人生100年時代に突入した現在、いつまでも元気に若々しく過ごしたい。男性にとって男性ホルモンは、アンチエイジングに重要なホルモンである。前回『精力低下だけではない!男が気にする「男性ホルモン」の減少は、肌トラブルに直結する無視できない関係だった』に続き、今回も男性ホルモンがメンズ美容に与える影響と、不足させないための日常生活の対策についてお伝えしたい。

血管の老化は見た目も老化させる

テストステロンが低下すると自律神経が乱れ、交感神経による血管の収縮が起きやすくなる。もともとテストステロンには血管保護作用があるため、加齢やストレスにより分泌が減ると血管の硬化が進み、さらには血管障害性の死亡(脳梗塞や心筋梗塞など)が増えるとの報告もある。

血液が栄養をいちばん最後に届ける組織である肌や髪は、血管の硬化により供給量が低下すると老化が顕著に現れるので要注意だ。

男性ホルモンの低下はメタボリックシンドロームの原因になりうる

男性ホルモンの低下は、美容だけでなくメタボリックシンドロームの原因にもなる可能性が

テストステロンの低下がメタボリックシンドロームにつながる場合もある。日本の男性の場合、ウエスト周囲径が85cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断される。その予防として運動や食事が大事なのだが、テストステロンが低下すると運動する意欲すら沸いてこなくなる。

また、テストステロンは食事から得たエネルギーを筋肉に替える働きがあるのだが、低下すると筋肉ではなく、脂肪に変換されてしまう。筋肉が減れば代謝が下がり、痩せにくくなる…という悪循環に陥ってしまう。

テストステロンを高めるセルフケアとは?

それでは、多忙な日常生活の中で、どのようにテストステロンを高めたらよいのだろうか?おすすめのセルフケアはたったの4つ。

■1.1日1回の有酸素運動or筋トレ
■2.良質な睡眠
■3.ぬるめの湯船に20分浸かる
■4.肉とニンニク

■1:1日1回の運動or筋トレで男性ホルモンUP

運動すると頭が冴えたり、筋トレ後に性欲が増したりすることはないだろうか? これは、運動や筋トレを行うとテストステロンの分泌量が増えるたからだ。

通常は睾丸から分泌されるテストステロンだが、1日30分程度の少し汗ばむ程度の運動を行うことにより、脳内でのテストステロンの分泌を上昇させるとの報告もある。

リモートワークなどにより体を動かす機会が減っている人は、まずは1日1万歩を目標にウォーキングを始めてみよう。デスクワークが長い人は、無自覚のうちに上半身の筋肉の硬直が進んでいるので、隙間時間にストレッチも加えていきたい。

■2:良質な睡眠でテストステロンの分泌を活発に

テストステロンの低下を防ぐために欠かせないものが、「睡眠」である。一日のなかで深夜から明け方にかけての時間帯が、テストステロンの分泌が最も活発になる。
夜更かしはテストステロン分泌の天敵なので、遅くとも12時までには床に入り、最低6時間の睡眠を確保することが必須だ。

■3:入浴でヒートショックプロテインを増やす

HSPを増やすのに効果的な入浴

細胞の損傷を防ぐタンパク質の一種であるHSP(ヒートショック・プロテイン=熱ショックタンパク質)という物質は、ストレスから細胞を守る機能を持っている。このHSPが、テストステロンの働きを助けるのだ。HSPを増やすのに効果的なのが入浴だ。

38〜40℃のお風呂で20〜30分程度、下半身を中心に温めるのがおすすめだが、長湯が好きではない場合は42℃のお風呂に10分間程度入浴するのでもOKだ。

■4:肉とニンニク料理で男性の魅力UP

タンパク質を効果的に摂取することで、十分なテストステロンが分泌される

私たちの体は、タンパク質不足で飢餓状態を感じると十分なテストステロンが分泌されないので、まずは1日に肉を最低100g食べる習慣をつけよう。霜降りよりは赤身肉を選べば、鉄分やビタミンB群などの美肌に必要な栄養素も摂れる。

そして、ニンニクや玉ねぎもテストステロンをアップさせてくれる食材だ。とくにスタミナ食として知られるニンニクは、食べた後の血中テストステロン値が一時的に5pg/ml程度上昇したとの報告もある。高タンパク質でビタミンB群を多く含む食材と合わせると、より効果が高まると考えられている。

以上、2回に渡り、男性ホルモン(テストステロン)の低下がメンズ美容に及ぼす影響や、セルフケアの対策をお伝えしてきた。男性ホルモンは男性の魅力を最大限に活かしてくれる大切なパートナーである。枯渇させない生活習慣を身につけたいものだ。

西嶌暁生(にしじま あきお)さん
医学博士、形成外科専門医
筑波大学大学院卒業。2児の父。『恵比寿形成外科・美容クリニック』のメディカル・ディレクターおよびメンズ美容医療の担当医。形成外科・美容医療の専門医として、10年以上にわたり肌のダメージに向き合い、肌細胞の再生(cell repair)をキーワードにアンチエイジングに取り組む。メンズ美容においては、男性特有の悩みや肌の特徴を踏まえ、自身の細胞を最大限に活性化するため、内・外・心からのアプローチを提唱する。
この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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