雑誌『Precious』6月号では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私たちがしていること」という特集で持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動をご紹介しています。

その特集のなかから本記事では海洋保護ボランティア「Better Blue」のクリス・マーさんの活動をご紹介します。

クリス・マーさん
海洋保護ボランティア「Better Blue」
山西省出身。工業デザインを学び、パッケージデザイン、貿易などの仕事を経て’12年に上海へ。’17年に、旅先のフィリピンでダイビングを体験した際、海の中のゴミの多さに衝撃を受け、発足直後の「ベターブルー」に参加。

海洋プラスチックゴミ問題に取り組む中国初のボランティア団体

「ベターブルー」は、’17年に中国で初めて結成された、ダイバーたちによる海洋保護のボランティア団体だ。中国全土で年間300回以上のイベントを開催し、より多くの人に海洋汚染の実態を知ってもらおうと活動している。上海エリアの責任者を務めるクリスさんの取材は、海辺でゴミ拾い活動をしながら行った。

「現状は…見たとおりです」と肩をすくめながらも、たまたま通りかかった親子連れに「一緒にやらない?」と声をかけると、子供たちは夢中になってゴミ拾い。結局、30分ほどで20㎏のゴミが集まった!

「きれいにしても、満潮になって潮が引けば、また砂浜はゴミだらけ。キリがありませんが、今はとにかく、『キリがない』ということを伝える段階。地球の71%が海で、そのほとんどの場所で同じことが起きている。この現実を知ってもらうことが、私たちの目的です

【SDGsの現場から】

回収後はゴミの種類を細かく記録

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回収したゴミは、種類や素材、どこから来たのかなども記録。重さを量ってから処分する。

ロゴ入りの旗で通りすがりの人にも活動をアピール

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活動中は旗を掲げる。通りすがった人が興味をひかれて、飛び入り参加してくれることも。

ドキュメンタリー映画の上映会も頻繁に開催している。知ってもらうきっかけになりやすいからだ。海洋プラスチックゴミ問題(※1)を世界に知らしめた「プラスチック・オーシャン」は、中国語字幕版がなかったので、クリスさんらで版権を購入、字幕制作も担当した。

「私は、この活動を始めてから、時間の融通がきく会社に転職もしました。しっかり稼いで経済的な余裕をもつことも、活動を持続するためには必要なことです。

実際、環境問題というのは規模が大きすぎて、活動をしていても変化を実感しにくいんですよね。だからこそ、自分たちの活動とは直接関係のないことでも、変化の兆しがあれば、うれしくなるんです。地道に活動し続けようと思える」

環境がよくなれば、世界も平和になる。彼女はそう信じている。

SDGs(持続可能な開発目標)とは
’30年までに持続可能なよりよい世界を目指す国際目標のこと。17のゴール・169のターゲットから構成。

(※1)海洋プラスチックゴミとは…世界経済フォーラム報告書(’16)では、’50年には海洋プラスチックゴミの重量が魚の重量を超えると予測。地球規模の危機となっている。

PHOTO :
長舟真人
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)