いま、「デンタルIQ」を上げようとする取り組みが、歯科医師をはじめとするデンタル業界で盛り上がりを見せています。デンタルIQとは「歯科に関する知識」のことをいいます。

歯科衛生先進国・スウェーデンなどと比べると、日本はデンタルIQが低いといわれています。そこで今回は、歯科医院の歯科医師の先生に、日本人にどんな知識が不足しているのか? デンタルIQを上げるためのポイントとは?を教わります。

将来の健康と楽しい生活のために知っておきたい「デンタルIQ」とは?

「デンタルIQ」を上げようとする取り組みが、歯科医師をはじめとしたデンタル業界で起こっている

大切なのは「歯が痛くない状態でも歯医者へ行く」こと

今回お話をうかがったのは、医療法人翼翔会 安岡デンタルクリニックの理事長・安岡大志先生。日々、自らも学び、積極的にデンタル知識を広める取り組みをされている安岡先生に、歯科衛生先進国・スウェーデンなどと比べて、日本人にはどのような知識が不足しているのかを教えていただきました。

「日本とスウェーデンの根本的な違いは、予防に力を入れているかどうかです。スウェーデンはPMTC(プロフェショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)、つまり歯科衛生士によるケアが国民全体に普及しており、80歳までに残存する歯の本数は、平均20本となっています。それに対して日本は平均7本と、大きく差があります。

毎日の歯磨きでは落ちない汚れを取り除くためには、歯科医院でPMTCを受ける必要があります。このような、歯が痛くない状態でも健診やPMTCのために通院する必要がある、という知識は、日本人に不足していることだと思います。

また、歯周病の治療では歯周病菌が原因となりますが、保険内の治療では、歯石と歯垢を取ることしかできず、根本的な細菌の治療ができないため、再発してしまいます。再発を防ぐためには、細菌レベルでの治療が必要であるという知識に関しても、日本人にはまだまだ不足しています」(安岡先生)

歯が痛くない状態でも健診やPMTCのために歯科医院へ行くことが大事

知っておきたい「デンタルIQ」5つのポイント

では、自分の歯を健康に保つために知っておきたい、歯のケアにまつわる基礎知識とは? 安岡先生にいくつか挙げていただきました。

■1:虫歯の詰め物や被せ物を「セラミック素材」にすることで、虫歯になりにくくなる

「虫歯治療で歯を削ったとき、詰め物や被せ物を用いるときは、セラミック素材を使用することで虫歯にもなりにくく、金属アレルギーや歯茎の変色の心配がなくなります。また見た目も自然できれいな歯に仕上がります」

■2:痛くなくても虫歯・歯周病が進行していることがある

「歯に痛いところがなく、問題なく噛められていても、虫歯や歯周病は進行していることがあります。この『痛くなる前の虫歯』を早期発見するためにも、定期的に歯医者に通ってチェックしてもらう必要があります」

■3:歯周病リスクを根本的になくす「THP」という治療方法がある

「根本的に歯周病のリスクをなくす、THP(トータル・ヘルス・プログラム)という方法があります。保険内の歯周病治療では、歯周病の進行を遅らせるのみで、完治しているわけではありません。THPでは、歯周病や虫歯を細菌レベルで治療していくため、細菌が起こすリスクをなくしていくことが可能になります。そのため、歯周病や虫歯の再発の可能性を限りなくゼロにすることができます」

■4:痛みの原因は虫歯だけではない。全部で3つ!

「歯に痛みがある=虫歯が原因、と思われがちですが、痛みが出る原因として考えられる状態には、大きく分けて3つあります。①虫歯、②歯周病、③かみ合わせ痛です。痛みが起きて歯科医院に行くときは、虫歯と決めつけるのではなく、ほかにも原因があるのでは?という可能性を考えておくことが大切です」

■5:「ホワイトニング」と「着色を落とす」のはまったく異なる行為

「ホワイトニングと、歯の着色を落とすということは、似ているようで、実はまったく意味合いが違います。これを誤解されている方が多いです。着色を落とすというのは、ワインやコーヒーのタンニンなど、後天的に着いた色を取り去ることです。一方、ホワイトニングとは、歯そのものを脱色して白くすることです。神経の処置をした歯が黒くなったりしてしまうケースは、ホワイトニングや着色を落とすことで対処することはできず、被せ物をすることで、白い色にカバーすることもあります」

ホワイトニングと着色を落とすことは異なること

ふだんから実践したい、デンタルIQを上げる3つの良習慣

意外と知らないことも多かった、デンタルの基礎知識。将来、歯の残存本数を増やし、長きに渡って自分の歯でおいしく食事を味わい、楽しく生活するためにも、ぜひ今からデンタルIQを上げたいものです。そこで安岡先生に日頃から自らできる、デンタルIQを上げる方法を教えていただきました。

■6:歯医者へメンテナンスに通院し、プロに教えてもらう

「3か月に1回ぐらい、メンテナンスや検診のために歯医者に通院して、プロに自分の口腔内の状態をいろいろと教えてもらうといいでしょう。インターネットや本、雑誌などの情報よりも、自分の口の中の状況を元に教えてもらえるので、自分事として学ぶことができます」

■7:日頃から関心を持ち、しっかり理解する

「日頃から歯科の予防や治療の知識について、関心を持ちましょう。自分で調べるのはもちろんいいことですが、気になることがあればそのままにせず、しっかり理解するまでプロに教えてもらうか、ご自身で調べてみるといいでしょう」

■8:口の中の細菌は全身疾患と結びついている

「口の中の細菌は、肺炎や高血圧、糖尿病などの、全身疾患を患う原因や悪化させる要因になります」

デンタルIQの向上は、自分の将来の健康と楽しい生活に直結しているということが、おわかりいただけたかと思います。本稿のなかで、自分が興味を抱いた項目があった場合、かかりつけの歯医者に行く口実にしてみてはいかがでしょうか? 気軽に相談や質問に応じてくれる歯科医院を見つけることは、楽しい人生を長く送るための、「現代のサバイバル術」であるといえそうです。

 
PROFILE
安岡 大志(やすおか ひろし)さん
医療法人翼翔会 安岡デンタルクリニック 理事長
2001年大阪歯科大学卒業、University of North Carolina Department of Endodontics 修了。2007年に安岡デンタルオフィス開院。国際口腔インプラント学会 指導医・認定医、厚生労働省指定 臨床研修施設指導医、大阪歯科大学歯学部細菌学 歯学博士、アメリカインプラント学会 AAID 認定医などさまざまな認定医・指導医資格を有する。常に世界トップレベルの最先端技術と知識を学ぶために、仕事の合間を縫って国内外の講習や勉強会に精力的に参加し、治療に活かすのはもちろん、患者に歯の正しい知識の啓蒙にも積極的に取り組んでいる。
安岡デンタルオフィス
この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
石原亜香利
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