アイディアが光る!「SDGs×地方創生」注目の5 TOPICS
当たり前のモノやコトを違う視点でとらえて、新たな価値を形成するのがカギ
人口減少や少子高齢化、経済の縮小などが課題となっている地域の注目すべき取り組みを、自治体SDGs研究の専門家、高木 超先生にうかがいました。その土地の特性と向き合い、情熱と対話をもって広げてきたアクションは実に個性豊か。実際に訪れたくなる所ばかりです。
お話をうかがったのは、この方…
■ TOPIC1:北海道下川町発|面積の90%が森林の町。木を余すところなく使いきり、資源もお金も域内循環させる
“森の町”だからこそ発生する、林地残材や未利用の間伐材、加工物の端材…。これらを集め、専用ボイラーで燃やして熱水をつくり、暖房や給湯として小学校や役場、公営温泉などの公共施設に活用。この「木質バイオマスエネルギー」のおかげで、灯油の購入量が減って大幅な経費削減となり、浮いたお金で子育て支援を実施。
「あるものをむだなく使いきるという基本に目を向けて、本気で取り組んだのが素晴らしいと思います。さらに、木質バイオマスによって地域内でお金を循環させることができ、その結果、経済面でも持続可能に。“構造ごとデザインした”成功例です」(高木先生)
安定した雇用と木材の供給を確保するため、1960年に“持続可能な森づくり”をスタート。
寒さ厳しい下川町の経済を支える、木質バイオマスボイラー。
■ TOPIC2:鹿児島県大崎町発|リサイクル率12年連続全国No.1! 住民主導の「大崎リサイクルシステム」で世界の未来をつくる
25年ほど前、ゴミの埋立処分場の残余年数が逼迫していることが発覚。莫大な運用費の関係で焼却炉の新設は難しく、ゴミの量を減らして埋立処分場を延命化することに。そこで、町役場は約450回もの住民説明会を行い、ゴミを減らすべき理由や分別の方法などを丁寧に伝えていったのだとか。現在では27品目分別を行い、埋立処分場の延命にも成功。国際協力機構(JICA)を通じて、ゴミ問題に悩むインドネシアへの技術移転も実施。
「住民の方がゴミ問題を“自分ごと”としてとらえ、今や取り組みは住民主導。町全体で未来へのビジョンを共有していることに感動しました」(高木先生)
プラスチック、缶、びんの圧縮や、廃食油の精製などを行う「そおリサイクルセンター」。
■ TOPIC3:徳島県上勝町発|捨て方をリデザイン!「上勝町ゼロ・ウェイストセンター〈WHY〉」は町の新たなシンボルに
ゴミ処理費の増大を回避するため、2003年に全国初の「ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)宣言」、ゴミの45分別を行う上勝町。一方で過疎化が深刻な問題となっており、町の創生を託された小林篤司さんは「ゼロ・ウェイスト」を地域ブランドとして打ち出すことに。町と連携してゴミステーションをリニューアル、宿泊体験施設「HOTEL WHY」等を含む「上勝町ゼロ・ウェイストセンター〈WHY〉」をオープン。
「45分別という体験を通して、そのゴミは換金できるのか、処理にお金がかかるのか、どこでどのように処理されるのかなどを学べる施設。廃材を巧みに利用した建物もスタイリッシュで、デザイン力をもって人を惹きつけているのが興味深いですね」(高木先生)
上から見ると「?」を描く〈WHY〉の建物。疑問符をもって日々のゴミから学び、ゴミゼロの社会を目指す。
- 上勝町ゼロ・ウェイストセンター〈WHY〉
- TEL:080-2989-1533
- 住所:徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下日浦7-2
■ TOPIC4:高知県高知市発|ユニバーサルな姿勢で誰ひとり取り残さない!「オーテピア高知声と点字の図書館」
視覚障害や学習障害などで文字を読むのが困難な人、高齢や病気などで小さい字が読めない人、寝たきりや手指の障害のために本を持ったりページをめくったりできない人などのために、バリアフリー図書を豊富に揃えた図書館。「点字図書」はもちろん、声の本である「録音図書」や、音声を聞きながらパソコンやタブレットで画像や文字を見ることができる「マルチメディアデイジー図書」、さらに対面で図書や資料を読むサービスも。
「他に類を見ない、広いスペースと、充実した図書やサービス。まさに“誰ひとり取り残さない”というSDGsの理念を、肌で感じられる場所です」(高木先生)
1階が「声と点字の図書館」。
館内は障がいがあっても移動しやすい、バリアフリーなつくり。
- オーテピア高知声と点字の図書館
- TEL:088-823-9488
- 住所:高知県高知市追手筋2-1-1 オーテピア1F
■ TOPIC5:京都府亀岡市発|全国に先駆けて、レジ袋を全面禁止!アートの力で市民の意識を変え豊かな自然を守り抜く
亀岡市と嵐山を結ぶ保津川は、景色が美しく川下りが有名。ところが近年、プラスチックゴミの漂着が問題に。船頭を中心に清掃が始まり、2007年にはNPOが発足、2018年に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発表。さらに“アートの街”という特性を生かして、行政と芸術家が手を取り、廃棄予定のパラグライダーをエコバッグに生まれ変わらせる「KAMEOKA FLY BAG Project」などユニークな試みも。
「2021年1月には、有償無償を問わずプラスチック製レジ袋の提供を禁止する『レジ袋禁止条例』を全国で初めて施行。アートの力を借りて人々の環境意識を変えながら、どこよりも早く一歩を踏み出した自治体です」(高木先生)
「かめおか霧の芸術祭」の一環として「KAMEOKA FLY BAG Project」を開始。
問題となっていた、保津川のプラスチックごみ。
- EDIT&WRITING :
- 今村紗代子、池永裕子(Precious)