今年5月のフィレンツェのグッチ ガーデンでの開催を皮切りに、世界各都市を巡回している「Gucci Garden Archetypes」展。「グッチ」の世界の元型となる広告キャンペーンをもとに、様々なインスタレーションを行う13のエリアからアレッサンドロ・ミケーレの頭の中をのぞく趣向だ。

今年日本上陸を果たす「グッチ ビューティ」では美容広告の常識を壊す

毎シーズン、広告キャンペーンムービーにも力を入れている彼だけあって、映像を使用したコーナーもウィットに富む。スタートである「Room 0 Control Room」は、レトロフューチャーなコントロールルームに「グッチ」の広告ムービーを映し出すモニターを約30も設置。

「Room 0 Control Room」
「Room 0 Control Room」

ランダムに映し出される映像の数々は、彼の奥行きのある頭の中を象徴しているようだ。

映像をメインにしたコーナーはもう一つ。放送局という設定で、真っ赤なリップを塗った唇が現れる「Room 3 Gucci Beauty Network」は、昨年グローバルローンチし、日本では2021年9月に発売を開始したメイクアップライン「グッチ ビューティ」のリップスティックを紹介する。

「Room 3 Gucci Beauty Network」
「Room 3 Gucci Beauty Network」

「メイクアップは自由で制約のない自己表現であり、欠点も美しさを伝える貴重なディテールとなります。それはささやき声で語られる、伝統からの解放に他なりません」

そう彼が語ったとおり、映像に登場するのは性別不詳や歯並びの整っていないモデル。決めつけられた美の基準に従わないことを宣言するビジュアルは、近年の美形モデルで埋め尽くされた既存の美容広告の中では印象的でインパクトのあるイメージとなった。

展示を通じてアレッサンドロの視点で世界の都市を追体験する

様々な事柄にアンテナを張るアレッサンドロらしく、広告キャンペーンの舞台はヨーロッパばかりではない。

彼が「グッチ」で初めて手掛けた2015年秋冬コレクションの広告キャンペーンは、ロサンゼルスの地下鉄で撮影された。地下鉄の車両だけでなく、キャンペーンに出演したモデルまで3Dプリントで完璧に再現された空間が広がる。

「Room 4 Urban Romanticism」
「Room 4 Urban Romanticism」

彼は地下鉄を洗練された都会の洞窟と定義し、ある地点から別の場所へと移動する狭間の世界であり、白昼夢が生み出される場所と考える。普段我々が何気なく利用する無機質な生活の一部にも可能性を見出している。

2016年秋冬コレクション広告キャンペーンでは、東京が選ばれている。あらゆる色彩の人工的な光に溢れ、昼よりもなお明るく輝く夜の東京。驚くべきは中央に据えられたデコトラ。

「Room 5 Tokyo Lights」
「Room 5 Tokyo Lights」

キャンペーンムービーにも登場したデコトラの過剰なまでの装飾は、モノの独自性を極限まで強調する、偏執的なカスタマイズを愛する日本のチューニング文化に根差す。同時に最先端を行くハイパーテクノロジーの美学が彼の琴線に触れた。

コーナー同士を繋ぐアプローチにも彼の思想は充溢している。1968年に起こった五月革命をテーマに掲げた2018年プレフォール コレクションは、著名なスローガンである「美は路上にある」がインスピレーション源になっている。

「Room 6 Dans Les Rues」
「Room 6 Dans Les Rues」

デモに参加したパリの若者たちのスローガンとメッセージが壁一面に書かれ、フランスの若き活動家たちを称える。

アレッサンドロが抱える驚異への執着

彼の興味はもちろん都市だけに留まらない。この世のものとは思えないものへの傾倒を具現化することもある。

1960年代から1970年代にかけてのSF映画やSFテレビ番組を巧みに取り入れた2017年秋冬コレクションの広告キャンペーン。キャンペーン映像では、遠い宇宙の叙事詩として表現された。

「Room 7 Gucci And Beyond」
「Room 7 Gucci And Beyond」

この世界を「グッチ」の職人がディテールに至るまで忠実に再現したジオラマとなって見ることができる。

圧巻はコレクターをテーマにした2018年秋冬コレクションの広告キャンペーンだ。個性が強く、圧倒的な情熱で驚くほど独特な性格を持つ蒐集家の世界をキャンペーンムービーにも登場したアイテムで構成している。

「Room 1 Gucci Collectors」
「Room 1 Gucci Collectors」

天井と床が鏡張りになった空間には大量の蝶の標本とぬいぐるみ、鳩時計が整然と並び、そのパワフルさに圧倒される。中央のディスプレイ棚には、新アイコンである「GGマーモント」のバッグアーカイブ。その多彩さに思わず息を呑む。

「Room 1 Gucci Collectors
「Room 1 Gucci Collectors

好奇心の強さ、発想の大胆さによって生まれるアレッサンドロの強烈な個性。細部にまで彼のこだわりが感じられる、何度でも足を運びたくなる中毒性の高いエキシビションだ。

「GUCCI GARDEN ARCHETYPES」

会期/2021年9月23日(木・祝)〜10月31日(日)11:00〜20:00、金・土・祝前日は〜21:00※最終入場は閉館時間の30分前まで
場所/東京都品川区東品川2-1-3 天王洲B&C HALL・E HALL
入場無料(事前予約制)、オンライン予約は【グッチ】公式LINEアカウントから

※今後の状況によっては、事前の予告なく変更となる可能性もあります。本エキシビションの最新の状況については、グッチ ジャパン クライアントサービスまで問い合わせください。また混雑時にご来場人数を制限する場合がありますので、予めご了承ください。

※本エキシビション会場では、来場者の安全に配慮するため、感染症対策を徹底して行っています。

問い合わせ先

グッチ ジャパン クライアントサービス

TEL:0120-99-2177(受付時間 10:00- 21:00)

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この記事の執筆者
フリーランスのライター・エディターとして10年以上に渡って女性誌を中心に活躍。MEN'S Preciousでは女性ならではの視点で現代紳士に必要なライフスタイルや、アイテムを提案する。
PHOTO&MOVIE :
小倉雄一郎(小学館)