家で過ごす時間が長くなり、住まうこと、暮らすことへの関心がこれまで以上に高まっています。
そこで、インテリアや家具だけでなく、どう住むか、どう暮らすかといった「生き方そのもの」と連動した「家」のあり方について考えてみたい。雑誌『Precious』2月号では、そんな想いから、6人の方に「理想の家と暮らし」についておうかがいしました。
今回は、クオリア・コンサルティング代表 大塚久美子さんのご自宅をご紹介。また、大塚さんが長く仕事を続けてたどり着いた「住まいは人生そのもの」という思いについても、お話をうかがいました。
「住まいは、価値観や心のもちようをつくっていく、まさに人生そのもの。だから自分らしく整えたい」
インテリアには「ありたい自分」へと導く力が
住まいやインテリアに関する分野でコンサルティングを行う、大塚久美子さん。子供時代から数えると、引っ越しは20回以上。そのたびに、「どんな住まいにしたい?」「どんな暮らしにしたい?」と考えてきたことが、今の仕事の礎になっているといいます。
インテリア関連の仕事を長く続けてたどり着いたのは、「住まいは価値観や心のもちよう、本質的なものをつくっていく、まさに人生そのもの」という思い。
「私がよく思うのは、空間が人間をつくる、ということ。家具のレイアウトによって、毎日の何気ない行動が決まってくる。その行動が習慣をつくり、習慣が人となりをつくっていくものだと思うのです」
例えば、家の中にくつろげる椅子が一脚あれば、そこでお茶を飲んだり、好きな本を読んだり…と、ほっと落ち着ける時間ができ、心に平穏がもたらされる。そんなふうに、インテリアへのこだわりから暮らしのなかによい習慣が生まれると、その習慣は人に新しい変化や幸せをもたらしていく…。
「住まいをつくるインテリアは、自分が心地よくいられるためのもの。そしてもうひとつ、『ありたい自分』へと導いてくれる力があると、強く感じています」
まずは、インテリアのファブリックから見直して
もし今の住まいに満足できていなくて何かを変えたいと思っても、どこから手をつけてよいか迷ってしまうもの。その一歩として「インテリアのファブリックから見直してみるのがおすすめ」と、大塚さん。
「カーテンやベッドカバー、クッションカバーといったインテリアファブリックは、ファッションでいうところの洋服のようなものです」
天井や壁、床は、人の肌や髪の毛の色のようなもので変えにくい。けれどインテリアファブリックなら手軽に替えられ、それでいて面積も大きいので効果も大きい、と。
「インテリアのセンスには自信がないという人も、実はやったことがないだけ。部屋をコーディネートするのも、ファッションと同じです。洋服で経験を積んだプレシャス世代の方々なら、大丈夫。ファブリックの色や素材、柄で部屋を『装う』と考えてみて。
そしてファッションと同じように、実際に試行錯誤をしてみるのがいいと思います」
成熟世代なら、寝室にも「優しさや女らしさ」を添えて
場所は替えやすいところから始めるのが鉄則ですが、「過ごす時間の長い寝室から、もおすすめ」。
「ベッド周りをなんとなく白でまとめている人も多いかもしれません。白は何にでも似合う万能の色。けれどベッドカバーやスロー、クッションの色味や素材にこだわって替えるだけでまったく印象が違ってきます」
かくいう大塚さんも、「ベッド周りにもっと女性らしさが欲しい」と、数年前、ベッドのヘッドボードを白に変更。ベッドカバーやベッドスローも、繊細な素材や優しいモチーフを重ねるものに替えたといいます。
「成熟世代になると、ファッションでもジュエリーで光や艶を加えたくなるでしょう。インテリアも同じです。ファブリックで女らしさを足してみると、自然と優しく、穏やかでいられる気がするのです」
そしてベッド周りのファブリックにこだわることで、毎朝ベッドを整えることが楽しくなる、という効果もあると言います。
「自分が幸せと思う行動を、いかに楽に楽しくやれるかが大切。そのためにインテリアや暮らしを設計していく。意志の力で我慢してやるのではなく(笑)。
まずはだまされたと思って、やってみてください。朝起きた時に好きな色や柄が目に入ると、テンションが上がる。ベッドを整えるのも面倒でなくなる…。夜疲れて帰宅したときも、美しく整えられたベッドを見たら、うれしい気持ちになる…。そこから、幸せは増していくのだと思います」
- PHOTO :
- 篠原宏明
- EDIT&WRITING :
- 川村有布子、古里典子(Precious)