知花くららさん×「さとゆめ」嶋田俊平さん|「サステナブルな暮らし」についてリモート対談
残し、伝えるために、変えていく。地方活性化の新しいかたちについて考える
伴走型の地方創生プロジェクトが話題の「さとゆめ」嶋田さんと、知花くららさんがリモートで対談。地域の人と協力し合いながら、その土地のよさを広め、新しい未来をつくる方法を考えます。
お話をうかがったのは、この方…
“衣・食・住”すべてがあるからこそ、その土地の暮らしぶりを提案できる。だから、ホテルはおもしろいんです——嶋田俊平さん
知花くららさん(以下、知花)嶋田さんはいろいろな地域で、興味深いプロジェクトを手掛けていらっしゃいますよね。
嶋田俊平さん(以下、嶋田)ありがとうございます。戦略や計画を立てるところから、実行に移して運営を続けていくというところまで“地域に伴走する”コンサルティングを実践しています。
知花 特に、山梨県小菅村の取り組みが気になっていました。私は、沖縄の慶留間島(げるまじま)という離島にある祖父の生家を受け継いだのですが、まずはそこに民芸ギャラリーをつくりたいと思っているんです。少しでも多くの人に島の魅力を伝えたくて。
嶋田 小菅村では「NIPPONIA 小菅」という古民家ホテルを運営しているのですが、最初は「700人の人口をなんとか維持してほしい」という依頼だったんです。かつて2200人ほどあった人口が、3分の1程に減ってしまっていて。それで道の駅をプロデュースしたり、イベントを企画したりして観光客は2倍に増えたのですが、ほとんどが日帰り。それだとなかなか村の経済が潤わないので、新しい宿泊施設をつくろうということになりました。
知花 そうなのですね。ですが、新たな宿泊施設となると、村の方々からの反対はなかったんですか?
嶋田 そうですね。急に「宿をつくります」と言っても受け入れてもらえないので、段階を追って理解者を増やしていきました。最初は地域のリーダー格の方に説明して、そこで信頼を得られると「あの人が手伝っているんだったら協力してみよう」という人が出てくる。だんだんその輪が広がって、最初は3人だった理解者が、30人、300人とじわじわ増えていくという感じ。最初の3人をどうやって口説くか、というのに最も力を入れているかもしれません。
知花 慶留間島の人口は60人ぐらい (笑)。以前「げるまキャンプ」というチャリティプロジェクトを立ち上げたのですが、小さなコミュニティで新しいものをつくるときは、地元の人をどれだけ大事にして動けるかがすごく重要なんだなと。
嶋田 そうですね。「NIPPONIA 小菅」は、空き家だった古民家を客室にするだけではなくて、村の道路はホテルの廊下、村人はコンシェルジュ、道の駅はロビーといったように「700人の村がひとつのホテルに。」をコンセプトとしています。これは村の方たちの協力なくしては成り立たない。だから、数えきれないほど説明会を行いましたね。
祖父から受け継いだ築100年超の家。明日に残すために何を変えていくべきか、考えています——知花くららさん
知花 やっぱりひとつひとつ、丁寧に進めていらっしゃるのですね。先ほどお話しした祖父の生家ですが、民芸ギャラリーを足掛かりに、いずれは宿泊施設にできたらいいなと考えているんです。それもあって、建築の勉強をしまして。
嶋田 すごいですね! これまで、さまざまな地方創生プロジェクトを手掛けてきたのですが、ホテルって話題になりやすいし、断トツで注目度が高いんです。それはなぜだろうとホテル業界の友人と話していたら「ホテルには衣食住がすべて入っているからじゃないですか」と。
知花 なるほど。
嶋田 美味しい料理を食べられるとか、スタイリッシュであるとか、ホテルを通じてその土地のイメージをつくっていけるんですよね。そしてその先には、関係人口や移住者が増える可能性もある。単にお金を落としてもらうだけじゃなくて、暮らしぶりを提案できるというのがおもしろいんです。だから、知花さんもぜひやってください(笑)。
知花 (笑)。ただの宿泊施設じゃなくて、プロジェクトとして育てていくことにとても興味があります。祖父の家は築100年以上経っていて、なんだか“受け継いだ感”がすごくあるんです。なので私も、次に手渡さなきゃって思っていて。未来に残していくために何を変えていくのか。それは建築的にも必要な目線で、島の景色にヒンがあるような気がしているのですが…。これからも、島の人と話し合いながら丁寧に考えていきたいです。
「さとゆめ」がプロデュースした「NIPPONIA 小菅 源流の村」
問い合わせ
- NIPPONIA 小菅 源流の村
- TEL:0428-87-9210
- 住所:山梨県北都留郡小菅村大久保3155-1(大家)
- PHOTO :
- 水田 学(NOSTY/知花さん分)
- STYLIST :
- 望月律子(KIND/知花さん分)
- HAIR MAKE :
- 重見幸江(gem/知花さん分)
- EDIT&WRITING :
- 今村紗代子、池永裕子(Precious)