リストランテ「コルベッツォリ」は、ボローニャ中心部から南西に約6km、自然豊かなエリアにある。住宅街からやや離れたこの場所にレストランがあるのには、実はわけがあるのだ。もともとこの場所にはカタツムリの養殖を目的とした鉄製の温室作りが計画されていたのだが途中で頓挫。
その骨格を受け継いで建設されたのが「ルレ・ベッラーリア・ホテル」で「コルベッツォリ」はホテルのメインダイングとして誕生した。環境に配慮した建築コンセプトは「コルベッツォリ」にもそのまま生かされており、半地下にあるレストランの天井部分は芝生で覆われ、温暖化防止の一助ともなっている。
仔牛の胸線肉のスパゲッティを堪能できるリストランテ「コルベッツォリ」
「コルベッツォリ」の厨房を率いるのはナポリ出身のシェフ、ジュゼッペ・タランティーノ。それまでギリシャはじめ各地のレストランでキャリアを磨いたジュゼッペはボローニャの「イ・ポルティチ」などでも活躍。そして2017年に「コルベッツォリ」のシェフに就任した。ジュゼッペが目指すのは、エミリア地方の郷土料理と生まれ故郷であるナポリ料理の融合。イタリア広しといえども、こと料理に関していうならどちらの街も、料理に関しては誰もが一家言持つ土地柄。郷土料理至上思考が強いイタリアでは他の都市の料理を受け入れ、融合させるのは決して容易ではない。しかしジュゼッペは高いレベルで融合に成功。その料理は地元ボローニャのみならず、遠方から求めてくるほど今や評判となっている。
アミューズとして登場するフィンガーフードはそうしたナポリとボローニャ、つまり南と北の融合だ。イカ墨、ンドゥイヤ、ウニのカンノーロからは磯の香りが漂い、言い得て妙、その名もファジョリーニ・ディ・マーレ(海のいんげんまめ)という海藻を使ったひと口サイズのビニエ、ひよこ豆のポルペッティーナには、パルミジャーノではなくペコリーノを使ったサルサ・ボロニェーゼを。ミニハンバーガーは仔牛頬肉のブラザートを使ったナポリ風ジェノヴェーゼにルーコラのソース。そしてパンではなくキノアを使ったリボッリータは白いんげん豆のクリームと黒キャベツ。これだけでもイタリア半島縦横無尽、ボローニャとナポリ、から晒しに足を伸ばしてカラブリア、トスカーナをイタリア全土を、料理を通じて旅しているような気分にさせてくれる。
パスタといえばボローニャにも世界的に知名度の高い銘品が多いが、ここはジュゼッペの故郷であるナポリのスパゲッティが登場。まずパスタはナポリ近郊、パスタの聖地と呼ばれるグラニャーノ産を使い、仔牛肉のソースをたっぷりとまとって登場。カリカリのタマネギのチップス、そして緑も鮮やかなフェンネルのソース。食材は最小限ながらも実に味わい深く、そえられた仔牛の胸線とともに食べると、パスタも肉料理も一度に味わえるピアット・ウニコ的な満足感も味わえる。
最後のドルチェもまた素晴らしく、森の落ち葉を敷き詰めた標本箱を器に見立てて登場したのはペパテッリのチーズケーキ。ペパテッリとはアブルッツォの郷土菓子で薄焼きアーモンド・ビスコットのこと。さらに山羊のチーズと抹茶のスプーマ、栗、洋梨とさまざまな味と食感が楽しめる。
ボローニャを初めて訪れたのなら、伝統的な郷土料理であるラザーニャやタリアテッレ、そして有名なラグー・ボロニェーゼに舌鼓を打つのもいい。しかし、さらにもう一段階上、現代ボローニャを代表するファイン・ダイニングを体験してみたいならば「コルベッツォリ」を勧めたい。美食の都として名高い、ボローニャ市民でさえ未体験の、新しい味に出会えるはずだから。
コルベッツォリ
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Corbezzoli TEL:+39-051-453103
Via Altura 11/bis BOLOGNA(BO)Relais Bellaria Hotel
営業時間/19:30〜22:30 ※日月休
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- TEXT :
- 池田匡克 フォトジャーナリスト