる『フーテンの寅さん』を主人公にした名作映画シリーズ『男はつらいよ』の第一作が、1969(昭和44)年の今日、封切りされたことに由来する記念日です。
『男はつらいよ』は「一人の俳優が演じた最も長い映画シリーズ」としてギネスにも認定されており、山田洋二監督は2012年に文化勲章を受章されています。名実ともに、日本を代表する名作映画シリーズの一つと言えるでしょう。
『男はつらいよ』をご覧になったことのない方でも、腹巻の上にチェックのセットアップと粋なハット、首からお守りをさげて足元は下駄…という、独特の『寅さんファッション』に身を包んだ渥美清さんの姿は思い浮かびますよね?作品ゆかりの地である東京・葛飾区の柴又駅前には『寅さん』の銅像も建立されています。
というところで、本日1問目のクイズです。
【問題1】「鯔背」ってなんと読む?
「鯔背」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「粋(いき)で威勢が良く、さっぱりしているさま。またそのような容姿や気風。」などの意味を持つ日本語です。
<使用例>
「多くのサラリーマンにとって、『フーテンの寅さん』の鯔背な性格や生き方は、ある種の憧れだったのかもしれないわね」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 鯔背(いなせ) です。
日本的な誉め言葉として、皆さまご存知ですよね?粋な男前を指す言葉です。現代の若者言葉で言うなら「お兄(にい)系イケメン」というところでしょうか?
「鯔背(いなせ)」の「鯔(いな)」は、魚の「鯔(ぼら。いなと同じ字)」の別名で、
江戸時代に、日本橋魚河岸で働く威勢の良い若者たちが「鯔背銀杏(いなせいちょう)」と呼ばれる髷(まげ)を結っていたことから、「鯔背(いなせ)」という言葉が「魚河岸にいるような、粋で腕っぷしが強く威勢のいい若者」→「粋(いき)で威勢が良く、さっぱりしているさま。またそのような容姿や気風」という意味に転化していきました。魚河岸の若者は、江戸っ子的な美的感覚を体現しているアイコニックな存在だったのですね。
「髷(まげ)」には流行もあり、幕末には「頭頂部にまっすぐ乗せるより、ちょっと曲がっていたほうが、崩れた色気があって鯔背(いなせ)だ」とされ、あえて少しだけ曲げた髷が大流行したそうです。
ちなみに「寅さん」の着ているチェックのセットアップは、女性用のカシミア生地から仕立てたオーダーメイドだそうです。実はお洒落であることも「鯔背」の条件かもしれません。
というところで、2問目のクイズです。
【問題2】「瘋癲」ってなんと読む?
「瘋癲」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「決まった仕事を持たずぶらぶらしている人」「精神状態が正常でない事。また、そのような人」などの意味を持つ言葉です。
<使用例>
「寅さんの言う『瘋癲』って、そういう意味だったのね!意外過ぎるわ!」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 瘋癲(ふうてん) です。
意味についてはヒントで触れましたが、「決まった仕事を持たない人」と「精神状態が正常でない人」を表現する言葉が同じであることに驚きますね。「高度経済成長」「終身雇用」など、サラリーマンが猛烈に働いていた時代ならではの言葉かもしれません。
『フーテンの寅さん』が日本中に愛された背景には、多くの日本人がその時代に感じた、自由な生き方への憧れがあるのでは?とも感じます。
余談ですが、『寅さん』を演じた故・渥美清さんは俳句がご趣味で、『風天(ふうてん)』という俳号を使っていらしたそうです。『寅さん』のイメージを壊さないよう、生前は私生活を一切もらさぬ主義を貫かれた、と聞きます。『寅さん』とはまた違った、寡黙なインテリジェンスの魅力を感じますね。
本日は「『男はつらいよ』の日」にちなんで、
・鯔背(いなせ)
・瘋癲(ふうてん)
という日本語をおさらいいたしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 参考資料:『週刊文春が迫る、BEAMSの世界。』文春ムック(文藝春秋)/『風天 渥美清のうた』森英介(大空出版)
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