この季節になると、テレビでも1年の総括や新春の音楽番組を目にする機会も増えてくるのではないでしょうか。最近では、音楽を聴くことが特別なことではなく、Apple Musicのような定額制サービスや、プレーヤー代わりにスマートフォンで聴くような、日常的に音楽に触れる機会が多くなってきます。
しかし、本当の意味での音楽体験と言えるのは、なんといっても「ハイエンドオーディオ」と呼ばれる、高級オーディオ機器の世界ではないでしょうか。有名人や、音楽家の間にオーディオマニアと呼ばれる高級オーディオを愛用する人が多いのは、仕事柄、本物に触れる機会が多いからと言えます。
今回はオーディオの入門機器として最適なヘッドフォン・イヤフォンについて、10万円以上する高価格なのに売れている、人気商品を生み出したメーカー各社の担当者に、その魅力について教えていただきました。
「ヘッドフォン」と「イヤフォン」の違い
まず初めに、ヘッドフォンとイヤフォンの違いを簡単にご説明すると、ヘッドフォンは、オーバーヘッドと呼ばれる頭の上に乗せて装着するタイプ。イヤフォンは、耳穴に直接差し込んで聴く「カナル型イヤフォン」と、耳の穴に引っ掛けるような「インナーイヤー型」、外耳の上にフックをひっかける「耳掛け式」の3種類があります。
ヘッドフォンは、イヤフォンと比べると大きめなので、自宅利用が向いていると言えます。ヘッドフォンのほうが、長時間聞いていても疲れにくく、音漏れが少ないと言われています。ヘッドフォンとイヤフォンのどちらがよいかは、用途や好みによって変わってきそうです。
■1:オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」
プロの愛用者も多いことで知られる、オーディオテクニカのヘッドフォン。国内最大級の、オーディオ機器の総合アワードである「VGP2018」で、「開放型オーバーヘッド型ヘッドフォン(20万円以上30万円未満)」部門で、見事大賞を受賞したのが、このAUDIO-TECHNICAの「ATH-ADX5000」です。
イヤパッドやヘッドバンドには、イタリア製アルカンターラ(スエード調の人造皮革)が使われ、耳を包み込むような、やわらかなフィット感を味わえます。コアマウントテクノロジーと呼ばれる独自開発された技術により、自然でクリアの音を再現できます。
そこで、オーディオテクニカ・マーケティング本部 広報宣伝課の黒沢さんに商品の魅力についてお聞きしました。
―ATH-ADX5000は、開放型ヘッドフォンのなかでもトップエンドモデルとなる商品ですよね。具体的には、どのような仕様となっているのでしょうか?
「まず、音質の要となるドライバー部分に、弊社のヘッドフォンの中でも最大口径の新開発バッフル一体型φ58mmドライバーを採用しており、不要な音の歪みを極限まで抑え、音源に近い理想の音を再生します。さらに、ハウジング部分には日本製の特殊ハニカムパンチングハウジングを採用。日本の職人の手による匠のプレス技術によりつくられているため、音質面はもちろんですが、見た目にも美しいハウジングとなっております」
―ヘッドフォンを敬遠する人の中には、「圧迫感が苦手」という方もいそうです。
「ATH-ADX5000は、音づくりだけでなく、つけ心地にもこだわりました。イヤパッド&ヘッドバンドに使われているイタリア製アルカンターラは、肌触りがよいだけでなく、耐久性と通気性に優れています。さらに、耳を優しく包み込むフィット感と、剛性の高いマグネシウム成型フレーム&アームを採用することで、ヘッドフォンの重量を軽くしました。長時間つけていても、快適にリスニングをお楽しみいただけるモデルです」(黒沢さん)
軽量で長時間使用にも最適な「ATH-ADX5000」は、自宅で優雅な時間を過ごしてみたいというニーズを満たしてくれそうです。
■2:final「D8000」
2017年11月に発売されたばかりの「D8000」。取り扱い店舗によっては、品切れのため入荷待ちのところもあるくらい売れ筋商品となっています。「AFDS(エアフィルムダンピ ングシステム)」と呼ばれる新開発技術が搭載されているD8000は、高域と低域のクリアな再現にすぐれています。今回はfinalシリーズの製造元であるS’NEXT株式会社の、山本さんにお話を聞きしました。
―38万8000円という高額ながらも、売れ続けているのはどういった点が支持されているのでしょうか?
