「真摯(しんし)に受け止める」というフレーズ、テレビでもよく耳にしますよね。「みなさまからのお声を真摯に受け止め…」は所信表明演説の常套句、「真摯に受け止め、改善に努めてまいります」は謝罪の定型文です。でも、「真摯に受け止める」とは、具体的にどういうこと? ビジネスシーンでよく使われる例文や、類似語を見ながら、その仕組みを探っていきましょう。

【目次】

「真摯に受け止める」の「真摯」を言い換えると?
「真摯に受け止める」の「真摯」を言い換えると?

まずは、「真摯」の「意味」をしっかり理解しましょう

■「真摯」を分解すると意味が明確に

まずは「真摯」という漢字を調べてみましょう。「真」は、嘘や偽りでないこと、正しいこと、またそのさまを表します。「摯」にも、まじめや手厚いという意味が。同じような意味を持つふたつの漢字で構成された「真摯」は、まじめに一生懸命取り組むさまを強調した言葉なのです。

「まじめに受け止めて~します」より「真摯に受け止めて~します」のほうが、誠実さが伝わってきませんか? 

■「真摯に受け止める」は「受け止める」に深い意味があった!

「真摯」が、誠実さや熱心さを強調した言葉であることがわかりました。では「真摯に受け止める」というフレーズには、どのような意味があるのでしょうか。

ここで重要なのは「受け止める」というワードです。「留めておく」という意味の「受け止める」には、「意識の中に常に留めて怠らない」という強い決意が感じられますね。それゆえ、ビジネスシーンで「真摯に受け止める」というフレーズがよく使われるのです。

■「真摯に受け止める」は誰にでも使える?

「真摯に受け止める」のは「評価が伴う事態」や「評価そのもの」なので、相手を限定しません。「国民の声を真摯に受け止め~」のように、上も下もない相手に向かって使用することも珍しくありませんね。

例文に見る「真摯に受け止める」の正しい使い方ケーススタディ

「真摯に受け止める」は謝罪時だけでなく、大きな仕事を任された際に「期待を真摯に受け止め」などとも用いますね。シチュエーション別の例文を参考に「自分なら…」とシュミレーションして、いざというときのために備えておきましょう。

■1:「社会的な非難を受けた」場合は…

・問題を真摯に受け止め、再発防止策を講じてまいります

・この度の不祥事につきまして、会社全体で真摯に受け止めなければならないと痛感しております

■2:「業務上のミスにより先方に不利益を与えた」場合は…

・同様のミスが起こらないよう、今回のことを真摯に受け止め、社内で共有いたします

・多大なご迷惑をおかけしたことを真摯に受け止め、至急改善に努めてまいります

■3:「職務などでの目標が達成できなかった」場合は…

・ご期待に添えなかったことを真摯に受け止め、いっそう精進に励みます

・目標達成が叶わない事態を真摯に受け止め、細部の見直しを図る所存です

■4:「重要なアドバイスを受けた」場合には…

・貴重なご意見を真摯に受け止め、今後に生かしてまいりたいと存じます

・ご評価を真摯に受け止め、今後は皆様にご満足いただけるサービス提供を目指します

■5:「大役を任された」場合には…

・新規事業参加という辞令を真摯に受け止め、精一杯の尽力をお約束します

・この度の部長の決意を真摯に受け止め、ご期待に添えるよう努めてまいります

「真摯に受け止める」の言い換え表現5選

■1:「真剣に受け止める」

■2:「事態を重く受け止める」

■4:「責任を感じる」

■5:「重大なこととして認識する」

いずれも「真摯に受け止める」と同じ意味で使用できます。

■3の「自責」とは、【自分で自分の過ちをとがめること。また、自分に責任があると考えること。】(『デジタル大辞泉』より)なので、「自責の念を覚える」は「自分に責任があると承知している」ということ。「自責の念を覚え、改善に努めます」というように使います。

敬語は難しいと思いがちですが、「仕組みを理解」して「反復練習」を続ければ、正しく使えるようになるものです。

「真摯」と同じ意味で使いやすい類似語は?

■誠実 ■実直 ■熱心 ■一心 ■賢明 ■一途 ■ひたむき

「真摯」という言葉は賢く大人っぽい響きがしますが、乱用するとかえって不誠実な印象を与えてしまいます。複数使用したい場合は、似たような意味を持つ単語に置き換えてみて。下記のような類似語も、シチュエーションに合わせて使い分けましょう。

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今日は「真摯に受け止める」というフレーズを、さまざまな角度から分析しました。ビジネスシーンで正しく使える敬語美人を目指して、毎日ひとつずつマスターしていきましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語ネイティブになろう!!』(くろしお出版) :