北イタリアのヴィチェンツァ市は宝飾の町として名高く、毎年宝飾品の国際見本市「ヴィツェンツァ・オーロ」を開催している。そのヴィチェンツァで去る2021年12月17日に発表されたアマローネは世界で最も高価なワイン・ボトルを使用しているとイタリア中のメディアで話題になった。その金額はなんと250万ドル(約2億8000万円)とブルゴーニュの銘醸ワインもしのぐ価格だがその正体は?

ブルゴーニュの銘醸ワインもしのぐ世界一高価なワインの正体とは?

世界最高額のボトルを手にするのはエルザ(左)とダリオ(右)のメネゴッリ姉弟。
世界最高額のボトルを手にするのはエルザ(左)とダリオ(右)のメネゴッリ姉弟。

これはヴィチェンツァにある創業40年の宝飾品工房パイジェム社 Paigemが制作したワインボトルで、マエストリ・オラフィと呼ばれる彫金マエストロがダイヤモンドやルビーなど600石を使用して完成させた。その費用はなんと250万ドル(約2億8000万円)。世界で最も高価なワインを作ろうという意欲的なプロジェクトはパイジェム社と、ヴァルポリチェッラのワイナリー、メネゴッリ社とのコラボレーションから生まれたものだ。メネゴッリ社のエルザ・メネゴッリはこう語っている。

「このワインのパッケージングはとても貴重ですが、中身も同じくらい貴重です。2013年のアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラはヴェネトのテロワールを反映した実に素晴らしい作品なのです。」

メンゴッリのフラッグシップワイン「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・プレミアム」。
メンゴッリのフラッグシップワイン「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・プレミアム」

ピエトロ・メネゴッリが1913年に創業したメネゴッリ社はヴァルポリチェッラの生産地ヴェローナにある50haの畑を所有、主にアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラとヴァルポリチェッラ・リパッソ・スーペリオーレを生産している。現在は創業者ピエトロの息子ルイジとフラヴィア夫妻、そしてその子供たちエルザとダリオ姉弟がワイン作りに情熱を燃やす家族経営のワイナリーだ。2003年には地下12mのセラーを建造し、2013年には同社が所有するワイン樽が世界最大としてギネスブックに認定されたエピソードも持つ。

ギネスブックに認定された世界最大のワイン樽「ラ・スーペルバ」はなんと5万6000本分のワインを貯蔵することができる。
ギネスブックに認定された世界最大のワイン樽「ラ・スーペルバ」はなんと5万6000本分のワインを貯蔵することができる。

これは同じヴェネト州にあるワイン樽作りの名門ガルベッロット社がメネゴッリのために制作した「ラ・スーペルバ」で、樹齢200年のオーク5000キロを使用。56,666本に相当する425ヘクトリットル(4万2500リットル)のワインを保持することができる。さらにこの世界最大の樽にはヴェローナのアーティスト、セルジオ・パセットによりロメオとジュリエットのバルコニーのシーンが刻まれているのだ。

ヴェローナを訪れたことがある人ならご存知かと思うが、シェイクスピアの悲劇「ロメオとジュリエット」は中世のヴェローナが舞台となっており、今も市内には「ジュリエットの家」が歴史的モニュメントとして残されている。ちなみにこの世界一高価なワインは購入することもできるので、興味がある人は下記サイトからメネゴッリにコンタクトしてみてはいかがか。

MENEGOLLI

この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。