紳士が着るドレスシャツは、基本の形を踏まえたうえで新しい要素を加えて微妙に変化してきた。繊細な技と時のデザインの融合は、ドレスシャツが時代を超えて存在し続ける理由である。ここでは、円熟した洒落者から次世代の紳士が着るべき、現在のリアルなドレスシャツの指針を示していく。

左/アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノのシャツ(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〈アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ〉)右/ブリエンヌ パリ ディスのシャツ(シップス 銀座店〈ブリエンヌ パリ ディス〉)

左/襟元をエレガントに演出するタブカラーは、注目のデザイン。リネン×コットンのしなやかな素材とナポリ仕立ての魅力あるスタイル。

右/ドレスシャツは襟や胸元、袖口に個性が宿る。フォーマルシャツを彷彿させるバンドカ ラーやイカ胸をデザインした一枚。ざっくりとしたリネンの風合いが絶妙だ。


高級仕立て服の名門 「髙橋洋服店」4 代目当主・高橋 純さんに聞く

スーツやフォーマルウエアの仕立て服店の主人・カッターの立場からお話しします。その観点では、ドレスシャツの基本は3つに集約されます。つまり、シャツを着用されたときに見るべき3つのポイント、適正サイズ、襟の見え方、生地選びです。

まず最も重要な適正サイズについて。多くの方が着用されているシャツは、袖が長めです。あまり抵抗なく、長い袖丈で着用されている気がします。シャツの袖は、腕を前に伸ばしたり、上げたりするため、ある程度余裕のある長さが必要ですが、それにしても長い。カフの周囲が大きいのも原因でしょう。手首の位置で袖が留まれば、つまりカフのボタンを留めて位置が固定されれば、少し袖丈が長くても見た目は綺麗になります。あまり意識されない、カフの大きさも気にしてみてください。

フォーマルやスーツだけではなくシャツの注文にも対応する

高級仕立て服の名門 「髙橋洋服店」

襟型のサンプルを飾る店内。同店のスーツに合わせて、シャツの注文も受けている。生地の種類にもよるが、オーダーシャツは¥20,000~で仕立てられる。正統のスーツと抜群の相性だ。

襟も大きいサイズを好む方が多いですね。首回りの目安は、襟と首の隙間に指が2本入る程度がいいでしょう。若干、大きく感じる見立てかもしれませんが、何度かシャツを洗濯した後、ちょうどいいサイズになる、という考え方です。洗濯を繰り返すと、おおよそ1〜1.5cmほど縮みます。

アームホールも大きいものはふさわしくありません。スーツの仕立ては、アームホールを小さく作るのが基本ですから、シャツの脇に余分な生地がたまっていると着心地がよくありません。既製のシャツは概して、アームホールが大きめに作られているため、注意して選ぶことです。

肩幅も、広めが快適と考えている人がたくさんいます。シャツの肩幅は、狭いほうが二の腕が動きやすくジャケットとのなじみもいいですね。 ふたつ目のポイントが、襟の見え方。理想をいえば、ジャケットからシャツの襟が1〜1.5cmほど覗くと美しい。タイスペースも注意してください。芯地の入ったジャカードのタイが好みの方は、シャツの襟を正面から見たとき、左右の羽襟が少し離れたデザインを選ぶといいでしょう。

最後のポイントは生地選び。色の基本の「き」は、やはり白です。淡いブルーや薄いグレーもいいです。今では、はっきりとした柄のストライプやチェックの生地も多彩にありますが、スーツやジャケットと合わせることを意識して、シャツを選びたいものです。 素材についていえば、ブロード(ポプリン)が最もオーソドックスです。コットンの糸が高番手になるほど、肌触りがなめらかで気持ちがいいのですが、180番手、200番手までいくと生地が繊細すぎると感じるでしょう。着ている間にシャツの細かいシワが気になるかもしれません。私の感覚では、140番手の生地が快適な着心地です。スーツに合わせるなら、120番手以上が目安になります。(談)

Shop Data

  • 髙橋洋服店 TEL:03-3561-0505
    住所/東京都中央区銀座4-3-9 タカハシ クイーンズハウス3F 日・祝日定休

※営業時間などの詳細は、店舗HPなどでご確認ください。 


もう一度学ぶ!シャツの基礎知識

ドレスシャツは、タイを締めてジャケットの下に着るのが前提だ。その意味では、襟型の違いを知ること。最もエレガントとされるのが角度の広いワイドカラー。あるいはセミワイド、そしてレギュラーカラーが一般的である。

