有名女優からも絶大な信頼を得るスタイリストの犬走 比佐乃さんが、自身の経験値から大人の女性に必要なファッションの選び方を教えていただく連載。第29回目ではトレンドになる前からメンズのアイテムを日常的に取り入れて楽しんでいるという犬走さんに、その魅力や着こなし方を教えていただきます。

犬走 比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)本誌をはじめ数々の女性誌や女優のスタイリングを手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼で、セレクト&スタイリングする自身の着こなしも、注目を集める。

大人の女性の魅力を高める!? 人気スタイリストが「メンズのアイテム」を日常に取り入れる理由とは?

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犬走さんが愛用するメンズの洋服(すべて犬走さん私物)

SDGsの目標の中にも掲げられるジェンダー平等。その広がりを受けて、ファッションの世界もジェンダーレスなスタイルが人気を集めています。マニッシュなスタイリグを得意とし、以前からコーディネートにメンズアイテムを取り入れていた犬走さんは、自身も日常的にメンズの洋服を着るといいます。

「男性用の服はディテールにこだわった仕立ての良いアイテムが多いので、上質さを追求する女性にはむしろ選んでいただきたいと思います。最近ではユニセックスのアイテムも増えましたし、サイズ展開も豊富ですよね。ジェンダーに関係なくどなたでも取り入れやすくなっていますので、ぜひ皆さんにもチャレンジしていただきたいですね」(犬走さん)

それから、男性用だからといって選択肢から外すのは、装う楽しみを自ら減らしているようなものだとも。

「自分の感性を信じて、おもしろいと思った服をワードローブに取り入れることで、着こなしの幅がもっと広がるはずですよ!」(犬走さん)

今回は、そんな犬走さんが愛用するメンズの洋服から、お気に入りの私物4点をご紹介いただきます。購入するきっかけとなったアイテムの魅力やスタイリング方法も、併せてご紹介いただきます。

違和感なく日常に馴染む。ファッションのプロが信頼する「メンズ服」とその着こなし4選

ここでは、実際に犬走さんの心を射抜いた4つのメンズ服と、その着こなし方を教えていただきます。

■1:繊細な透け感とメンズならではの硬質ディテールに魅了される「ダンヒルのシャツ」

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端正なシルエットに繊細な素材の組み合わせが新鮮(犬走さん私物)

こちらは、男性用のファッション誌で見かけ、すぐにお店へ買いに走ったというdunhill(ダンヒル)のシャツ。透け感のあるシルクオーガンジーで、メンズらしからぬ繊細な素材がお気に入りとか。

「身頃は柔らかな生地ですが、襟はハリ感があってシャープ。こういうディテールがメンズの洋服らしく、個人的に好きなポイントです」(犬走さん)

またダンヒルのショップに訪れたことで、新たな発見も。

「意外とジェンダーレスでタイムレスなアイテムが充実していて驚きました。以来、ちょくちょくチェックしてるんですよ」(犬走さん)

【私物コーデ】ロングドレスに“さらりと羽織って”リラクシーな着こなしに

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透け感のある生地のため、白シャツでもかっちりしすぎる印象にはなりません(すべて犬走さん私物)

こちらのアイテムは、リラックスムード漂うロングドレスに、シャツをラフに羽織って楽しんでいるといいます。

「透け感があるうえオーバーサイズなので、ボタンを閉じてきちっと着るよりも羽織りにすることが多いですね。身頃から肌が透けるので袖をロールアップせず、抜き襟にしなくても抜け感が出ます」(犬走さん)

■2:デザイナー本人も愛用!「ジョルジオ アルマーニのカシミヤ素材のニットTシャツ」

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合わせるボトムスを選ばないスタンダードなネイビーTシャツ(犬走さん私物)

デザイナー、ジョルジオ アルマーニのトレードマークであるネイビーカラーのカシミヤ素材のニットTシャツ。GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)のメンズラインでは、彼が愛用しているモデルがラインナップされています。犬走さんも以前から気になっており、今年ついに入手したとか。

「ベーシックな形で着回しやすいだけでなく、素材はカシミヤ100%。Tシャツですが、ニットにふんわり包まれている感覚で、着心地が最高です」(犬走さん)

犬走さんは体型に合わせて着こなすために、こんな工夫も。

「このTシャツは46サイズから展開されているのですが、手に入ったのが48サイズだったのです。少しボディラインにフィットさせたかったので、洗濯機で洗って縮めてみました(笑)」(犬走さん)

【私物コーデ】“トレンドのグリーン”を取り入れてフレッシュな印象へ

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シューズを白にすることで、コーディネートが軽やかに(すべて犬走さん私物)

「Tシャツがベーシックなぶん、トレンドのグリーンを取れることでフレッシュな印象にしてみました。柄もコーディネートに奥行きをもたらせてくれるので頼りになりますね」(犬走さん)

また、パジャマパンツのようなボトムスは抜け感があるため、レースアップシューズで知的な印象をプラスしてバランスを整えているそうです。

■3:立体的なシルエットが美しい「ヘリルのホワイトデニム」

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タックがホワイトデニムパンツのカジュアルさを払拭します(犬走さん私物)

犬走さんお気に入りのユニセックスブランド、HERILL(ヘリル)からは、ホワイトのデニムパンツをピックアップ。少し太めラインが特徴のカジュアルなパンツですが、男性デザイナーならではのディテールへのこだわりが素晴らしいと犬走さん。

「タックが入っているので、着用すると立体感が生まれてシルエットがきれいに出ます。ボタンなどの金属パーツにもこだわっている物作りへの真面目な姿勢に好感が持てます」(犬走さん)

【私物コーデ】ジャケットコーデはロールアップでカジュアルに遊んで

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大人の余裕を感じさせる、遊び心のあるモノトーンコーデ(すべて犬走さん私物)

COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)のジャケットは手描き風のデザインが印象的。そのプリントをアクセントにしながら、ネイビーのトップスでスタイリングを引き締めています。

「ゆとりのあるオーバーサイズめのパンツなので、ロールアップして足元を軽やかに見せています。ジャケットからも手首をのぞかせて適度に抜け感を出しました」(犬走さん)

■4:前後で印象が異なるヨウジヤマモトの二面性がある「カラスパンツ」

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正面から見るとサルエルパンツ(犬走さん私物)

先日、俳優の松重豊さんや仲村トオルさんがモデルとしてランウェイに登場し、話題になったYohji Yamamoto POUR HOMME(ヨウジヤマモト プールオム)。犬走さんも今回のコレクションをきっかけに、改めてYohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)が気になり始めたそう。

こちらパンツは2021年春夏シーズンのものですが、ユニークな仕掛けのあるデザインがキャッチーだと犬走さん。

「正面から見るとサルエルパンツですが、後ろから見るとロングスカートのようなデザインになっているところがユニークで、おもしろいですよね」(犬走さん)

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背面はまるでロングスカートのような二面性のあるデザインの「カラスパンツ」(犬走さん私物)

後ろにボリュームをかけた「カラスパンツ」は、「バルーンパンツ」や「ラップパンツ」などに並ぶブランドの代表作で、落ち感のある素材の生地ををたっぷりと使っているため、ボリューミーで存在感のあるシルエットに。メンズならではの、大きく深いポケットデザインも実用的で便利だといいます。

【私物コーデ】オールブラックでも揺れるボトムスでニュアンスのあるコーディネートに

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動きのあるボトムスのため、シックな中にもモードな印象に(すべて犬走さん私物)

歩くたびに揺れるバックスタイルを印象づけるため、コンパクトなジャケットですっきりとスタイリングするのがブームとか。

「シックなオールブラックコーデでも、ボトムスに動きがあるので単調な印象になりません。これだけで絵になるデザイン力は流石ですね」(犬走さん)


人気スタイリストの犬走比佐乃さんから、大人の女性に必要なファッションの選び方を教えていただく連載。第29回目は、日常に取り入れやすいメンズアイテムの選び方と、そのスタイリングテクニックを教えていただきました。

ジェンダーの固定観念に縛られない犬走さんの視点を参考に、メンズの洋服にもぜひ挑戦してみてください。

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PHOTO :
黒石あみ(小学館)
WRITING :
津島千佳
EDIT :
石原あや乃