知花くららさん×「さとゆめ」嶋田俊平さん|「サステナブルな暮らし」についてリモート対談

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残し、伝えるために、変えていく。地方活性化の新しいかたちについて考える

伴走型の地方創生プロジェクトが話題の「さとゆめ」嶋田さんと、知花くららさんがリモートで対談。地域の人と協力し合いながら、その土地のよさを広め、新しい未来をつくる方法を考えます。

知花くららさん
女優
(ちばな・くらら)1982年沖縄県那覇市出身。上智大学文学部教育学科卒業。2006年ミス・ユニバース世界大会で2位受賞後、モデルや女優、リポーター、執筆業など幅広く活躍。2007年WFP(国際連合世界食糧計画)オフィシャルサポーターに就任しアフリカやアジア各地を訪問。2013年国連WFP日本親善大使に就任。2019年長女を妊娠中、京都芸術大学建築科(社会人課程)に入学し最短の2年で卒業。2021年に次女を出産。最新情報は公式インスタグラム(@chibanakurara.official)を。

お話をうかがったのは、この方…

「さとゆめ」代表取締役社長嶋田俊平さん
嶋田俊平さん
「さとゆめ」代表取締役社長
(しまだ・しゅんぺい) 京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修了。環境系シンクタンク(株)プレック研究所に9年間勤務し、2013年(株)さとゆめを設立。2018年ホテル開発・運営会社(株) EDGEを設立して代表取締役に就任。2019年「NIPPONIA 小菅 源流の村」を開業。JR東日本との共同出資会社・沿線まるごと(株)の代表取締役も兼務。

“衣・食・住”すべてがあるからこそ、その土地の暮らしぶりを提案できる。だから、ホテルはおもしろいんです——嶋田俊平さん

知花くららさん(以下、知花)嶋田さんはいろいろな地域で、興味深いプロジェクトを手掛けていらっしゃいますよね。

嶋田俊平さん(以下、嶋田)ありがとうございます。戦略や計画を立てるところから、実行に移して運営を続けていくというところまで“地域に伴走する”コンサルティングを実践しています。

知花 特に、山梨県小菅村の取り組みが気になっていました。私は、沖縄の慶留間島(げるまじま)という離島にある祖父の生家を受け継いだのですが、まずはそこに民芸ギャラリーをつくりたいと思っているんです。少しでも多くの人に島の魅力を伝えたくて。

嶋田 小菅村では「NIPPONIA 小菅」という古民家ホテルを運営しているのですが、最初は「700人の人口をなんとか維持してほしい」という依頼だったんです。かつて2200人ほどあった人口が、3分の1程に減ってしまっていて。それで道の駅をプロデュースしたり、イベントを企画したりして観光客は2倍に増えたのですが、ほとんどが日帰り。それだとなかなか村の経済が潤わないので、新しい宿泊施設をつくろうということになりました。

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「NIPPONIA 小菅 源流の村」築150年を誇る邸宅(大家)には4タイプの客室が。

知花 そうなのですね。ですが、新たな宿泊施設となると、村の方々からの反対はなかったんですか?  

嶋田 そうですね。急に「宿をつくります」と言っても受け入れてもらえないので、段階を追って理解者を増やしていきました。最初は地域のリーダー格の方に説明して、そこで信頼を得られると「あの人が手伝っているんだったら協力してみよう」という人が出てくる。だんだんその輪が広がって、最初は3人だった理解者が、30人、300人とじわじわ増えていくという感じ。最初の3人をどうやって口説くか、というのに最も力を入れているかもしれません。

知花 慶留間島の人口は60人ぐらい (笑)。以前「げるまキャンプ」というチャリティプロジェクトを立ち上げたのですが、小さなコミュニティで新しいものをつくるときは、地元の人をどれだけ大事にして動けるかがすごく重要なんだなと。

嶋田 そうですね。「NIPPONIA 小菅」は、空き家だった古民家を客室にするだけではなくて、村の道路はホテルの廊下、村人はコンシェルジュ、道の駅はロビーといったように「700人の村がひとつのホテルに。」をコンセプトとしています。これは村の方たちの協力なくしては成り立たない。だから、数えきれないほど説明会を行いましたね。

祖父から受け継いだ築100年超の家。明日に残すために何を変えていくべきか、考えています——知花くららさん

知花 やっぱりひとつひとつ、丁寧に進めていらっしゃるのですね。先ほどお話しした祖父の生家ですが、民芸ギャラリーを足掛かりに、いずれは宿泊施設にできたらいいなと考えているんです。それもあって、建築の勉強をしまして。

嶋田 すごいですね!  これまで、さまざまな地方創生プロジェクトを手掛けてきたのですが、ホテルって話題になりやすいし、断トツで注目度が高いんです。それはなぜだろうとホテル業界の友人と話していたら「ホテルには衣食住がすべて入っているからじゃないですか」と。

知花 なるほど。

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「NIPPONIA 小菅 源流の村」大家の一室。歴史ある建築にモダンなインテリアが映える。
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「NIPPONIA 小菅 源流の村」地元の小さな生産者の食材を使った料理も人気。

嶋田 美味しい料理を食べられるとか、スタイリッシュであるとか、ホテルを通じてその土地のイメージをつくっていけるんですよね。そしてその先には、関係人口や移住者が増える可能性もある。単にお金を落としてもらうだけじゃなくて、暮らしぶりを提案できるというのがおもしろいんです。だから、知花さんもぜひやってください(笑)。

知花 (笑)。ただの宿泊施設じゃなくて、プロジェクトとして育てていくことにとても興味があります。祖父の家は築100年以上経っていて、なんだか“受け継いだ感”がすごくあるんです。なので私も、次に手渡さなきゃって思っていて。未来に残していくために何を変えていくのか。それは建築的にも必要な目線で、島の景色にヒンがあるような気がしているのですが…。これからも、島の人と話し合いながら丁寧に考えていきたいです。


「さとゆめ」がプロデュースした「NIPPONIA 小菅 源流の村」

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ホテルの立ち上げから関わってきた、マネージャーの谷口夫妻。都内から移住してきた。

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PHOTO :
水田 学(NOSTY/知花さん分)
STYLIST :
望月律子(KIND/知花さん分)
HAIR MAKE :
重見幸江(gem/知花さん分)
EDIT&WRITING :
今村紗代子、池永裕子(Precious)