1月14日(月)から開催された時計界の祭典、SIHH(エスアイエイチエイチ、SALON INTERNATIONAL DE LA HAUTE HORLOGERIE)。
カルティエを筆頭に、A.ランゲ&ゾーネ、ヴァシュロン・コンスタンタン、IWCといったリシュモングループに属するブランドのほか、オーデマ ピゲ、エルメス、リシャール・ミルなどのラグジュアリーメゾンが、今年2019年の新作を発表するこの一大イベントが、1月17日(木)に4日間の会期を終えました。
ファッションの世界と同じように、時計界にもデザインや素材、色などのトレンドがあります。しかしお洋服と違うのは、時計のトレンドはシーズン、長くても半年ほどという「一過性」ではないということ。各社の新作ウォッチのなかで多く見受けられた潮流は、やがてベーシックへと昇華し、根づいていきます。
SIHH2019を終えて印象に残ったのは、レディスウォッチの華やかな「色使い」!
ケースやダイヤル、ストラップ、またはルビーやカラ―サファイアといった色石によって、ラグジュアリーメゾンが、それぞれのクリエイティビティを開花させていました。
【リシャール・ミル】のポップでキュートな時計5選
まず注目したいのは、これまでのイメージとはまったく異なるポップさを前面に押し出した、新たなコレクションを発表したリシャール・ミル。
リシャール・ミルは、1億円超えも当たり前、1,000万円以下のモデルを探すのが難しい!という、非常に高額な商品展開。それでいながら、全世界的に、発売と同時にほぼ完売してしまい、「売るものがない!」といった状態が続いている、近年最も成功している新興ブランドです。
男性の時計愛好家の間では、成功を象徴する、いい意味での「ドヤ時計」の極み的存在として、羨望の視線を集めています。
そのリシャール・ミルが、2019年は女性をメインターゲットにした新作を発表するという事前情報が、ジャーナリストの間に流れたのは2018年末のことでした。それを受けて私たちが予想していたのは、メンズモデルを踏襲したトゥールビヨンなどの複雑機構を搭載し、そこにふんだんにジュエリーをあしらう――といったアプローチ。
しかしフタをあけてみると、これまでのリシャール・ミルのイメージからは想像もできなかった、ポップでキュートな世界が!
『ボンボンコレクション』と名付けられたこの新コレクションは、「フルーツ」と「スウィーツ」のふたつのラインでの展開。オフィシャルには「ユニセックスコレクション」ということですが、グラフィカルでカラフルな表現を用いて探求した「甘くておいしい」新境地は、ラブリーなブースの雰囲気からして、女性ユーザーを想定しているマーケット戦略は明らかです。
「大人かわいい」という新境地を開拓したリシャール・ミル。予定価格は¥14,200,000~¥18,400,000と、お値段だけはかわいくありませんが、10種類・各30本世界限定の時計は、ほどなく完売しそうです。
■1:桜色が印象的!「リシャール・ミル ボンボンコレクション スリーズ(さくらんぼ)」
■2:やわらかいパステルカラーに気分が上がる!「リシャール・ミル ボンボンコレクション マシュマロ」
■3:棒付きキャンディ入り!?「リシャール・ミル ボンボンコレクション ミルティユ(ブルーベリー)」
■4:うねる文字盤が飴の模様のよう。「リシャール・ミル ボンボンコレクション スセット(キャンディ)」
■5:フルーツたっぷり、元気になれそうな「リシャール・ミル ボンボンコレクション シトロン(レモン)」
【オーデマ ピゲ】からは、”レインボーカラー”サファイアをあしらったロイヤル オークが登場
リシャール・ミルがポップにハジけた一方で、オーデマ ピゲやカルティエといった老舗のメゾンは、色鮮やかな宝石使いの妙で風格を示しました。
2019年を最後にSIHHから撤退することが発表されているオーデマ ピゲは、25年ぶりというまったく新しいコレクション『CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ』の13モデルを発表したことがトップニュースですが、不朽のアイコン『ロイヤル オーク』のバリエーションも拡充。
スケルトン仕様によってムーブメントの美しさを愛でることができる本格機械式モデルにも、ケース径37㎜で32個ものバゲットカットのカラーサファイアをあしらった、エレガントな新作が登場しました。
ベゼルにバゲットの”レインボーカラー”サファイアがびっしり!「ロイヤル オーク・フロステッドゴールド・ダブル バランスホイール・オープンワーク」
【カルティエ】からは、中国の寺院がモチーフの「タンク シノワーズ」が久々にお目見え
すでにお伝えしたように、『パンテール ドゥ カルティエ』や『ベニュワール』といった名品の新作を発表したカルティエですが、メゾンのオリジナリティを象徴する『カルティエ リーブル』コレクションからも、珠玉のジュエリーウォッチが誕生しました。
なかでも、古くからのカルティエファンにとっては特別な存在である『タンク シノワーズ』の久しぶりの登場は、心躍るニュースです。ルビーやツァボライトといったプレシャスカラ―ストーンとの組み合わせによって、伝説の名品が新たな表情を宿しました。
2019年3月に開催される時計界のもうひとつの祭典『バーゼルワールド』でも、ラグジュアリーメゾンのカラフルな色使いに注目が集まりそうです。
2019年SIHH速報
- ジャーナリストに衝撃!A.ランゲ&ゾーネの名時計「ランゲ1」にアニバーサリーモデルが毎月、登場!【SIHH速報】
- カルティエからのサプライズ!「パンテール」と「ベニュワール」の新作時計に感動!【SIHH速報】
- TEXT :
- 岡村佳代さん 時計&ジュエリージャーナリスト
- BY :
- 『Precious11月号』小学館、2017年