今回の取り上げる言葉は「ご用命」。この言葉から、何となく「営業」や「商取引」を連想した方は多いのでは?  ビジネスの世界では広く用いられていますが、今回はその意味と使い方について、正しい知識を学びましょう。

【目次】

「ご用命」とはどんな時に使う?
「ご用命」とはどんな時に使う?

「ご用命」の正しい使い方を知っていますか?

■「ご用命」の「読み方」とその意味は?

「ご用命」は「ごようめい」と読みます。

「用命」とは、「用事を言いつけること」、また、「商品などを注文すること」を意味します。「ご用命」はこの「用命」に丁寧さや尊敬の意を表す美化語の「ご」を付けた言葉です。
相手のことやものへの敬意を表した言葉ですから、自分はあくまで受け身の立場。先方から用事を言いつけられたり、商品などの注文を受けた際、受動的な表現として使用します。
また、部下や同僚など、同じ地位や立場の人には使用しません。ましてや、家族や友達に対して使ったら、嫌味か冗談のようになってしまいますよね?

どんな相手に、どんなシーンで使う?「例文」から理解しよう!

「受け身の立場で使う」とは、実際にどんな表現なのでしょうか。適切なシーンを想定しながら、例文を見てみましょう。

■1:「ご要望がございましたら、なんなりとご用命ください」

■2:「ご用命いただきました見積書を送付させていただきます」

■3:「ご用命いただき、まことにありがとうございました」

■4:「どのようなご用命でも承ります」

■5:「ぜひともご用命くださいますようお願いいたします」

■6:「ご用命をお待ちしております」

百貨店など、接客の現場では、「買う」という言葉の尊敬語として「お求めになる」という表現が使われています。これは、お金を直接イメージさせる「買う」という言葉を避けるためなのだとか。同様に、「注文」も商売っ気を感じさせる表現のため、「ご用命」という言葉で品よく表現されているのですね。

一般的なビジネスの場面でも、新しい商品の注文を取引先から取りたいときなど、「ぜひ、注文してください」と伝えるより、「ぜひともご用命ください」と表現した方が適切でしょう。少しオブラートにくるんだ表現で品よく伝わるうえに、相手への敬意も伝えられるのです。

「ご用命」と近い意味をもつ「類似表現」5選とその使い方

「ご用命」は丁寧な印象を与える便利な言葉ですが、シーンによっては、少し堅苦しい表現に感じられることもあります。「ご用命」の代わりに使える類語と、それぞれの使い方も覚えておきましょう。

■1:「この度は、ご注文をありがとうございました」

■2:「何かご要望がございましたら、お申しつけください」

■3:「○○さまがご所望と伺っております」

■4:「○○をご利用と伺っております」

■5:「ご依頼申し上げてもよろしいでしょうか」

「ご用命」との違いは、上にあげた言葉は、「ご注文させていただいています」のように、自分の動作に対しても使えること。ただし、「ご注文」や「ご利用」は、少々カジュアルなニュアンスが含まれています。また、「ご所望」は、目的が明らかなときに使われます。相手から具体的な依頼があった際に使用しましょう。

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今回は「ご用命」について学びました。ビジネスの場では、自分の意志をオブラートに包みつつ、しかも誤解なく伝えることが大切。とりわけ「お金」に関わる表現は、やんわり品よく、を心掛けたいものですね。

この記事の執筆者
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