市原平兵衞商店の「白竹のし付箸」「すす竹煎茶箸」 chopstick

「日本食は盛り付けがきれいだとは思うけれど、 何度も手でさわっているみたいで、ちょっと不潔に感じるわ」


ベルギーでの修業時代、レストランのマダムの話に少し抵抗を覚えましたが、そのときはうまく説明ができませんでした。後々、マダムが「手でさわっている」と想像しているほとんどの作業は、箸を使っていることだと気がつきましたが、箸を使いこなす私にとってそれはあたりまえのことすぎて、箸を使わない盛り付け方法が想像できませんでした。

世界の食事作法を3つに分けると、3割がカトラリー、4割が手、そして3割が箸だと聞いたことがあります。そして、箸にさまざまな種類があるのは日本だけ。材質でいえば、木や竹、塗りもの、プラスティック。種類なら、銘々箸や、菜箸、真魚箸、盛り付け箸、利休箸、祝い箸に納豆箸まで!


chopstick、お箸。上から市原平兵衞商店の「みやこばし すす竹(大)」・「みやこばし すす竹(中)」 江戸木箸 大黒屋の「五角縞黒檀(大)」・「七角鉄木(中)」 市原平兵衞商店の「京風もりつけ箸」

聞くところによると、竹箸は、となり合う竹を切り出した時点で対にし、最後の工程まで絶対にばらけないように作られるそうです。一見、まっすぐな箸も天然素材である以上、多少の歪みがあります。それをぴたりと合わせるため、最初から最後まで対にしてつくられるのだとか。夫婦箸などで箸が結婚祝いに贈られる理由が、ここにもある気がいたします。


箸だけでなく、一般家庭の食卓が、こんなにも多国籍・無国籍化しているのも日本独特のように感じます。異国の食文化を柔軟に取り入れられるのは、箸一対で、たいていのことをやってしまう器用さゆえなのでしょうか。

ちょうど11月に、レストランのマダムとムッシューが来日されることになりました。せっかくですから家にお招きして、日本の食について、よい印象をもって帰っていただきたいものです。

話せばきりがない、深い深い日本の箸の世界へようこそ。でもこちらは、ほんの前菜にすぎません。

 

【今回のアイテム】「お箸」

食物を挟んで取る棒状の二本一対の食具。東アジアを中心に箸食文化圏が広がっているが、食べる、調理するなどほとんどの所作を箸のみで行うのは和食特有。かつてはピンセット状の折箸(おりばし)で、神饌(しんせん)、料理の取り分けに使われていたとされる。飛鳥時代に小野妹子が中国から二本一対の箸を持ち帰ったとされ、鎌倉時代に塗り箸が誕生。安土桃山時代に懐石料理が始まると、杉や檜の箸が使われるように。

写真一枚目、左から

■市原平兵衞商店の「白竹のし付箸」

粘りに強い真竹の3年竹のみを、まだ青竹のうちに切って修整、油抜きなどを経て白竹にし、削ってつくられる。菜箸として、また、大皿料理の取り箸としても使いやすい。[26cm] ¥1,300(税抜)

市原平兵衞商店 TEL:075-341-3831

■市原平兵衞商店の「すす竹煎茶箸」

煎茶の茶葉を選り分ける際に使われる箸。小さな利休箸のようで、珍味のような小鉢に盛った料理の取り箸に。和菓子に添える黒文字代わりとしてもちょうどいい。[18.5cm] ¥1,200(税抜)

■江戸木箸 大黒屋の「七角利休縞黒檀(しまこくたん)」

利休箸とは、千利休が茶懐石用に考案した、両端が細く、中央が太く平らな中平両細の両口箸。その形をベースに七角に削ったもの。“ハレ”の日の箸として来客用に、また、取り箸として使っても。[25cm] ¥10,000(税抜)

江戸木箸 大黒屋 TEL:03-3611-0163

 

写真二枚目、上から

■市原平兵衞商店の「みやこばし すす竹(大)」・「みやこばし すす竹(中)」

すす竹は、建材として天井裏などに使われていた竹が150年以上の年月を囲炉裏や竈の煙で燻されたもの。箸にすると丈夫で反りにくいが、今では材料が少なく貴重なものとなりつつある。大は男性向け、中は女性向け。「みやこばし すす竹(大)」[23cm] ¥6,000・「みやこばし すす竹(中)」[22cm] ¥5,000(ともに税抜)

■江戸木箸 大黒屋の「五角縞黒檀(大)」・「七角鉄木(中)」

手の構造上、「箸は奇数角のほうが持ちやすい」と考案されたもの。やや無骨な印象の五角を男性用、やわらかな印象の七角を女性用として夫婦箸にも。材質は縞黒檀や鉄木(てつぼく)。「五角縞黒檀(大)」[24cm] ¥6,000・「七角鉄木(中)」[21.5cm] ¥5,000(いずれも税抜)

■市原平兵衞商店の「京風もりつけ箸」

かつて京都で、花板(料理長)のみに使用が許されたとされる盛り付け箸を現代でも使いやすい仕様に。取り箸や、短いものは銘々箸としても。[23cm] ¥1,200(税抜)

この記事の執筆者
1978年生まれ。デザイン事務所、スタイリストのアシスタントを経て独立。主に食まわりのスタイリングを中心に、雑誌や書籍で活動。2008年から1年間、ベルギー・アントワープのレストランで、食ともてなしを学ぶ。将来の夢は、おばあさんになったら、小さな食堂のマダムをやること。 好きなもの:食べること、つくること、旅行、器、古いもの、食に関する学術書、職人
クレジット :
撮影/濱松朋子 スタイリング・料理・文/城 素穂
TAGS: