謙遜したり断ったりする際に「滅相もございません」と言うことがありますが、これは正しい敬語でしょうか? どんな意味をもつフレーズかご存じですか? 仕事で使うのはどんなケース? 今日は「滅相もない」のさまざまな「?」を解明します。 

【目次】

「滅相もございません」は間違った敬語?
「滅相もございません」は間違った敬語?

【「滅相もない」の基礎知識】

■「読み方」とビジネスシーンでの「意味」

「滅相」は、「めっそう」と読みます。
「滅相もない」を別の言葉で言い換えると、「ありえない」「とんでもない」となり、相手の言葉を謙遜しながら否定したり、断りのフレーズとして使われます。

■「滅相」は仏教からきた言葉

「滅相」とは【あるはずのないさま。とんでもないさま】(『デジタル大辞泉』より)という意味の形容動詞です。もともとは仏語(ぶつご・仏の教え)で、人間の一生「生・住・異・滅」の四相のうちのひとつを示す名詞。「滅=死」を避けることはできないが、生き続けたいと思う人間には「滅」はあってはならないこと――という意味です。また、それが転じて「とんでもないこと」となり、お礼を言われたときなどに「どういたしまして」という気持ちを表す際にも使われます。

■正しい敬語表現を身に付けましょう

「滅相もありません」「滅相もございません」はよく使われるフレーズですが、実は誤用とされています。「滅相もない」で一語と捉えた場合は「滅相もないことでございます」が正解となりますが、現代では「滅相もありません」「滅相もございません」も一般化。文化庁「敬語の指針」も使用に問題なしとしているので、ビジネスシーンで使っても大丈夫なのです。大変かしこまったシーンで目上の人に対してなら、「滅相もないことでございます」を用いたほうがいいでしょう。


【ビジネスシーンで使える「例文」3選】

ビジネスシーンでの「滅相もありません」「滅相もないことでございます」は、会話のなかでもメールでも、比較的気軽に使えるフレーズです。例文を見てみましょう。

■1:「そのような重要なポジションに、私ごとき若輩者が滅相もないことでございます」

「滅相もない」は、謙遜しながら相手の言葉を否定できる言葉ですが、否定というマイナスイメージは薄れるので、ビジネスシーンで重宝します。

■2:「滅相もありません、十分時間をかけて検証しました」

「ずいぶん早い仕上がりだけど、手を抜いてないよね?」などと上司から言われた際に、その言葉を強く否定しつつも印象が悪くならないように配慮した例文。

■3:「滅相もございません。大変有意義なお打ち合わせでした」

取引先との長時間のミーティング後、先方から時間が長くなったことを詫びられた返しに。「そんなことはない」とひと言加えるのが大人の敬語です。

このように、■1は謙遜、■2は否定、■3は謝罪への返答というように、ビジネスシーンでは主に3パターンのケースで使われます。


【「滅相もない」と同じ意味で使える「言い換え表現」】

「謙遜」「否定」「謝罪の返答」のケースごとに、「滅相もない」の類語や言い換えを見ていきましょう。

1:謙遜(謙虚) → 「恐縮です」「恐れ入ります」

2:否定 → 「とんでもないことでございます」 

3:謝罪への返答 → 「こちらこそ~」「お気になさらず~」

また、「滅相もない」に近いフレーズとして「恐れ多い/畏れ多い」という表現もあります。しかし、これは高貴な人や尊敬する人などに対して、失礼になるので申し訳ない、ありがたくもったいない、という思いを表すもの。通常では会えないような人に対して使うフレーズなので、一般的にビジネスシーンで使うなら「滅相もない」を選んで正解!


【「滅相もございません」と言われたら…】

そもそも「滅相もない」は謙遜して用いられるフレーズなので、返答する必要はありません

しかし、本音で言ったことに対して謙遜されては「お世辞と受け取られたのかな?」と、モヤモヤすることもあるでしょう。そんな場合は、「本心からそう思っていますのでご謙遜されず…」と、ひと言返してスッキリするのが得策。相手も気持ちのよいものです。

 

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今日は「滅相もない」の敬語表現を学びました。正しくは「滅相もないことでございます」となりますが、現代ではかなりかしこまった言い回し。ビジネスシーンでも一般化している「滅相もありません」「滅相もございません」を上手に使って、“感じのよい敬語の達人”を目指しましょう。

この記事の執筆者
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