メイドインジャパンの高級腕時計のなかで、揺るぎない地位を築く「グランドセイコー」。2020年7月には、岩手県の雫石(しずくいし)町にある生産拠点に、機械式腕時計を製造する新施設もオープンしました。世界中から羨望を集めるブランドの聖地で、卓越したものづくりの真価に迫ります。

日本の美意識の結晶がここに――「グランドセイコー」静かなるラグジュアリー

世界に誇る名工たちによって受け継がれる、ものづくりの心と技

グランドセイコーの『STGK004』
『STGK004』¥3,300,000 ●ケース:YG×ダイヤモンド●ケースサイズ:28.7mm径●ストラップ:クロコダイル●自動巻き(セイコーウオッチお客様相談室〈グランドセイコー〉)

レディス専用の機械式ムーブメント『9S27』を搭載した、『エレガンスコレクション』の逸品。ダイヤモンドのインデックスが目を引く白蝶貝のダイヤルには、最新鋭の機械を用いてダイヤモンドを俯瞰(ふかん)でとらえたときの煌めきをモチーフに、ブリリアントパターンを彫刻。ベゼルを飾るダイヤモンドのセッティングには、「彫り留め」が採用されている。


ラグジュアリーウォッチ以上の究極の付加価値を求めて…

世界最高峰の腕時計づくりを目指し、1960年に誕生した「グランドセイコー」は、ムーブメントの開発から、設計、製造、組立、出荷まで、自社で一貫して行うマニュファクチュール。その強みを生かした匠のものづくりは、1999年に誕生した独自のスプリングドライブ式ムーブメントをはじめ、クオーツ式、機械式においても、常に世界トップクラスの精度を誇ります。

グランドセイコーの工程
美しい模様にダイヤモンドが輝く白蝶貝ダイヤルを、本体にドッキングする工程。
グランドセイコー時計の組み立て工程
機械式腕時計の命ともいえる、てんぷを組み込む工程。

また、「グランドセイコー」の機械式腕時計は、「スイス・クロノメーター規格」よりも格段に厳しい、自らが設けた「新グランドセイコー規格」をクリアしなければ、その名を冠することができないというのですから、驚きです。 

グランドセイコーのてんぷの組み立てを待つムーブメント
てんぷの組み立てを待つ、ムーブメント。出荷前にはムーブメント単体で、17日間にわたり精度検定が行われる。

ブランドの生造拠点は、国内に2か所。機械式は岩手県の雫石町に、クオーツ式、スプリングドライブ式は、長野県の塩尻市に置かれています。今回私たちは、高級機械式腕時計がつくられる雫石町へ。伝統工芸を今に受け継ぐものづくりの町にある工場では600人以上が働き、その9割が地元出身者。ここでは技術者に、3段階のマイスター制度が設けられています。

グランドセイコーの時計の組み立て工程
顕微鏡を使用して、ひげぜんまいを調整。

マイスターには本人の経験や技能の高さに加え、後進を育て、技術を未来につなぐ重要なミッションも。世界クラスの技能保有者と認められた最高位のゴールドマイスターは、現在6名。腕時計づくりは彼らを筆頭に、工程ごとにチームで行われます。

グランドセイコーの時計の組み立て工程
現代の名工(ゴールドマイスター)、伊藤勉氏がムーブメントを組み上げている様子。

1/100mm単位の世界を巧みに操る緻密な手仕事と最新技術をもって完成する機械式腕時計。そのものづくりの奥深さ、飽くなき探究心に触れるほど、ますます「グランドセイコー」の虜に!

