ジェーン・スーさんに学ぶ「本当の悩みかどうか仕分ける方法」
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』『私がオバさんになったよ』『これでもいいのだ』など、多くの著作で女性たちの心をつかんできたジェーン・スーさん。この度、小学館『Oggi』で2015年より続くお悩み相談連載が、書籍『女のお悩み動物園』として刊行されました(現在も連載継続中)。
働く女性のモヤモヤとした悩みを、まるで絡まった糸をほどくように整理し、ストンと腹落ちする回答に導く様は、もはや職人の域。今回連載をまとめ、書籍として上梓するにあたって、どんなことを伝えたいと考えたのでしょうか。
相談事は、大まかに4つに分けられる
——まず、本書で伝えたかったことについて教えてください。
まず、「あなたが抱えているその悩みは、本当に“お悩み”なのか」ということです。悩みかそうではないのか、まず仕分けする作業が有効だと伝えたいんです。相談事は、大きく4つに分けられます。まずひとつめが本当の“お悩み”。いわゆる、「ネガティブに偏りがちな思考の癖を治したい」などというもの。
ふたつめは、“問題”です。たとえば「兄弟が要介護の親の面倒を見てくれず、娘の私に負担がかかっている」など。これは大至急、地域の包括支援センターに行ってケアワーカーをつけるべき“問題”です。行政に加えて、法の力や警察の介入が必要なものも同じ。それらは悩みではなく、“問題”なのだと自覚しましょう。
さらなる3つめは、ずばり“わがまま”。「専業主婦になった幼なじみと話が合わなくなった」「息子の進路が自分の希望と一致しない」。これらは、自分の思い通りならないことに文句を言っているだけ。冷静になって考えれば、“わがまま”なのだと気がつくでしょう。
そして4つめ。実はこれこそが、働く女性が陥りがちなワナである“社会構造の欠陥”です。「女の私がこんなに頑張っているのに、なぜ昇進できないのか」。
それ、今の社会構造に抜けがあるからで、あなたの能力が低いわけではありません。なのに、努力が足りないなどと言われたり、もっと結果を残せばと自分を責めてしまったり、個の責任にすり替えられてしまう問題がいかに多いことか。社会の問題を個人の悩みと取り違えていないか、全体像を俯瞰する視点をもってほしいですね。
悩んでいることは、とにかく出す、出す、出す
——スーさん自身はどのように悩みをアウトプットしているのでしょう。おすすめの方法はありますか?
まず書き出すこと。これに尽きます。文句を言いたい相手がいるならば、何が嫌でどう直してほしいのか、エア手紙を書くのもいいでしょう。それをプリントする。さらに声に出して読む。そうやってとにかく自分の外に出す、出す、出す。要は自分と悩みを、一度しっかり切り離すことが大切なんです。
すると「これは私のわがままかも」「ここは譲歩して話し合いだな」など、感情が整理されます。ときに「問題のポイントは別のところにあった!」「これ、悩む必要ないのでは?」など違う道筋が見えてくることも。
つねに書き出すという作業を続けるうち、「いつも読みが甘い」「うかつに人を信じすぎる」などの悩みグセ、要は“自分の脆弱ポイント”も浮き彫りになってきます。
書く、読む、聴く。“ひとりお悩み相談室”も効果抜群
さらに精度を上げるなら、音読したものを録音して、自分の耳で聴くのもおすすめです。私は自分のラジオ番組のなかで相談コーナーを設けていますが、番組のパートナーがリスナーのお悩みを読み上げるのを耳で聞いていると、最初の印象と変わることがよくあります。
友達の悩みを聞いていると「本心は違うんだろうな」「こうすればいいのに」なんて感じることはありませんか? そんなイメージで、悩みをさらに客観的に捉えられるようになるんです。
すると「実は能力がないことを絶対に人に知られたくないと思っている自分」「○○さんみたいに注目を浴びて、認められたいと切望している自分」「ただただ傷ついている自分」など、今まで目を逸らしてきたもっとも大切なこと、いわゆる「エグい本質」が見えてくることもあります。ここまでくれば、もう上出来。
書き出す。音読する。録音する。耳で聴く。普通はやりませんよね(笑)。でもおすすめです。本気で解決したい悩みがあるならば、ぜひこれを繰り返してみてください。
「本書で伝えたいことはもうひとつあるんです」と語ってくれたスーさん。Vol.1では、さらに「理想と現実を埋める知恵」について、深く聞いていきます。
- TEXT :
- Precious.jp編集部