「来る」ことを相手に依頼する意味の「来てください」。日本語として間違った表現ではありませんが、ビジネスで使用するには稚拙な印象の言葉です。状況を見誤って使用すると、相手を不快にしてしまうことも! その理由と、適切な「来てください」の言い換え表現を、例文をあげて解説します。
【目次】
- ビジネスでは「来てください」が失礼になる場合も!
- 「来てください」をビジネス敬語として丁寧な印象にするには?
- さらに敬意が伝わる「来てください」の「言い換え」表現6選
- 「来てください」に関する「注意点」まとめ
【ビジネスでは「来てください」が失礼になる場合も!】
「来てください」は、動詞「来る」の連用形に接続助詞「て」を付け、懇願の意を表す補助動詞「ください」から成る言葉です。丁寧語ではありますが、敬意は低め。また、「ください」という断定的な表現に、命令に近い印象を受ける方もいらっしゃいます。
このため、「来てください」を使う相手として適切なのは、上下関係のない同僚や友人、目下の人。目上の方や、特にフォーマルなシーンで使うのは不適切です。マナーに厳しい方からは、「君とはお友達じゃないんだけどね」と、嫌味のひとつも言われかねない言葉ですから、注意が必要です。
【「来てください」をビジネス敬語として丁寧な印象にするには?】
前述の通り、「ください」は懇願の意を表す補助動詞。「来てください」は丁寧語ではありますが、敬意は低めです。取引先や目上の方に対する敬意を高めるためには、「来る」という動詞を尊敬語に変え、「尊敬語+ください」という表現をするのが適切です
■「おいでください」 ■「お越しください」
■「いらしてください」 ■「お運びください」
「尊敬語+ください」という敬意を高めるルールは、「来る」という動詞以外でも応用可能です。
●「食べてください」→「お召し上がりください」
●「見てください」→「ご高覧ください」
●「着てください」→「お召しください」
【さらに敬意が伝わる「来てください」の「言い換え」表現6選】
取引先など、社外の方への言葉として、さらに敬意を込めた表現をいくつか覚えておきましょう。
■「どうぞお越しください」
依頼の文章の前に「どうぞ」「ぜひ」などの言葉を添えると、柔らかな印象になります。「お忙しいところ恐縮ですが」「恐れ入りますが」などのクッション言葉も、覚えておきたい定型文ですね。
■「おいでいただけませんでしょうか」
「お越しいただけますでしょうか」「お運びいただけますでしょうか」など、疑問文にすることで、さらに丁寧な表現に。
■「お越しいただけると幸いです」
「〜と幸いです」も、へりくだって依頼する際の定型文です。
■「楽しみにお待ちしております」
プライベートな依頼や約束によく使われる言葉ですが、「楽しみにお待ちしております」に「来てほしい」という意味合いは弱く、不確実性を含んだ言葉でもありす。日時の決まっている打ち合わせなど、正確性が求められる場面では使いません。
■「ご来社(来店・来場・来所)くださいませ」
来ていただく場所を「会社」「店」「場所」などに変え、応用が利く表現です。
■「ご足労くださり、ありがとうございます」
相手の骨折りに対し気遣う気持ちを込めて「ご足労」という言葉を使います。ただしこちらは、「ご足労いただき、ありがとうございます」など、「(本来はこちらから出向くべきところを)来てくださった」という結果に対して感謝を伝えるときに使う言葉です。「ご足労ください」という表現は適切ではありません。
【「来てください」に関する「注意点」まとめ】
「来てください」は、動詞「来る」に「ください」という依頼を表す補助動詞が付いた、正しい敬語表現です。ただし、丁寧語であるため、敬意は低め。命令口調のように受け取る方もいます。フランクな印象も強いため、少々上から目線に聞こえてしまうことも。
特に社外の方に対しては、「お越しください」などの言い換え表現を使うのが適切でしょう。
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いかがでしたか? とても直接的な印象を与える「来てください」という言葉。間違った表現ではないとはいえ、知的な印象を与える言葉ではないことも確かです。そして、実はこうした印象の積み重ねが、対人関係の信頼度を左右します。大人にふさわしい、洗練された言葉遣いを心掛けたいものです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『心理学的に正しい!人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社)/『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) :