「ユーザー様からは『音がヘッドフォンから鳴っているのではなく、本当にそこで鳴っているかのような自然なサウンドで、ずっと聴いていられる』『曲の中に自然に入り込んだかのように音が聴こえてきて心地よい』など、高く評価いただいています」
―実際に使ってみると、音質の違いが、明らかにわかるのですね!
「弊社では、さまざまな物理解析を重ね、AFDS:エアフィルムダンピングシステム(以下AFDS)を開発致しました。AFDSは音の要となる振動板を、周りの薄い空気の層(エアフィルム)により制動する仕組みです。これにより、従来の平面磁界型が抱えていた問題を解消し、平面磁界型の繊細な高域と、ダイナミック型の量感と開放感のある低域を併せ持ったサウンドクオリティを実現しました」
―具体的には、どのような状態なのでしょうか?
「一音一音の再現性が非常に高く、これまでのイヤフォンやヘッドフォンでは体感したことのない、圧倒的な音のリアリティをお楽しみいただけます。特に生々しさが感じられるクラシックやジャズのライブ音源や、男性・女性ボーカル曲などにオススメです。ぜひ一度聴いてみていただきたいです」(山本さん)
臨場感あふれるジャズの演奏やクラシック音楽を、音源の再現性の高いハイエンドヘッドフォンで聴くのも、最高の贅沢と言えます。
■3:AKG(アーカーゲー)「K872」
みなさんはハーマンインターナショナルという会社名を聞いたことがあるでしょうか?
ハーマンインターナショナルは、JBLやAKGといった、オーディオメーカーのブランドを取り扱っている世界最大級のオーディオメーカー。ファッションブランドのCOACHとコラボし、「SOHO WIRELESS COACH LIMITED EDITION」というワイヤレスヘッドフォンを販売したこともあるのです。
AKG製品の「K872」は、AKGブランドの中で最上位モデル。耳の周囲に接する面の形状を保持できる3Dスローリテンション技術を採用し、長時間の利用でも疲れにくい仕様となっています。また、ヘッドフォン本体の再生帯域も5Hz~54kHzと広く、音源の再現性が高いと言えます。今回は、ハーマンインターナショナルの石川さんに、商品の魅力についてお聞きいたしました。
―「K872」は、プロの方も使用されているモデルだそうですね。
「『K872』は、スタジオなどでエンジニアの方が使用されるのはもちろん、ご自宅でゆっくりといい音で音楽を聞きたい方にも高い評価を得ています。密閉型でありながら、『聞き疲れのしない』づくりにより、時間を忘れてゆったりと音楽を楽しんでいただけます」
―こちらは、高級ヘッドフォンのなかでも人気の高かった「K812」(2014年発売)の、後継モデルとなるのでしょうか。
「『K872』は、『K812』を踏襲し、密閉型ハウジングに合わせてサウンドチューニングした最新モデルです。AKG製品最大口径の53mmダイナミックドライバーを採用し、広大なダイナミックレンジを得られます。すでに評価をいただいているオープンエアーのフラッグシップモデル『K812』を密閉型にすることにより、より音のディティールを正確に伝える音づくりを実現。まさにスタジオサウンドクオリティと言える音質です」(石川さん)
オーディオ好きの間でも安定した人気を誇る「K812」から、さらに性能がアップした「K872」。ステージとの距離が近いようなクリアなサウンドを体験できそうです。
■4:beyerdynamic「XELENTO REMOTE」
「beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)」聞きなれないブランド名ですが、90年以上の歴史を持つドイツのれっきとしたオーディオブランド。その「beyerdynamic」が独自開発した「テスラテクノロジー」と呼ばれる技術は、音源を高音質で再生することができます。
この「XELENTO REMOTE」は、「テスラテクノロジー」を初搭載したイヤフォン。オーディオ機器の総合アワード「VGP2018」で、「インナーイヤー型ヘッドフォン(8万以上15万未満)」部門で、金賞も受賞しています。今回は、ティアック株式会社・マーケティング本部の寺井様にお話をお聞きしました。
―シルバーを基調としたスタイリッシュなデザインは、まさにドイツ製といった雰囲気ですね。
