つねに成長と成功を信じ、高い目標を掲げて頑張ってきた私たちに、今、価値観の大転換が求められています。未来が見通せない今、それでもしなやかに、そして美しく生きるために必要なものとはいったいどんなことでしょうか。雑誌『Precious』3月号では特集「今こそ、「曖昧力」を身につけませんか?」を展開中。「曖昧ななかで生き抜く力」=「ネガティブ・ケイパビリティ」に注目し、新時代を歩くための心構えを解説しています。

世界が一変した今、ニューノーマルを前に、戸惑い、悩み、途方に暮れているのが正直なところではないでしょうか。そこで、さまざまな立場から寄せられたそれぞれのもやもやに対し、本特集で登場する識者4人に、各々の視点から答えてもらいました。本記事では哲学者・小川仁志さんと精神科医・星野概念さんがお答えします。

小川 仁志さん
哲学者
(おがわ ひとし)1970年京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。現在は、山口大学国際総合科学部教授。大学で教鞭を執るかたわら、「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。
星野 概念さん
精神科医
(ほしの がいねん)総合病院に勤務する精神科医。ミュージシャンでもあり、執筆も行う。精神医学や心理学を身近に感じてもらう活動を行っている。著書に、いとうせいこう氏との共著『ラブという薬』『自由というサプリ』(リトルモア)。

Q:契約社員の部下とのコミュニケーションがスムーズに行かず、ストレスがたまっています。

リモートワーク以来、義務の日報提出も内容が甘く、期限を守らないことも。ズームの定例会議では顔出しせず、発言しないまま終わることもあります。直属長に相談していたところ、なんと契約の解除を検討しているとのこと。私の気持ちももやもやするのです。(建築士・43歳)

A:起こった事実を認め、今はよしとするまずはそこから始めましょう (小川さん)

「契約解除という事実に悩むのではなく、そのもやもやとした状態を『気にはなるけど、今はよし』としておきましょう。別の考えになる可能性を残しておくのです。

『みんな違うけど私が正しい』でも『みんな違ってみんないい』でもなく、『みんな違うけど、これでもいい』という感じ。論破せず、やみくもに受け入れるのでもなく、可能性を残す。ぜひそのやり方を覚えてみてください」

A:今一度、やり方を見直さないと問題が繰り返すことになるのでは (星野さん)

「僕は『すべての言動行動には、必ず理由がある』と思っています。契約解除は会社の方針なのでなんとも言えませんが、なぜこうなったのかを考えておかないと、コロナ禍で働き方が変わっている今、今後も同じような人々が出てくるのではないかと心配です。

彼にもいい点があったのではないか、自分たちのやり方やシステムで改善点はないか、見直す作業をしてみてください

この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
BY :
『Precious3月号』小学館、2021年
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ILLUSTRATION :
佐伯ゆう子
EDIT&WRITING :
本庄真穂、池永裕子(Precious)