上司や取引先からの問いかけに、とっさに「わかりました!」と応えてしまうのは、よくあることです。でも改めて考えてみると、「わかりました」という言葉は大人が口にするには少々幼稚、少なくとも知的に響く言葉ではありませんね! 今回は「わかりました」の丁寧な敬語表現を、詳しい解説と共にご紹介します。状況に合わせて適切に使い分けてくださいね。

【目次】

「わかりました」では敬意が足りない!?
「わかりました」では敬意が足りない!?

【そもそも、「わかりました」本来の意味は?】

「わかりました」は、動詞「わかる」と、聞き手への丁寧な気持ちを表す助動詞「ます」、[過去・完了・存続]の助動詞「た」から成り立つ言葉です。敬語表現のひとつである丁寧語ではありますが、敬う気持ちを表現する「尊敬語」や、へりくだって敬意を表する「謙譲語」は含まれていません。

『デジタル大辞泉』の「分かる」の項目には、次のような記載があります。

【1. 意味や区別などがはっきりする。理解する。了解する。「物のよしあしが―・る」「言わんとすることはよく―・る」「訳が―・らない」】

【2. 事実などがはっきりする。判明する。「身元が―・る」「答えが―・る」「持ち主の―・らない荷物」】

【3. 物わかりがよく、人情・世情に通じる。「話の―・る人」】

また『敬語マニュアル』は、この他に「察する」という意味をあげ、【状況の好ましくない状況を理解し、同情するという意味の表現になる】と記しています。

■理解 ■了解 ■判明 ■察する

以上のように、「わかる」という単語は、理解、了解、判明など、複数の意味をもっていることが「わかりました」(この場合の「わかりました」は、「判明しました」という意味ですね)。

「わかりました」は敬語表現ではありますが、敬意の度合いとしては高くありません。ビジネスシーンでは、使われる状況により意味が変わる「わかりました」という言葉を、相手との関係性などを考慮して、正しい敬語表現に置き換えて使用する必要があるのです。


【「わかりました」を、より丁寧な「敬語」表現にすると?】

■理解いたしました ■承知いたしました ■了解いたしました

「〜しました」を謙譲語にすると、「いたしました」となります。ですから、「わかりました」の敬語表現としては、「理解いたしました」「了解いたしました」「判明いたしました」「お察しいたしました」などが考えられます。ただし、「理解しました」は、かなりストレートな表現であること、また「了解しました」は「それでいいですよ」というニュアンスを感じさせるため、一般的に目上の方に対しての使用は失礼とされていることを意識しておくといいですね。

■かしこまりました ■承りました

また、「わかりました」の敬語表現としては、「かしこまりました」が広く使用されています。「かしこまりました」は「理解した上で、引き受けました」という意味の言葉。「畏まりました」と書くことからわかるように、「畏れ(恐れ)入って」「つつしんで」といった意味を含んだ言葉です。相手への敬意が表現できます。ただし、親しい間柄で使用すると、少々大げさに感じられることがあるかもしれませんね。


【ビジネスシーンでそのまま使える「例文」5選】

では実際に、「わかりました」を別の言葉で置き換えて、文章をつくってみましょう。

■1:「システムについてのご説明、ここまで確かに理解いたしました」

■2:「ご希望の製品番号は○○とのこと、承知いたしました。在庫を確認の上、改めてご連絡させていただきます」

■3:「●月△日は御都合が悪いとのこと、了解いたしました。再度調整いたします」

■4:「○○の御手配が必要な旨、かしこまりました」

■5:「日程の変更について、確かに承りました」

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「わかりました」は敬語表現ではあるものの、目上の方に対する言葉としては、敬意が足りないと感じる人は少なくないようです。また、少々幼い印象を与えるのも確か。言葉の選び方が、人の印象を決めてしまうのは、よくあることです。相手の意図や状況を把握し、適切で美しい言葉遣いを心掛けましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『心理学的に正しい!人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社) :