相手に何かを見てほしいとき、あるいは確認してほしいときに使われる「見てください」という言葉。日本語として間違った表現ではありませんが、ビジネスで使用するには少々丁寧さに欠けたフレーズです。状況を見誤って使用すると、相手を不快にさせるだけでなく、思わぬミスに繋がってしまうことも。その理由と、適切な「見てください」の言い換え表現を、例文をあげて解説します。

【目次】

「見てください」は要注意!
「見てください」は要注意!

【「見てください」の使い方には注意が必要!】

「見てください」は、動詞「見る」の連用形+接続助詞「て」+懇願の意を表す補助動詞「ください」から成る言葉です。正しい敬語表現(丁寧語)ではありますが、敬意は低め。また、「ください」という断定的な表現に、命令に近い印象を受ける方もいらっしゃるようです。

やや丁寧さに欠ける表現のため、「見てください」を使う相手として適切なのは、上下関係のない同僚や友人、目下の人。取引先や目上の方に対してはふさわしい言葉ではありません。特にフォーマルなシーンで使うと、相手に幼稚な印象を与えかねないので、注意が必要です。


【「見てください」の「敬語」表現は?】

前述の通り、「ください」は懇願の意を表す補助動詞です。丁寧語ではありますが、敬意は低め。「ください」を使ったフレーズの敬意を高めるためには、「尊敬語+ください」というルールを覚えておくと便利です。

■「見てください」を敬語表現にすると?

「見る」を表す尊敬語は、「ご覧」になります。従って、「見てください」の、より丁寧な表現は、「ご覧ください」です。

「尊敬語+ください」というルールは、「食べてください」→「お召し上がりください」、「着てください」→「お召しください」などと応用が利きます。


【同じような意味で使える「言い換え」表現6選】

■1:「お目通しください」  ■2:「ご一読ください」 

■3:「ご参照ください」   ■4:「ご確認ください」

■5:「ご査収ください」   ■6:「ご査証ください」

前述の通り、「ご覧ください」の「ご覧」は、「見る」の尊敬語です。汎用性の高い言葉ではありますが、確実性を求められるビジネスシーンでは、より適切な言葉を選んだほうが、意思の疎通がスムーズに進むかもしれません。例えば、関係者に対し、資料に目を通してほしいことを伝えるケースなど、「見る」を「読む」の意で使った場合、丁寧な言い換え表現は「お目通し」「ご一読」「ご参照」となります。「ご確認」も、日常会話でよく使われる言葉ですね。

「ご査収ください」は「内容をよく調べたうえで(金品や書類を)お受け取りください」という意味の敬語表現。さらに「ご査証ください」となると、「きちんと調査して“証明”してください」という意味が含まれています。クレーム関係の書類や見積書、領収書などの間違いを指摘し、修正を求める場合にも使われます。
つまり、「見る」という言葉が含む「行為」に対し、要求される正確さや緻密さの程度は、「ご覧」<「お目通し」≦「ご一読」≦「ご参照」<「ご確認」<「ご査収」<「ご査証」の順でシビアになっていきます。

請求書や決算書など、数字のチェックを含んだ書類であれば「ご覧ください」よりも「ご確認ください」あるいは「ご査収ください」を使ったほうが、上司や取引先などの関係者に、案件の重要性が伝わりやすくなります。


【「ご覧ください」を、さらに丁寧に伝えるには?】

例えば、誰かに書類を見せるという場面であっても、相手からの依頼を受け提出するケースと、企画書のように自分の要望を伝えるために書類を渡すケースとでは、言葉のチョイスが違ってくるはずです。前者であれば、「ご用意できました。ご覧ください」といった表現で充分かもしれませんが、こちらからの依頼・提案であれば、さらに丁寧な表現が必要です。

クッション言葉を使って唐突感を和らげたり、「〜いただけますか」と依頼を謙譲表現の疑問形にすることで、相手に対する敬意を強めることが可能です。

■文頭に「ぜひ」「何卒」などを添える

■文頭に「大変恐縮ですが」など、クッション言葉を添える

■「ご覧いただけますか」と、疑問形にする

■「ご覧いただけますようお願い申し上げます」と依頼形にする

■「ご覧いただけますと幸いです」「~うれしいです」と気持ちを添える

また、敬語表現を使用する際には、「文章を通して、言葉の敬意の度合いを合わせる」ことも大切です。

・「詳細については、この資料を見てください」

・「詳細につきましては、こちらの資料をご覧ください」

「見てください」→「ご覧ください」の変化に合わせて、「ついては」→「つきましては」、「この」→「こちらの」と、全体の敬意の度合いを統一したほうが、文章全体が洗練された印象になりますね。

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「見てください」を「ご覧ください」に置き換えるだけでなく、「見る」という言葉に含まれた意味を考慮して言葉を選ぶと、今の作業をより正確に、効率化できるかもしれませんよ。ぜひ、使いこなしてくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『心理学的に正しい!人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社)/『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) :