雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は食品ロス問題ジャーナリスト 井出留美さんの活動をご紹介します。

井出 留美さん
食品ロス問題ジャーナリスト
(いで るみ)青年海外協力隊を経て食品メーカーの広報室長を務める。3.11の食料支援で廃棄状況に憤りを覚え、「office3.11」を設立。独立後日本初のフードバンクの広報も務める。著書多数。Yahoo!ニュース個人オーサーとしても活躍。

企業や消費者、そして若い世代へあらゆる角度から食品ロス問題を伝える

食品ロスは今やどの国や企業、自治体にとっても深刻な問題だ。この問題に取り組む食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さん。全国から講演依頼が殺到する彼女の活動が、ある女性議員の目に留まり、これをきっかけに法律案「食品ロス削減推進法」(※)に携わる。

「まさか自分が専門にしている分野の法律に関われるとは思いませんでした。反対ゼロで可決されたときは本当にうれしかったです。法律施行でよくなった面もありますが、現在、日本の法律にはペナルティもメリットもありません。海外では廃棄に罰金があったり、廃棄を減らせば課税が下がるなどの制度があり、それぞれ効果を上げています。その点は見直してもいいのではと思います」

井出さんは’19年から毎年インターン生と手分けしてコンビニやスーパー、百貨店を巡り「恵方巻」の売れ残りを調査している。’19年の法律施行以降、順調に減っていた売れ残りは今年再び増え、総額10億円超の廃棄に。その記事は節分の日のツイッターでトレンドに「井出留美」と上がるほど多くの人に読まれ拡散された。

「これは金額だけの問題ではありません。人の労力、電気などのエネルギー、そして動物や魚、卵の命も犠牲になり捨てられているのです。リサイクルもリユースも大事ですが、なによりも大切なことは適量を生産し食べきって廃棄を減らす『リデュース』です」

それでは経済が縮むと反発の声もあるが、廃棄を減らし利益を上げた例もあると啓発を続ける井出さん。最近はティーン向けの執筆にも注力している。

「本は、次世代への遺書のようなもの。未来を担う彼らに、私の意思を託したいと思っています」

【SDGsの現場から】

●全国にいるインターン生とオンライン会議

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インターン生たちは恵方巻の調査にも参加。時間をズラして何度も訪れ、納品状況までも分析してくれたのだとか。

●高校生からの熱意溢れる依頼で実現した講演!

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千葉私立渋谷教育学園幕張高校の生徒が教頭先生を説得し、井出さんに生徒への講義をオファー。

※食品ロス削減推進法とは食品廃棄を減らすため、国や地方公共団体等の責務や消費者の責任も示した新しい法律。反対ゼロで可決され、'19年10月施行された。

PHOTO :
望月みちか
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材・文 :
大庭典子