どう歳をとっていくべきか? 完璧なお手本がいた!

いきなり人生100年と言われても、100歳までどんな風に生きればいいのか、長生きできる喜び以上に、戸惑いのほうが大きくなっていたりするのかもしれない。例えば今の40代も、“60代の自分”までは何となくイメージできるのだろう。しかし70代以降となると、もう想像がつかない。なぜか? なかなかお手本がいないからである。

女の世界には、常に年齢に革命を起こしてきた人がいる。例えば、マドンナやシャロン・ストーンは、まさにそういう意味の功労者。40代、50代、60代と、自分が到達する年齢の年齢観を次々に塗り替えてきた。2人は奇しくも今62歳、どちらもとんでもない若さだが、少なくとも62歳はここまで若く美しくいられるのだという現実は、みんなの中でも確かにしっかり更新されている。そうそう日本にも大地真央65歳という、世界に誇れる年齢革命児がいて、衝撃以上の感慨をもたらしてくれている。

しかし70代となると、新しい年齢観を示してくれる女性がなかなか見当たらずにいたが、いやいや完璧なお手本がいてくれた。

ダイアン・キートン。現在75歳! 1970年代に一世を風靡した女優で、そういう意味で馴染みは無いはずだが、じつはこの人、68歳あたりから75歳の今に至るまで再ブレイクを果たしている。この人を主役にした映画が立て続けに何本も撮られているのだ。しかも時代モノや実話モノではない、等身大の70歳代の現代女性として、堂々ラブストーリーのヒロインを演じているのである。『ニューヨーク、眺めのいい部屋売ります』、『最高の人生の見つけ方』『ロンドン、人生を始めます』『また、あなたとブッククラブで』『チア・アップ!』………すべてこの人が主役!

マドンナの真似はできなくても、この人なら真似できる

ましてやこの人、無理矢理若さにしがみつくようなことは一切しない。シワも普通にあるし、髪はフサフサだけれど、かつてのブロンドはシルバーになっている。それでも充分すぎるほど若々しい。そしてハッとするほどキュートである。70代だから何なのだ、年齢などそもそも何の意味があるのだと思わされるほど、ありのままが魅力的なのである。

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ダイアン・キートン

正直マドンナやシャロン・ストーンは、一体何をどうするとここまで異様な若さを保てるのか、想像もつかない次元の違う人たちで、真似をしようにも真似ができなかったが、この70代の年齢革命児は、きちんと真似ができるとてもリアルなお手本になるはずなのだ。

かくして同年代はもちろん、今や若い世代からも憧れを一身に集める存在となっている。それこそ、私たち、こういうふうに歳を取ればいいのよ! と大きな発見でもしたような感嘆の声が、各世代から聞こえてくるほどなのである。

この人の主演映画は全て、ダイアン・キートン本人がモデル?

非常に興味深いのは、ダイアン・キートンを主役にした映画のことごとくが、もともとこの人本人をヒロインに想定して企画され、ダイアン自身をモデルに脚本が描かれているという点。だからどの作品でも、誰かを演じている感じがない、ダイアン・キートンその人が喜怒哀楽しているというリアルさ。それがまた大変な引力を持つのだ。

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ダイアン・キートンとウディ・アレン

そもそも1970年代に、オスカーはじめ映画賞を総なめにした『アニー・ホール』の実に魅力的なヒロインも、本人がモデルである。監督は、元恋人だったウッディ・アレン。物語での関係もほぼ同じような道筋をたどっていて、フィクションとノンフィクションが入り混じる。タイトルからして、ダイアン・キートンの本名と愛称を合わせたもの。極めて明るく社交的、でもデートには遅れてくるし、バックの中はぐちゃぐちゃ。けれども才能に溢れていて会話はいつもユーモアたっぷり。何よりもファッションが独創的で、男物のシャツにネクタイとベストを着て、だぶだぶのチノパンというスタイルは、当時「アニー・ホール・ルック」として世界中でトレンドになったほど。しかもそのコーディネート自体、本人しかできないものだった。ウディ・アレン本人が、そういうダイアン・キートンの魅力に魅せられていた男のひとりであり、そういう自分を描いた映画と言ってもいいのである。

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ダイアン・キートンとウディ・アレン

ウディ・アレンは別の映画のオーディションにやってきた彼女を自ら選び、共に仕事を終えた後「別の女性とデートの約束を入れている自分が愚かに思えてきた」のだという。また「彼女は僕を導く北極星」とまで語っているのだ。