デザイン、素材、ディテールを見極める

英国シャツの名門ターンブル&アッサーによる、薄手で張りのあるブロード生地を使ったクラシックな仕立て。硬めの襟芯や前立てに個性が宿る。シャツ/ヴァルカナイズ・ロンドン〈ターンブル&アッサー〉
英国シャツの名門ターンブル&アッサーによる、薄手で張りのあるブロード生地を使ったクラシックな仕立て。硬めの襟芯や前立てに個性が宿る。シャツ/ヴァルカナイズ・ロンドン〈ターンブル&アッサー〉

硬めの襟芯や前立てに個性が宿るターンブル&アッサーのドレスシャツ

タイスペースをとったワイドカラーは、いかにも英国のクラシックシャツである。
タイスペースをとったワイドカラーは、いかにも英国のクラシックシャツである。
シャツの裾部分は、三巻の仕上げとガゼットを施し、生地のほつれを防ぐ。
シャツの裾部分は、三巻の仕上げとガゼットを施し、生地のほつれを防ぐ。
キャプション右
3つのボタンをデザインした幅のある特徴的なカフで手首を留める。

素材は、高番手のブロード織りの生地。120番手や140番手を目安に。巧みな技が表現されたディテールも大切。細かい縫製は高品質の証であり、よりエレガントな表情を生み出す。さらに、目につきやすいボタン付けやボタンホールも丁寧に縫われているもの。また、生地の裾や脇の縫製では、三巻という技術が使われる。生地をしなやかに縫い上げ、糸のほつれを防ぐ伝統的な仕事だ。そういったポイントを確認すれば、上質なドレスシャツの基本が見極められる。


ドレスシャツの殿堂「伊勢丹新宿店メンズ館」シャツ担当バイヤー・稲葉智大さんに聞く

ドレスシャツのトレンドは、ビジネスシーンで着るシャツと、ファッションの楽しみとして着る趣向性のあるシャツのように、大きくふたつのカテゴリーに分かれます。

ビジネスシーンは、機能性が重要視されています。例えば、今まで主流だった形態安定機能を備えたシャツに加え、伸縮性のあるジャージー・シャツも注目され、イタリアのトライアーノは人気があります。

注目なのは新鮮な日本ブランドのシャツ

カンタータ、カモシタ ユナイテッドアローズ、ユーゲンなど、モノ作りのコンセプトがしっかりとした、日本ブランドを積極的に提案。どれも上質さを備えた、紳士に響くシャツだ。
カンタータ、カモシタ ユナイテッドアローズ、ユーゲンなど、モノ作りのコンセプトがしっかりとした、日本ブランドを積極的に提案。どれも上質さを備えた、紳士に響くシャツだ。

一方、ファッションの楽しみとして着用するシャツは、スーツの色や素材が進化していくなか、シャツ自体の選び方も変わってきています。ポイントは、上質な素材感とストーリー性を備え、クラシックなシャツ作りの技が盛り込まれた新しいスタイル。そのうえで、見るべき視点をお話しします。

最も傾向が変わったのが襟型です。タイを締めたとき、エレガントなスタイルを表現できる襟型が注目されています。タブカラー、ラウンドカラー、あるいはカラーバーを付けて、タイのノットを立体的に見せる襟型が目立っています。アメリカントラッドのテイストでは、レギュラーカラー、剣先の長いロングポイントも評判が高いですね。

色や柄も変化しています。基本の白以外に、ナチュラルカラーが増えています。今、ブラウンのスーツやジャケットが台頭しているため、生成りやブラウン系のシャツは大きな潮流。自己表現としてスーツを楽しむ方たちが増えている表れだと思います。定番色のひとつ、ブルー系も復活していますね。柄については、ミックス系のストライプが人気です。

そして、シルエットや素材、ディテールに凝り、独自の感性を活したシャツを作る日本のブランドに注目しています。スーツもジャケットのスタイリングもリラックスした雰囲気になっている今、イタリアのシャツも素晴らしいのですが、日本人デザイナーが手掛けるシャツは、リラックスして着られるニュアンスを上手にとらえています。その代表的なブランドのひとつがカンタータ。デザイナーの松島 紳さんは生地に詳しいため、上質なギザコットン糸を選び日本で生地を織る、というこだわりのもち主。シルクのようななめらかな質感のシャツを作ります。縫製も細かく、メンズのシャツでありながらブラウスのシルエットを取り入れたリラックス感が絶妙です。あるいは、誕生して2年ほどのブランド、ユーゲンも作りに技術的なこだわりが見られます。

