身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。デンマーク家具ブランドの中でも往年の名作を多く抱え現在も素晴らしい新作を発表し続けている「フレデリシア(FREDERICIA)」から、2020年に再販されたラウンジチェア「キャンバスチェア」をご紹介します。

「往年の名作がほしいけれど、人と違うものがいい」「手持ちのインテリアになじむデンマーク家具がほしい」「そもそもどれを買えばいいのかわからない」…そんな声をよく耳にします。名作のもつ“風格”とリネン素材のハンモック構造という“リラックス感”が同居するフレデリシアの「キャンバスチェア」ならば、あまり人とかぶることなく目利きの人だけが感じ取る本物の質の高さを生活に取り入れることができます。

本記事では、フレデリシアのアーカイブから発掘されて2020年に再販されたばかりの隠れた名作ラウンジチェア「キャンバスチェア」をピックアップ。このタイミングでの再販は運命だったとも言える、現代にこそふさわしい魅力をさまざまな角度からご紹介します。

“禅”の精神を感じさせる、そぎ落とされた構造美

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【ブランド】フレデリシア 【商品名】キャンバスチェア 【写真の仕様の価格】¥348,700 【サイズ】幅740×奥行き655×高さ760×座面高415(mm) 【材質】オーク(ソープ仕上げ)×ナチュラルキャンバス

「キャンバスチェア」は、構造的なフォルムにこだわったラウンジチェア。1970年にボーエ・モーエンセンによってデザインされました。モーエンセンがフレデリシアとの活動を通して確立したスタイル「力強く、かつシンプル」を体現しており、現代的な要素も加えながら、伝統的な素材から製作されたラウンジチェアの傑作です。

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左/木や麻の自然の素材感と理にかなった形状が、空間に静謐な雰囲気を作り出します。右/窓辺に置くとリネンのカジュアルなムードが心地よいコーナーを作ります。
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そこはかとなく座布団を彷彿とさせるオプションの専用クッション(¥40,700)。

清潔を保ちながら長く愛用できるサステイナブルな面も魅力

新しいものを手に入れる際、「できればサステイナブルにも配慮された製品であってほしい」と願う方も多いのではないでしょうか? 

「キャンバスチェア」は、背面のキャンバスを張っているコーン状(先細りになっている)の部材の底面にあるネジを回すだけで簡単にシートを外せるので、お手入れしたり、取り替えることも可能です。

座面と背面の隙間に埃が溜まるようなこともありません。日々のお手入れはブラッシングをするなど手軽に清潔を保てるのが嬉しいですよね。

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左/アームの部材を貫通して、背と座を張っているコーン状の部材はネジ一本で留まっています。右/オプションの専用クッションはカバー式。

 クッションの有無によるかけ心地の違いもチェック!

クッションの有無による大きな違いは「お尻の感覚」と「見た目の温度感」。結論から言うとどちらも心地よく、好みの範囲内だと感じました。

クッションなしのほうが、ハンモック構造独特の浮遊感を楽しめます。また空間にシャープにおさまります。クッションありのほうは、見た目もお尻に伝わる感触もより柔らかく「ほっこり」と落ち着きます。またクッションは座面の保護にもなるので、より長く綺麗に使いたい方にはおすすめです。冬には手持ちのムートンクッションなどを合わせても素敵ですよね。

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写真左はクッションなし。右はクッションありです。座っている本人が感じる差よりも、周りから見たときの印象の変化のほうが大きいように感じます。置き式のクッションは座るとたわみ、ユルっとした感じが好きか嫌いかというところで判断されるのがいいと思いました。

「スパニッシュチェア」のデザイナーが晩年に新しい解釈で再構築した幻の名作

ちょっと家具に詳しい方ですと、「キャンバスチェア」はフレデリシアを代表する名作「スパニッシュチェア」のリネン張りかな?と、勘違いされるかもしれません。それもそのはず、「キャンバスチェア」は、1958年にデザインした「スパニッシュチェア」をシンプル&カジュアルな目線で再構築したラウンジチェア。1970年に発表されました。

「スパニッシュチェア」の人気に隠れ一時期生産されていなかった「キャンバスチェア」ですが、その端正な魅力を過去のアーカイブから発見されたことがきっかけで、2020年に再販される運びとなったのです。「スパニッシュチェア」の半額程度でお求めいただけ、値ごろ感があります。

「キャンバスチェア」「スパニッシュチェア」共に、アームが本来の肘かけに加えて新聞やコーヒーを手元に置けるサイドテーブルという2つの機能を持つようにデザインされています。無垢材のフレームとハンモック構造という共通点はありながらも、空間に置いたときの印象は大きく異なります。

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「キャンバスチェア」(右)のほうが、背もたれが高い分“抱擁”されている感覚があります。厚革の「スパニッシュチェア」(右)は腰を支えてくれる印象を受けました。

「キャンバスチェア」は合理的でミニマルアートのようにシンプルな一方、「スパニッシュチェア」は座と背を支える木製フレームが後方に向かってカーブがかかり、丸みを帯びておりよりリラックスした印象を空間に添えます。またかけ心地の印象も背中に当たる感覚が大きく異なりました。

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フレームの構造の違いで、ミニマルな「キャンバスチェア」とレトロモダンな「スパニッシュチェア」といったように異なる表情を見せます。

デンマークデザインの系譜を継承する名門ブランド「フレデリシア」

1955年に設立されたデンマークの家具ブランド「フレデリシア」。設立当初から熟練した職人のみを雇用し、現在では最新の技術力を持つ関連企業と連携しつつ他の追随を許さないほどの高い品質の家具を生産し続けています。

現代の暮らしに合った潜在的なニーズを掘り起こし、往年の名作を継続生産し続ける一方で新作を提案。過去のアーカイブも必要となれば見直す柔軟な姿勢が、いつの時代にも新鮮に映る、北欧を代表する名門ブランドです。

コラボレーションしてきたデザイナーは多数。これまでにボーエ・モーエンセンやハンス・J・ウェグナーといった北欧の巨匠から、ナナ・ディッツェル、ジャスパー・モリソンなどのコンテンポラリーな作品まで幅広く展開しています。

デニッシュモダンを牽引した巨匠、ボーエ・モーエンセン

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デンマークの近代家具デザインにおける代表的なデザイナー、ボーエ・モーエンセン

1914年生まれのボーエ・モーエンセンは、20歳で家具マイスターの資格を得て、家具職人としてのキャリアをスタート。「シンプルかつ実用的な家具を、リーズナブルな価格で提供すること」を信念とし、大衆視点のデザイン、不必要な部分には高級材を使わず機能美を追求した作品を数多く残しています。

フレデリシアとは創設時から、丈夫で長持ちすることで定評のある椅子を中心に制作しました。


今回は、フレデリシアから復刻した名作ラウンジチェア「キャンバスチェア」をご紹介しました。

「キャンバスチェア」の誕生から半世紀が経ち日常の暮らしが大きく変化し、さらにコロナ禍で多様なリラックススタイルを追求する人が増えた今こそ、北欧らしい素材感とサステイナブルで静謐なデザインが必要とされるのではないでしょうか?

より現実的な価格帯で多くの人に本物を届けたいと願ったモーエンセンのデザインが再販されたことは、いつの時代も最先端をいく名門ブランドのすばらしい試みだと思います。

※掲載した商品の価格は、すべて税込です。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM