ラフ・シモンズらクリエイターたちから人気に火がつき、今、世界のセレブリティやコレクターたちが熱い視線を向けるピエール・ジャンヌレの椅子。

1950〜60年代にインドで手掛けられ、数十年の時を経て2010年代に再び脚光を浴びる存在に──この美しくモダンで、それでいて温もりをたたえた名作椅子の魅力に迫ります。

本記事ではジャンヌレの経歴を彼の名作椅子と共にご紹介します。

美しい椅子たちは未来へと向かう都市のために生まれたものでした

ピエール・ジャンヌレは、1896年、スイス・ジュネーブ生まれの建築家です。

従兄弟でもある「近代建築の三大巨匠」ル・コルビュジエの右腕として活躍し、1950年代はじめにインド北部パンジャーブ地方で「チャンディーガル都市計画」に着手。チャンディーガルは、47年にイギリスからのインド・パキスタン分離独立によって必要となった新たな州都をつくるため、創造された都市でした。

インドを愛したジャンヌレ。彼の死後、遺灰はチャンディーガル北東部のスクナ湖に散骨されたという。©Denis BRIHAT/Getty Images
インドを愛したジャンヌレ。彼の死後、遺灰はチャンディーガル北東部のスクナ湖に散骨されたという。 ©Denis BRIHAT/Getty Images

1950〜60年代、ピエール・ジャンヌレとル・コルビュジエはインド・チャンディーガルの都市計画に情熱を注いだ

ジャンヌレは14年間現地に暮らし、都市空間や建築物、そこで使われる家具までを手掛ける計画の現場監督として重要な役割を果たします。

家具においては、インドで入手しやすいチーク材や籐を使い、地域に伝わる職人の手工芸技術を用いる、シンプルなデザインを考案。ジャンヌレの描いた図面を基に、公共施設やオフィス、住宅で使われる多くの椅子が生まれました。

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チークの無垢材と籐を用いた、ハンドメイドのヴィンテージ。シンプルなフォルムと編まれた籐の美しさが際立つ、ゆったり座れるこのアームチェアは、代表的な"ジャンヌレの椅子"のひとつ。アームチェア『KING CHAIR』【幅48×奥行き59×高さ81、座面高41㎝】・オットマン『VLEG OTTOMAN』【幅40×奥行き32×高さ40.5㎝】(メゾン ワイ)

"ジャンヌレの椅子"は、美しくモダンな佇まいに加え、地域に根ざした物作り、それが未来を描く都市のためのものだったことも画期的だったのです。

けれど20世紀後半、椅子の多くは劣化が目立ち、ゴミ同然に廃棄されたものも。それを知ったパリの有名ギャラリーが、研究と収拾をスタート。"ジャンヌレの椅子"の価値と魅力は、世界のクリエイターたちへと広まり、一気にブレイクしました。現在では、インド政府も保存活動を推進しています。

※掲載した商品はすべて税抜です。

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Precious.jp編集部 
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『Precious4月号』小学館、2021年
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STYLIST :
中林友紀 
EDIT&WRITING :
川村有布子、古里典子(Precious)
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