どちらも、デザイナーの想いがたっぷりと詰まっています。カジュアルに見えるシャツでも、十分にドレスシャツの上質感を備えている。大人の方にも人気のある秘密です。

ふだんのスーツにも着用でき、しかしあまりかっちりとしたシャツではないもの。それが、ドレスシャツの新しい傾向です。(伊勢丹新宿店メンズ館、シャツ担当バイヤー・稲葉智大さん・談)

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※営業時間などの詳細は、店舗HPなどでご確認ください。 


爽やかなスーツを引き立てる上質なシャツの艶感|ラルフ ローレン パープル レーベル

ワイドカラーの爽やかなリネンシャツに、リネン×シルク素材のベージュスーツで清涼感のあるスタイルに。シャツのボタンを開け、ストールでアクセントを。シャツ・ジャケット・パンツ(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレンパープル レーベル〉) ストール(ハバーサック〈トゥータル〉)
シャツ・ジャケット・パンツ(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレンパープル レーベル〉) ストール(ハバーサック〈トゥータル〉)

ワイドカラーの爽やかなリネンシャツに、リネン×シルク素材のベージュスーツで清涼感のあるスタイルに。シャツのボタンを開け、ストールでアクセントを。

淡いピンクが新鮮さを呼ぶ洗練されたカジュアルシャツ|ブルネロ クチネリ

シャツ・スーツ・ベルト(ブルネロ クチネリ ジャパン) 時計(ヴァシュロン・コンス タンタン)

スーツにデザインされたストライプの色合いと響き合う、淡いピンク色のウエスタンシャツ。品のいいカジュアルな表情を演出する、洗いをかけた生地の加工感が絶妙である。ボタンを開けて男らしく。 


王道を貫く正統的なドレスシャツ

大人のスタイルを今も伝え続けるクラシックなドレスシャツ。どんなに時代が変わろうとも本流のシャツには紳士の哲学がにじむのだ。

巧みな技と伝統のスタイルを継承し、王道を貫く正統的なドレスシャツ

左/バルバのシャツ(伊勢丹新宿店〈バルバ〉) 右/アンティカ カミチェリア ロンバルディのシャツ(日本橋三越本店〈アンティカ カミチェリア ロンバルディ〉)
左/バルバのシャツ(伊勢丹新宿店〈バルバ〉) 右/アンティカ カミチェリア ロンバルディのシャツ(日本橋三越本店〈アンティカ カミチェリア ロンバルディ〉)

左/首を包み込むような柔らかい芯地を使ったタブカラー。今季、タブカラーはドレスシャツの注目の襟型である。淡い生成りのハケ目の生地は、ブラウン系のコットンスーツと抜群の組み合わせになる。もちろん、胸ポケットのない正統派だ。

右/数多あるナポリのシャツブランドのなかでも、徹底的に手縫いを施し、美しく仕立て上げたシャツである。リネン×コットン生地は、極薄のポプリンのような繊細な感触が絶品。柔らかい芯地を使ったワイドカラーは、実にドレッシーだ。

パリ名門の変わらぬ美学を宿した、エレガントな作り

シャルべのシャツ(日本橋三越本店〈シャルべ〉)
シャルべのシャツ(日本橋三越本店〈シャルべ〉)

シャツを通して、パリの紳士に永遠のエレガンスを伝えるのがシャルベだ。体に沿った美しい曲線のカッティングや、寸分たがわず体に寄り添う襟回りの作り。まさに、紳士のクラシックスタイルを知り尽くしたドレスシャツである。

世界の紳士たちを魅了する既製ドレスシャツの最高峰

フライのシャツ(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈フライ〉)
フライのシャツ(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈フライ〉)

イタリア屈指のシャツの名門。ブランドの象徴となるワイドカラーは、多くの紳士たちを虜にしてきた、流れるような曲線が白眉。台襟4.5cmは、首元を印象付ける高めの設定。コットンのブルー無地が今新鮮だ。

細かく巧みなステッチで気品も際立つ、くつろぎの一枚

ボローニャに本拠を構えるシャツ専門のブランド。柔らかい芯地のオープンカラーは、往年の紳士のリゾートスタイルを思い起こさせる。リラックスしたデザインながらも、決して気品を忘れないドレッシーさがもち味となっている。
マロルのシャツ(レガーレ〈マロル〉)

ボローニャに本拠を構えるシャツ専門のブランド。柔らかい芯地のオープンカラーは、往年の紳士のリゾートスタイルを思い起こさせる。リラックスしたデザインながらも、決して気品を忘れないドレッシーさがもち味となっている。


