️■1:その歴史的背景、王室一家の言動やファッションなど、いつの時代も世界の注目を集める英国王室の肖像画から物語をひも解く!
著名人の肖像画を多数所蔵する「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー」。この展覧会では絵画や写真など、21万点に及ぶ同館のコレクションより、15世紀に始まるテューダー朝から現在のウィンザー朝に至る英国王室にまつわる肖像画や写真など、約90点の作品が集結。そのほとんどが本邦初公開となる。
6人の妻をもち、かつそのうちふたりを処刑に追い込んだ絶対君主ヘンリー8世。芸術や科学に重きを置いたというジョージ3世。生涯独身を貫き、政治に人生を捧げ、スペイン無敵艦隊に打ち勝ったエリザベス1世。
純白のウエディングドレスを最初に纏った人物でもあるヴィクトリア女王など、英国の歴史を彩った人々の肖像がずらりと並ぶ。
顔つきや服装、細やかに描きこまれた背景。王や女王の姿を描いた画面をつぶさに見つめれば、時代背景やその人物像、当時の流行などまでも浮かび上がってくる。それぞれの人物が歩んだ時代や運命に思いを馳せながら作品と対峙してみたい。
アンディー・ウォーホルが描いた現在の女王エリザベス2世の若き日の姿や、異例ともいえるズボン姿で描かれた今は亡きダイアナ妃の絵もあり、ひとくちに肖像画といってもその在り方は多様だ。人物を描くという表現自体がどのように変化してきたかに着目してみるのも面白そうだ。
Information
- 『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展』
- 約500年にわたる、テューダー朝から現在のウィンザー朝までの5つの王朝に描かれた英国王室の肖像画。英国王室史を映し出す肖像画と写真の数々は、ほぼすべてが初出品。そのなかから、王室の面々がたどった運命とその歴史をひも解く。
- ※入場は日時指定制です。詳細は公式HPまで。
- 会場/上野の森美術館
- 会期/2020年10月10日(土)~2021年1月11日(月)
- 開館時間/10:00〜17:00(金曜は〜20:00、展示室入場は閉館の30分前まで)
- 休館/会期中無休
- 観覧料/一般¥1,800、高校・大学生¥1,600、小・中学生¥1,000(土日祝は一般¥2,000、高校・大学生¥1,800、小・中学生¥1,200)
- TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 住所/東京都台東区上野公園1-2
■2:「かわいい」「きれい」「おどろおどろしい」…。動物を通じた多様な「命」の描かれ方を観察したい
普段、日本画を見る機会がそんなにない人にとっても、「動物」という親しみやすいモチーフを通じて、日本画鑑賞の楽しみを発見できるかもしれない。
『【特別展】竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス 併設展示:ローマ教皇献呈画 守屋多々志《西教伝来絵巻》試作 特別公開』では、重要文化財である《班猫》を約4年ぶりに観ることできる貴重な機会。振り向いた猫の姿、しぐさ、表情など、リアルで本当に愛らしく、やわらかな体の感じも伝わってくる魅力的な作品。
奥村土牛の《兎》は、ユニークで愛嬌もあってかわいい。速水御舟の《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》が観られるのも嬉しい。重要文化財である《炎舞に描かれる蛾》と同様に、御舟ならではの独特な蛾の舞が特徴的で、上昇していくその様子は、神秘的でもある。
一方で、蜘蛛の巣の蜘蛛も霊的なオーラを放つ。御舟ならではのリアルな描写が、蛾と蜘蛛に独特の生命観とオーラを与えているようにも見える。
Information
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『【特別展】竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス
併設展示:ローマ教皇献呈画 守屋多々志《西教伝来絵巻》試作 特別公開』 - 近代京都画壇を牽引した日本画家・竹内栖鳳は、その卓越した描写力でさまざまな生き物を描いてきた動物画の名手。本展では約4年ぶりに特別公開される《斑猫》のほか、栖鳳が描いた動物画17点を公開。そのほかにも、愛らしい犬や猫、勇壮な馬や牛、ユーモラスな蛙など、生き物への温かなまなざしに触れることができる所蔵作品が展示される。
- 会場/山種美術館
- 会期/会期中~2020年11月15日(日)※入館日時のオンライン予約も可能。
- 開館時間/平日11:00〜16:00、土日祝11:00〜17:00(入館は閉館時間の30分まで)
- 休館/月曜日
- 観覧料/一般¥1,300、大学・高校生¥1,000、中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
- TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 住所/東京都渋谷区広尾3-12-36
■3:三菱一号館美術館の開館10周年を記念して、所蔵作品を代表する画家、ルドンとロートレックを一挙放出!
旧三菱一号館が竣工した年、「1894年」をキーワードにルドンとトゥールーズ=ロートレックの時代に焦点を当てた本展。美術館の創立10周年だからできる、ちょっとユニークなテーマ設定が楽しい。
《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》や、《アリスティド・ブリュアン 彼のキャバレーにて》など、ロートレックの主要なポスターを複数みることができる貴重な機会で、ポスター作品は実物を観ると大きく見応えがあり、画集やモニターで見るのとはまったく違う臨場感がある。
ルドンの《グラン・ブーケ》や《神秘的な対話》などは、美しい色彩が宝石のように散りばめられ、うっとりしてしまう。
そんなルドンやロートレックの作品を通じて、1894年を見つめてみると、この年は、日本画家でフランスへ留学し、ルドンと同じ師のもとで学んだ山本芳翠が代表作《浦島》を制作した時期でもあったとのこと。
この《浦島》は日本の昔話をヨーロッパの影響を受けながら、独特の雰囲気とタッチで描き出していて、非常に興味深い作品。この機会にしっかり見ておきたい。
Information
- 『開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展』
- 三菱一号館美術館の開館10周年を記念し、同館の所蔵品を代表する画家であるルドンとトゥールーズ=ロートレックに焦点を当てて構成。まったく対照的な作風に反し、実は同じ時代に活躍したふたりの作品を中心に、約140点の作品を展覧。また、旧三菱一号館が竣工された1894年を軸に展開し、当時活躍していた画家たちの作品を通じて、その時代を振り返る。
- 会場/三菱一号館美術館
- 会期/2020年10月24日(土)~2021年1月17日(日)※展示替えあり
- 開館時間/10:00〜18:00(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第二木曜は〜21:00。入館は閉館の30分前まで)
- 休館/月曜、11月24日・25日(展示替え)、12月31日、2021年1月1日(月曜が祝日の場合と、10月26日、11月30日、12月28日、2021年1月4日は開館)
- 観覧料/一般¥2,000、高校・大学生¥1,000、小・中学生無料(音声ガイド付き)
- TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 住所/東京都千代田区丸の内2-6-2
- TEXT :
- 林 綾野さん キュレイター・アートライター
- BY :
- 『Precious11月号』小学館、2020年
- EDIT :
- 宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)