坂道は異世界につながっている。ときにそう思うことがあります。常に変化を続け、近代的なビルが立ち並ぶ都市のなかで、坂道は何百年と前から存在している。ここにまだ建物がなかったとき、どんな風景が広がっていたんだろうか?

江戸時代には武士や町人たちが、今の自分と同じように息を切らせながらここを往来していたに違いない……。そんな心象風景とともに坂道を歩くと、時間旅行をしているような気分になれるのです。東京には、名前のあるものだけで約800の坂道があります。それらひとつひとつに、歴史と物語、ロマンが宿っているのです。

想像するほど楽しいめくるめく坂物語

普段は見逃しがちだが、坂道にはしばしば名前の看板が掲げられている。ときには解説がつけられたものもあり、意外な発見があることも。坂の歴史や由来を知れば、想像を膨らませるきっかけになる。

坂道に着いたら、まずは看板を探してみてください。そこに坂の歴史や由来が記されていることもありますし、名前だけが書かれていることもあります。そのときは、名前の由来を想像してみる。名前のない坂なら、自分で名付けてみるのもいいでしょう。

坂の由来は、地形・風景・伝説・寺社名・人物などいろいろなものがありますが、さてこの坂にはどんな名前がふさわしいかと考えるだけでもかなり楽しめます。

坂の世界観を理解したら、実際に歩いて物語を堪能してみる。

清々しい眺めで有名な目白・富士見坂

豊島区高田一丁目に位置する坂。かつてはその名のとおり富士山を望むことができたが、現在は新宿のビル群にそれを阻まれてしまっている。とはいえ急勾配の坂上から見る都心は大変清々しい眺め。向かって左には「日無坂」という別の坂が合流しているのも特徴。
豊島区高田一丁目に位置する坂。かつてはその名のとおり富士山を望むことができたが、現在は新宿のビル群にそれを阻まれてしまっている。とはいえ急勾配の坂上から見る都心は大変清々しい眺め。向かって左には「日無坂」という別の坂が合流しているのも特徴。

そうすると、現実とはひと味違った心象風景が展開されるはずです。旅に行けない今だからこそ、身近な坂道で心の旅行を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN’S Precious2020年秋号より
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談 :
雲本らて(坂道探検)
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