カジュアル化するドレスシャツ

紳士も満足する仕立てや細部の作り込み、上質な素材を使った、ゆったりとしたシルエットが、新しいドレスシャツの注目すべきトレンドである。

くつろいだ印象に上質感を残した、カジュアルなドレスシャツ

左/カンタータのシャツ(伊勢丹新宿店〈カンタータ〉) 右/カモシタ ユナイテッドアローズのシャツ(伊勢丹新宿店〈カモシタ ユナイテッドアローズ〉)
左/カンタータのシャツ(伊勢丹新宿店〈カンタータ〉) 右/カモシタ ユナイテッドアローズのシャツ(伊勢丹新宿店〈カモシタ ユナイテッドアローズ〉)

左/バンドカラーのプルオーバー、大きな肩回りのロングシルエットは、今季、カジュアルな風合いのドレスシャツの代表だ。シルクのようになめらかな質感でも、しっかりとコシを備えた生地は、大人の洒落者も楽しめる。細かいステッチの技も見事!

右/極薄のコットン素材を使い、優雅なドレープが楽しめる。シャツの前身頃に一枚生地を当てた大きなイカ胸が象徴的なデザインになっている。ウエスタンシャツのようなヨークの形状など、見せどころが満載。

ドレスが得意なブランドもカジュアルなデザインで勝負

バグッタのシャツ(トレメッツォ〈バグッタ〉)
バグッタのシャツ(トレメッツォ〈バグッタ〉)

イタリアを代表するシャツブランドのバグッタも、ドレス感を生かしながらカジュアルなシャツを多彩に展開。バンドカラーのプルオーバーは軽快感があり、大きめの肩回りが特徴だ。袖をまくり上げたときに支えるストラップもデザインする。

仕立てのギミックが巧み、日本の注目ブランド登場

ラファーボラのシャツ(伊勢丹新宿店〈ラファーボラ〉)
ラファーボラのシャツ(伊勢丹新宿店〈ラファーボラ〉)

プルオーバーに見える打ち合わせや、前身頃に対して後見頃の長いパターンなど、ドレスシャツの風合いに、巧みなギミックを施す。厚みのある白蝶貝のボタンや幅のあるカフにも、アイキャッチを盛り込み、大人好みのシャツに仕上げる。

しなやかなロングポイントのボタンダウン仕様も狙い目

ヴァナコーレのシャツ(伊勢丹新宿店〈ヴァナコーレ〉)

ナポリのシャツブランドのなかでも、いち早くトレンドを取り入れるのが上手なヴァナコーレ。淡いブルーが印象的なロンドンストライプに、ロングポイントのボタンダウン仕様は懐かしさが漂うデザインだ。ギャザーの袖付けが実に粋。


感性鋭い次世代の作り手に大注目!ニッポン、オーダーシャツの実力!

日本はファッションのアイテムにおいて、世界に誇れる優れた職人大国となった。期待すべきは30代の若手シャツ職人。時代感を映し出すオーダーメイドのシャツ作りに挑んでいる。

伝統技に磨きをかける久木元陸央さんの「レスレストン」

1986年創業の「レスレストン」を継ぐのが、2代目の久木元陸央さんだ。中学生の頃、ファッションに興味をもち、母親にミシンの使い方を習い始めた。1989年生まれの久木元さんにとってシャツ作りは、生まれた頃から身近にある天職のようなものだ。型紙作りは初代の父親から、縫製は手練の母親から習い、服飾の専門学校で服作りの理論もマスターした。卒業後「レスレストン」に入社したが、さらにファッションデザインの視野を広げるために他社へ転職。再び「レスレストン」に戻ってからは、オーダーメイドのシャツ作りに邁進した。

インスタグラムを通じて、作ったシャツをアップすると変化が表れた。ショップで注文を受けるシャツが好評を得るのに加え、海外からトランクショーの誘いがかかり始めた。日本人とは異なる体格は戸惑いもあったが、さまざまな体のバランスに合わせられる父親譲りの型紙設計の精度を上げた。

清涼感のある素材使いが絶妙な正統派

コットン×リネン特有のハリがあり、サラサラとした爽やかな質感が魅力。イタリアブランド「シクテス」の上質な生地を使ったセミワイドカラーである。完成度の高い「レスレストン」のシャツは、主張を抑えた品格ある佇まいだ。(レスレストン)
コットン×リネン特有のハリがあり、サラサラとした爽やかな質感が魅力。イタリアブランド「シクテス」の上質な生地を使ったセミワイドカラーである。完成度の高い「レスレストン」のシャツは、主張を抑えた品格ある佇まいだ。(レスレストン)

