雑誌『Precious』では、『ハイジュエリー真価論』と題し、名ブランドが誇るハイジュエリーの圧倒的な美しさの秘密を徹底解説した特集を連載中です。
6月号では「ヴァン クリーフ&アーペル」のハイジュエリーにフォーカス。今年1月に誕生した「ス レ ゼトワール:星空の下、天空の夢」と名付けられた最新コレクションより、宝石とモチーフで詩情豊かな夢の宇宙を表現したハイジュエリーたちを紹介しています。
本記事では、ダイヤモンドとカラーサファイアをまとって「水星の女神」を表現したブローチと、美しき彗星へのオマージュを表したルビーのリングをご紹介します。
■1:クチュールドレスをまとった、エレガントな水星の女神
水星の女神がまとうダイヤモンドとカラーサファイアのドレスは、オートクチュールの作品を参考にデザインされました。はためくドレスのすそは、水星が高速で太陽の周りを回る惑星であることを表現しています。
水星に例えられた宝石は、多彩な虹色の光がゆらめくプレシャスオパール。その幻想的な美しさは、かつてNASAが撮影に成功した水星の写真を思い出させます。
~Precious Opal~
ヨーロッパで人気の高いオパール。〝遊色効果〟と呼ばれる特徴的な虹色の光がゆらめくものを「プレシャスオパール」、そうした光が見られないものを「コモンオパール」といいます。虹色の光は、オパールを形づくるシリカの微小な球体粒子が規則正しく並んでいるところに光が当たると現れます。その地色が白のものを「ホワイトオパール」、黒のものを「ブラックオパール」と呼びます。
■2:光たなびくリングは、美しき彗星へのオマージュ
19世紀に観測されたなかで最も明るい彗星として知られる「ドナティ」。それは1858年に発見され、初めて写真撮影に成功した彗星で、世界中で話題となりました。
そんな天文学史に名を残す彗星へのオマージュとして誕生したリングは、モダンでグラフィカルなデザイン。立体的なセッティング技術によって鮮やかなルビーの赤がよく映えます。
メゾンの歴史を彩ってきた、天空をモチーフにした輝き
「ヴァン クリーフ&アーペル」の歴史を20世紀初頭から彩ってきた、天空にインスピレーションを得たデザイン。メゾンの記録によると、1906年には三日月のモチーフ、その翌年には星のモチーフを用いたジュエリーが制作されたとあります。
それからも天空への興味は尽きることなく、’20年代には夜空をブラックエナメルで表現したシガレットケース、’30年代には月のモチーフを飾ったミノディエール(化粧品などを入れる小型のバッグ)などが登場しました。
メゾンが保管してきた作品カード。これで過去に制作されたジュエリーがわかる。1935年のカードに描かれているのは、輝く星を放射状のラインで大胆に表現したブローチ。おそらくパールとダイヤモンドが使用されていた。
そうした意匠は、’30年代後半から抽象化されていき、渦巻きやほとばしるようなラインに…。
その頃から見られる躍動感に満ちたダイナミックなデザインは、今回のハイジュエリーコレクションにも踏襲されています。
※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先
- PHOTO :
- 戸田嘉昭、(C)VAN CLEEF&ARPELS
- EDIT&WRITING :
- 福田詞子(英国宝石学協会 FGA)