時の本質と美意識に迫る尊いものづくり

創業以来、「グランドセイコー」は、正確さ、美しさ、見やすさ、そして使いやすさといった腕時計の本質を追求し、1967年に「セイコースタイル」を確立しました。ご紹介した機械式腕時計は、精度はもちろん、平面からなるケースや、視認性の高い時分針、端正なダイヤモンドセッティングに、その意図が見てとれます。

グランドセイコー時計の組み立て工程
「彫り留め」と呼ばれるセッティングで、ベゼルにダイヤモンドを配して。

そしてこの機械式腕時計づくりにおいて驚かされたのは、小型化されたレディスモデルのキャリバー『9S27』に、238にも及ぶ部品が使われていることです。しかも「がんぎ車」(写真下)と呼ばれるパーツに、桜を想起する5枚の花びら形が施されていたのには、感動!シースルーバックからも確認できない、日本の美意識と匠の粋な演出に、腕時計の役割を超えた尊いものづくりを見ることができました。

グランドセイコーの時計に用いられる「がんぎ車」と呼ばれるパーツ
「がんぎ車」と呼ばれるパーツ

「グランドセイコー」を信頼するエグゼクティブたちは、そんなすみずみに宿る真摯なものづくりに、ラグジュアリーの本質を見出しているのでしょう。

【Column│ブランドゆかりの地を訪ねて】「グランドセイコー」の世界観に浸れる新施設が、機械式腕時計の聖地に誕生!

グランドセイコースタジオ 雫石
「グランドセイコースタジオ 雫石」

雫石町の美しい自然に囲まれた「グランドセイコースタジオ 雫石」は、JR盛岡駅から車で約25分の立地に。世界的にも稀な木造建築による腕時計の組立施設は、外装に杉、内装には赤松や唐松を使用。周囲の景観に調和させた建築デザインも、見どころ。見学は完全予約制のため、公式サイトをチェック! 
https://gs-studio-shizukuishi.resv.jp


恵まれた自然環境が生み出すスタジオに流れる穏やかな時間…

「セイコー」の腕時計製造を支える「盛岡セイコー工業」が、岩手県の雫石町に設立されたのは、1970年。そして昨年の7月、「グランドセイコー」の匠の技やものづくりの精神を世界に発信する場として、「グランドセイコースタジオ 雫石」はオープンしました。

ブランド哲学の「THE NATURE OF TIME」(時の本質と自然)が体現できるスタジオを手掛けたのは、世界的な建築家、隈研吾氏です。今年1月から一般の人も見学できるようになったスタジオでは、木の温もりに包まれた開放的なショールームで、まずはブランドの歴史や機械式腕時計の仕組みを学びます。

グランドセイコースタジオ 雫石の工房内
組立師は専用の防ぼう塵じん着ぎと帽子を着用し、エアーシャワーを浴びてからクリーンルームに入室。作業台は、岩手の伝統工芸「岩谷堂箪笥」の特注品。椅子は、緻密な作業に適した「ハーマンミラー」の『セイルチェア』。

次に組立師たちが実際に工房で作業する様子を、長い廊下に沿ってガラス越しに見学。組立師は工程ごとにチームが組まれており、私たちは手前の作業台に座る、リーダーの匠の技を近くで見ることができます。その先には、クリーンルーム内が見渡せる撮影スポットも!

グランドセイコースタジオ 雫石の屋内廊下
屋外とクリーンルームの間を通る、開放的な廊下。工房からも、雄大な景色が眺められる。

2階では、ここでしか手に入らない限定モデルを販売。名峰、岩手山を望むラウンジで寛ぎながら、究極の1本を吟味したい。

地域環境との共生を図る、コミュニケーションの場に!

盛岡セイコー工業にある小さな虫などが住めるように、子どもたちと枯れ葉や木枝などを詰めて製作したインセクト(=虫)ホテル
小さな虫などが住めるように、子どもたちと枯れ葉や木枝などを詰めて製作したインセクト(=虫)ホテル。こちらの土台も、なんと隈研吾氏が手掛けている。

「盛岡セイコー工業」の敷地は広大。その約3割が緑地のため、自然林の維持や、生物多様性の保全の取り組みにも積極的。定期的に自然と触れ合うイベントも開催している。


※文中の表記は、YG=イエローゴールドを表します。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

セイコーウオッチお客様相談室

TEL:0120-061-012

PHOTO :
戸田嘉昭(パイルドライバー/静物)
EDIT&WRITING :
兼信実加子、佐藤友貴絵(Precious)