久木元さんがシャツ作りで大切にしていることが3つある。「脇役に徹し、多様なスタイルに対応する」「手縫いのアイキャッチにこだわらない」「着やすさや機能美の追求」だ。ひとつひとつ説明すると、オーダーメイドのシャツであっても、ハウススタイルを押し付けない。手縫いシャツに見られるやりすぎな職人技の誇張ではなく、同じ手仕事でも上手にミシンを操り手縫いに匹敵する技に関心がある。そして、肌に最も近いシャツは着やすく美しくなければならない、という考えだ。

羽襟の裏側は、 2枚の生地でバイアスに仕上げる。結果、襟の返りにハリが出る。
羽襟の裏側は、 2枚の生地でバイアスに仕上げる。結果、襟の返りにハリが出る。
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着たときに見える前立て部分にはステ ッチを入れず、パンツの中に隠れる下方のみにステッチを加える。繊細な美意識だ。

日本の伝統技を駆使し、海外でも十分に通用する多様なスタイルの表現。「レスレストン」のシャツには、巧みで丁寧な作りに時代の新しさがにじみ出ている。

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急成長の職人登場!南 祐太さんの「南シャツ」

ジャケットの仕立てに比べ、製作時間が短いシャツはより早く完成する。前のめりでどんどん作業し、完成した後も変更箇所の直しがすぐにできる。それゆえ、シャツ作りは性に合っていると言う、南祐太さん。

1983年生まれの南さんは、服飾専門学校を卒業後、千葉の実家で服を作っていた。近所にシャツ工場があることを知ったのがシャツ作りのきっかけだ。3年ほど働き、シャツの縫製をひと通り習得し、生産全体の管理を任された。2007年に独立。オーダーメイドのシャツ職人の道を歩みだす。

カジュアルも得意、渾身のキューバシャツ

2年前に誕生したモデル。映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』から着想を得たデザインは、開襟のゆったりとしたシルエットがもち味。前身頃のプリーツ、カフや後身頃のギャザー使いが秀逸だ。素材はアイリッシュリネン。
2年前に誕生したモデル。映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』から着想を得たデザインは、開襟のゆったりとしたシルエットがもち味。前身頃のプリーツ、カフや後身頃のギャザー使いが秀逸だ。素材はアイリッシュリネン。

まず始めたのが、都内の有名シャツ専門店の下請け。その店のデザインやカッティングの基準に従って既製シャツを作り、オーダーメイドのシャツも引き受けるようになる。下請けの仕事を続けるなかで、かねてから夢に描いていた自分のブランドを立ち上げる決心がついた。

東京・三宿のハンカチ専門店でのトランクショーのほか、自宅を改装したショップ兼アトリエでもオーダーを受け始めた。2016年には日本橋にアトリエを構え、オーダーシャツを扱う生地商を介して、三越伊勢丹日本橋店でのトランクショーにも広がった。

袖口のふくらみを綺麗に表現する、実に細かいカフ部分のギャザー。
袖口のふくらみを綺麗に表現する、実に細かいカフ部分のギャザー。
キャプション右
生地をつまんで、1本1本縫製してプリーツを作るかなり微細な仕事。ポケットのプリーツと前身頃のプリーツをぴったりと繫げる。

南さんにとってのオーダーシャツとは、注文主の要望に徹底的に応えること。シャツのデザインをより魅力的にするうえ、シャツに対する不満をビスポークで解決するのが重要。自分の型にはまったものではなく、話し合いから生まれるシャツを考えるのが職人の仕事だと言う。それだからか、南さんのインスタグラムは作ったシャツがすぐにアップされるため、過去の写真を振り返ると、時代に合わせてどんどんシャツの形が変化しているのがわかる。

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<出典>
MEN'S Precious春号「この服とスタイルで生きていく!」
【内容紹介】竹野内 豊/この服とスタイルで 生きていく!/「変える」シャツ「、変えない」シャツ/「グレージュ」カジュアル/21世紀の「真名品」/ラグジュアリー・カー&ウォッチ/紳士の名品肌
2021年3月4日発売 ¥1,230(税込)

メンズプレシャス2021年春号の詳細はこちら

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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PHOTO :
小池紀行(パイルドライバー/静物)、篠原宏明(取材)、熊澤 透(人物)
STYLIST :
四方章敬
HAIR MAKE :
YOBOON
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Daisuke
EDIT :
矢部克已(UFFIZI MEDIA)