かくして、ある種の天才にしてコメディアンなペシミスト、ウッディ・アレンを、そこまで魅了したダイアン・キートンは、この映画によって女性像からファッションまで、70年代後半の女性たちの絶対のお手本となったわけだが、そこまで「ただならぬ女性」だけに、世の中が放って置かず、もう一度ピークが来たということ。

ダイアン・キートンとウディ・アレン
ダイアン・キートンとウディ・アレン

しかし役柄自体は、むしろ70歳代になってからの作品の方が、一目惚れされたり、忘れえぬ人になったり、モテまくる役ばかり。この人が起こした年齢革命は、単に若さや美しさに全く留まらない、むしろ女性としてのあり方や生き方の革命。70歳代に入っても女は女、ときめくような恋愛もできるし、ひと目惚れだってされてしまうのだということを身をもって証明してくれる、存在自体が革命なのだ。

絶対の鍵は、とてつもなくお洒落なフレンチ・トラッド!

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ダイアン・キートン

その絶対の決め手、わかるだろうか? 未だ健在「ダイアン・ルック」。トラッドなファッションが恐ろしく似合うことである。今も映画の中の衣装は“自前"であることが知られるが、そのほぼ全てが、 フレンチ・トラッドとも言うべき小粋なスタイル。70歳代になってからの主演作は、全てとてつもなくお洒落なフレンチ・トラッドで演じきっている。

最近の映画『また、あなたとブッククラブで』でひと目惚れされた男性と初めてのデートの時も、いろいろ悩んだ末に、結局ネイビーのトラッドなパンツスーツで出かけていく、それには本当に鳥肌が立ったほど。

もちろんこうしたフレンチ・トラッドが見事に映える、にこやかな表情と、ウィットに富んだ愉快な会話は絶対マスト。この人の身上である笑顔とユーモアが、余計にダイアン自身をカリスマにし、女の主役にしているのは確かで、映画の中でもどんどん人を惹きつけ、どんどん周りを幸せにして、そして自分もまたどんどん幸せになっていくように、ダイアンはおそらく私生活でも同じくして、いつでもどこでも人を惹きつけ、自ら幸せを引き寄せているのだろう。

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『また、あなたとブッククラブで』
『また、あなたとブッククラブで』©2018 BOOKCLUB FOR CATS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『また、あなたとブッククラブで』

そう、だからこそ確信できる。まさしく、この人のように歳をとれば良いのだ!と。ダイアン・キートンは、ファッションも人となりも全てひっくるめて、女が歳を重ねていく上での圧倒的なお手本、そしてこの人ならば、何となくだが真似できる。マドンナの真似はできなくても、この人ならば、なぞっていける。

女が年齢を重ねていく上で最も重要なのは、服?

そして改めて思い知る。女が年齢を重ねていくうえで何より重要なのは、「結局のところオシャレ」なのではないかと。大人になるほど「スタイルを持つこと」なのではないかと。つまり、ひたすら若くあろうと必死に頑張らなくてもいい。美容医療に賭けるよりも、オシャレのセンスを磨くべきなのだと。

実際ここで気づかされたのが、ほどよく抜け感がありながらも上品で清潔感あるフレンチ・トラッドは、完璧にエイジレスであり、大人の女にとっては願ってもないエイジングケアであるということ。

もちろん、簡単ではない。トラッドは単純と思ったらダメ、小気味よいほどのセンスというものを感じさせないとフレンチ・トラッドは成功しない。でも成功したとき、若さと知性と前向きさ、幸福感、周囲も幸福にする心地よさ、そうしたものが1度に得られるのは紛れもない事実なのだ。

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ダイアン・キートン

とりわけ、大人の女がフレンチ・トラッドを成功させた時、さりげなくもラグジュアリーが溢れ出る。それは、大人のファッションとして揺るがぬ正解である証。もちろん服なんて自分の好きなものを着ればいい。だけれども、そういう奇跡のアンチエイジング法があることは知っておいてほしいのだ。

ダイアン・キートンのようにフレンチ・トラッドを決めて、そして楽しそうに笑う。ちょっと知的な話題を提供して、みんなと笑いあう、それは歳の重ね方の絶対の理想型。そう言い切りたいのである。

 

『また、あなたとブッククラブで』 絶賛上映中
監督:ビル・ホルダーマン 出演:ダイアン・キートン、ジェーン・フォンダ、キャンディス・バーゲン、メアリー・スティーンバージェン、アンディ・ガルシア、ドン・ジョンソン 2018/アメリカ/スコープサイズ/104分/カラー/英語/DCP/5.1ch/日本語字幕:鈴木恵美/原題『Book Club』 配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ ©2018 BOOKCLUB FOR CATS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

この記事の執筆者
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『大人の女よ!も清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
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