「2017年3月に販売を開始以来、今までbeyerdynamicのヘッドフォンを使っていたファンの方がイヤフォンのXELENTO REMOTEに切り替えたり、いい音をかっこよくて美しいデザインのイヤフォンで聞きたいなど、さまざまなお客様にご好評をいただいております」
―元々はヘッドフォンユーザーだった方から、支持を得ているのですね。
「そうなんです。beyerdynamic社で初めてイヤフォンに採用されたテスラテクノロジーは、電気信号だけでは表現できなかった音楽の高い解像度、広いダイナミックレンジ等を、1テスラ(1万ガウス)を超える強力な磁力によって実現する、beyerdynamic独自のドライバーテクノロジーです。この技術を搭載するために、本来のドライバーの大きさを1/16サイズまで小型化に成功し、これにより、いままではヘッドフォンでしか実現できなかった音楽のもつ音場感を、イヤフォンでも実現できるようになりました」
―イヤフォンなら、タウンユースもできるので、日常使いにも向いていますね。
「ハイレゾに対応していますので、低音から高音まで豊かな音楽再生が可能となり、今まで体験したことのない音楽の魅力を味わうことができます。魅力を最大限に発揮できるのは、自宅など静かな場所ですが、優れた遮音性、高品質なサウンドを実現するため、人間工学に基づいてつくられたシリコン製とポリウレタンフォームイヤーピースをサイズ別に選べるようになっていますので、外出時でもその魅力を失いません」(寺井さん)
■5:ゼンハイザー「IE 800 S」
2017年11月に発売されたゼンハイザーの「IE800S」は、遮音性や装着感に定評のあるCOMPLYのイヤーチップが同梱されています。先行モデルの「IE800」をベースに、音響強化や、デザイン面でのブラッシュアップされた製品がこの「IE 800 S」です。今回は、ゼンハイザージャパン株式会社の大沢さんにお話をお聞きしました。
―小型にも関わらず、ダイナミックな音域が楽しめる商品とお聞きしています。
「IE 800 S は2013年に発売になったゼンハイザーのイヤフォン最上位機種 IE 800の後継機種になります。小型ですがゼンハイザーの考える最高クラスのオーディオ体験をお楽しみいただけます」
―携帯性に優れた商品ですが、どういった音楽を聴くのに向いていますか?
「どんな音楽の再生にも向いておりますが、音場の幅が広いため、たくさんの楽器で演奏されるクラシック音楽でより楽しんでいただけると思います。もちろんハイレゾ音源にも対応しており、細かい音まで忠実に再現します。ぜひ一度、店頭などで試聴してみてください」(大沢さん)
以上、ハイエンドなイヤフォン・ヘッドフォンを5つ、ご紹介しました。実際に商品を手にして、視聴をしてみると、ハイエンドオーディオの音源の再現力の高さに驚くことでしょう。
また最後に、オーディオ分野の専門媒体である「AV Watch」の臼田編集長からアドバイスを伺いました。
―スマホの普及により、外出先などでも音楽を楽しむ人が増えてきていますが、ヘッドフォンやイヤフォンを選ぶときのポイントを教えてください。
「スマホの付属イヤフォンでも音楽は聴けますが、本格的に音楽を楽しむのであれば、専用のイヤフォンやヘッドフォンを使いたいですね。1~2万円の程度の製品でもかなりよい製品が増えていますし、普段聞きなれた曲に“こんな音が入っていたのか”と驚かされることもあるかもしれません」
―なるほど。確かに製品にバンドルされているイヤフォンをそのまま使っている人も、多いかもしれません。
「音のよさも重要ですが、紹介のような高級製品は、素材やデザインも独特の高級感があるので、デザインで選ぶのもいいでしょう。ただし、身につけて使う商品ですので”装着感”は重要。最近はヘッドフォンの品ぞろえが充実し、試聴できるお店も増えていますので、ぜひ店頭などで自分に合う製品を見つけてください」(臼田さん)
実際に手に取って、体験してみることがヘッドフォン・イヤフォン選びにとっていちばん重要なのかもしれません。意外と奥が深いヘッドフォン・イヤフォンの世界。まずはお気に入りの一品を手に入れてみませんか? 自宅での音楽鑑賞が趣味という女性は自分のために、大切なパートナーやお子さんが無類の音楽好きという女性は贈り物として選ぶと、喜ばれること間違いありません。
この記事の執筆者
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