日本では「モーリシャス」と聞いて、海がきれいなリゾート、とは思い浮かんでも、その位置やどのような場所かご存知の方はまだまだ少ないことでしょう。しかし、このインド洋に浮かぶ小さな島は、大航海時代には、ヨーロッパからアジアへ向かう交易船の重要な補給地として重宝され、ヨーロッパ、アフリカそしてアジアの交差点としての役割を担ってきました。ボードレールやコンラッドなどの文化人から「インド洋の貴婦人」と呼ばれ、愛されてきた南洋の楽園なのです。

イル・オ・セルフ(鹿の島)

モーリシャス島はどこにあるの?日本からの行き方

アフリカ大陸の東側にあるのが、アニメ映画でも有名な「マダガスカル島」。そこからさらに東へ900kmほど離れたインド洋に浮かぶ島がモーリシャスです。正式名称は独立国家なので「モーリシャス共和国」。面積は2040㎢で、東京都とほぼ同じ大きさです。

羽田、成田、関空から毎日就航しているエミレーツ航空の夜便を利用すれば、ドバイで乗り継いだ後、翌日の夕方(現地時間)にはモーリシャスに到着できます。その他、香港、クアラルンプール、シンガポールなどへ就航しているナショナル・フラッグ・キャリアであるモーリシャス航空を利用する方法もあります。

フランス文化の方が色濃く残る、モーリシャスの歴史

海底火山の隆起によってできたこの島は、人間が入植するまでは、コウモリを除く哺乳類はおらず、固有の鳥類と爬虫類たちの楽園でした。なかでも有名なのがキャロルの『不思議の国のアリス』に登場する「ドードー鳥」です。

モーリシャスのドードー鳥(複製)

17世紀に初めてオランダが植民地化して入植した際に、アジアから持ち込まれた豚やネズミがドードー鳥の巣を荒らし、その卵を食べてしまったことにより、発見されてから100年も経たないうちに絶滅してしまいました。「種の根絶」という悲しい事実を初めて人間に認識させた動物としてヨーロッパではとても有名なドードー鳥。イタリアン・ジュエリー・ブランドの「ポメラート」がこのドードー鳥からインスパイアを受けて発表した「ドド」シリーズのチャームは日本でもヒットしたのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

やがて18世紀に入り、南アフリカのケープタウンをアジア交易の拠点とするためにオランダがこの島から撤退すると、その事実を知ったフランスがすぐに島を植民地化し、オランダのナッソー家のモーリッツ公の名前から付けられた「モーリシャス島」の名称を「フランス島」へ変更します。

それから約100年の間、フランスはこの島を東インド会社の重要な補給基地として利用し、またサトウキビ畑を切り開き、製糖産業の発展に努めました。しかし、ナポレオン戦争の勃発により、今度はこの島はイギリス領となり、名前も元の「モーリシャス」に戻されます。英国領に代わった際に、それまで住んでいたフランス系の島民との軋轢を避けるため、彼らの習慣を尊重し、英語の使用を強要しなかったことが、現在にいたってもフランス文化の方が色濃く残り、公用語である英語よりも、フランス語の方が多用される所以となっています。

その後1968年に英連邦の一国として独立し、1992年に大統領を元首とする共和国になりました。

オランダ、フランス、イギリスの植民地を経て、独立国となったモーリシャス。それぞれの時代にヨーロッパやアフリカ、アジアから、ある者は開拓者として、ある者は奴隷として、ある者は移民として集まった異民族が、現在では約130万人の人口を構成し、宗教間、民族間の対立もなく、調和のとれた平和な生活を送っています。

マーク・トゥエインが残した「神はモーリシャスを最初に創り、そしてモーリシャスを真似て天国を創りたもうた」という言葉は、今でも豊かな自然に囲まれた島民の暮らしの中に息づいています。

1960年代からはそれまでの基幹産業だった製糖産業に、観光業も加わり、その歴史的背景を物語るようにヨーロッパ、殊にフランス及びイギリスからの観光客が増加を辿り、豪華クルーズ船の寄港も増え、現在では年間約100万人の観光客を受け入れるまでに成長しました。

活気あふれるセントラルマーケット
モーリシャスのオペラハウス

世界的にメジャーなホテル・グループである、One&Onlyやフォーシーズンズ、シャングリラ、セント・レジスなどの高級ホテルも島内に点在し、ヨーロッパ各国の王族、大統領、ハリウッドセレブやスポーツ選手など、お忍びでバカンスに訪れる著名人は枚挙にいとまがなく、気候同様、暖かい島民のホスピタリティーを甘受しています。

1年中半袖が基本!快適なリゾート、モーリシャスの気候

モーリシャスの青く透き通る海

南緯20度に位置しているモーリシャスは沖縄と同じように亜熱帯に属しています。季節は大まかに、5月の後半から9月にかけての冬季、10月から5月の半ばまでの夏季の2季に分かれています。

冬季でもリゾートが集まる沿岸部では、日中の最高気温は28度、夜間の最低気温が14度くらいなので、海に入るにはやや海水が冷たく感じることもありますが、日中は半袖の洋服で過ごすことのできる爽やかな気候です。

大自然の中の美しい滝
優雅なクルーズも楽しめる

まれに夏季にはサイクロンと呼ばれる熱帯性低気圧が発生することもありますが、気候の変動のせいか、ここ10年近く大きな被害をもたらしていません。

夏季は最高気温が34度くらいになりますが、湿度はさほど高くないので、外にいても木陰や日陰に入れば快適に過ごすことができ、1年を通じてリゾートとしての滞在を楽しむことができますよ。

 

以上、日本からの行き方や歴史など、モーリシャス島についてまずは知っておきたい基本情報でした。次回は、観光スポットやショッピングスポットを紹介します。

シリーズ「モーリシャス島」

PROFILE
伊藤みどり(いとう みどり)さん
モルディブのリゾート勤務の後、モーリシャスへ。モーリシャス人の夫と17歳の老犬と、サンセットが美しい海の近くで暮らしている。現地のマネージメント会社にて、日本からの観光客や外交ミッションのアシスタンス、雑誌やテレビの撮影コーディネーターとして活躍中。
この記事の執筆者
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EDIT :
渋谷香菜子