「タイカン ターボ」で東京から一路、北軽井沢へ。
4月半ばに出かけた長距離試乗で、かのポルシェがつくったEVのフィーリングをタイカンするとともに、オーナーとなったら必ず出かける郊外リゾートへ、今、フルEVで行くと実際どうなの?を体感してきた。
【前編】に続き後半をレポートする。
長距離移動の鍵は、燃費ならぬ電費とチャージポイント
さて、EVでのロングドライブで気になるのが電費と充電である。
「タイカン ターボ」はフル充電状態で約400km走行できるとされているが、ドライビングの仕方、路面状況、外気温、エアコンの使用状況などさまざまな要因で航続可能距離は目減りしていく。
この日の目的地は東京から約200km離れた北軽井沢。高速を降りる直前は、目的地まであと40kmの地点で航続可能距離(=バッテリー残量)200kmと表示されていたが、一般道に降りた直後、信号によるストップアンドゴーや上り坂の影響か、一気に170kmに減ってしまった。正直ハラハラ。インパネに表示される航続可能距離と、実際の走行距離がイコールではないところが怖い。
常に電費を確認しながらスムーズでエコな運転を心がけたが、勾配の大きいワインディング路や信号の多い住宅街を通過した結果、目的地に到着した際には航続可能距離100kmに。予想以上の減りで、帰路に充電を予定していた高速SAまで持たない。近場で急速充電できるところを探さなければ......。
ガソリンスタンドほど急速充電設備が普及していない現段階においては、こんなスリルとも隣り合わせだったりする。(いずれはガソリンスタンドの方を探しあぐねるようになるのだろうが...。)
長めの航続距離とゆとりのキャビンでGTとしても活用できる
“航続距離約400km”をそのまま移動距離に見積もることはできないが、今回、高速道路や山道を含む北軽井沢までの片道200kmを、2人乗車で300km分の電力を使って走ったことになる。高出力の急速充電ポイントの確実なアテさえあれば、さらなる長旅も可能だろう。
運転支援システムも充実している。私も、行きは意気揚々とアクセルを踏んでいたが、お疲れモードの帰りはACCやアクティブ レーン キーピングを利用し、アクセルペダルから足を外して筋肉を休めながら家路についた。シート内に仕込まれたマッサージ機能(オプション装備)が、運転中にこわばった背中をやんわりほぐしてくれて心地よい。
前編で述べた通り、「タイカン ターボ」はドライバーファーストのスポーツカーであるが、大人がちゃんと座れる後部座席、フロントとリア合計450L近い荷室も備え、GTとしての一面も持つ。もしあなたが、より同乗者の乗り心地や居住性を意識するなら「タイカン」シリーズに新たに加わった「クロスツーリスモ」もぜひチェックしてほしい。
今、「タイカン」に乗るということ
当然ながら、ポルシェのEVが、ただ環境によくて、ご近所にも迷惑をかけない、お行儀の良いだけのクルマってことは全くない。
私自身、フルEVはまだ数えるほどしか経験しておらず、その中でも「タイカン ターボ」はハイエンドな価格レンジであるため、一概には比較できないけれど、操舵感における優位性は抜群だと思う。ステアリングを握れば必ずワクワクさせてくれる。一目でポルシェとわかるアイコニックな存在感もさすがだ。
ガソリン車のパフォーマンスと比べたらどうか、と言われると、それはやっぱり劣る部分がある。正直、助手席の乗り心地も従来のポルシェの方が良いと感じた。ただそれも、ハイエンドなガソリン駆動のポルシェと比較しての話しに過ぎない。
EV黎明期である今、ポルシェが量産車として初めて世に送り出した電動スポーツカーに乗る、ということは、操舵性とか乗り心地とか、そういうことだけじゃない、つまり嗜好や機能だけでは語れない、自分の生き方を強く発信するメッセージになるのではないだろうか。
「生き方のセンス」が問われるポジションに身を置かれている御仁にとって、戦略的自己投資としても相応しいクルマだと思う。
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- TEXT :
- 林 公美子 ライター