ビジネスシーンでよく使われる「ご理解ください」という言葉。「理解」という言葉自体は小学校で学習する熟語ですが、実はふたつの意味があることをご存知ですか? 目上の方に対して使う際の注意点など、知ってるようで知らない「ご理解ください」について解説します。

【目次】

「ご理解ください」は「語〇〇ください」とどう違う?
「ご理解ください」と「ご容赦ください」はどう違う?

まずは「ご理解ください」の基礎知識から

■「意味」

「ご理解ください」は、行為の主体を立てる接頭語の「ご」+「理解」+動詞「くれ」の尊敬語「くださる」から構成された言葉です。「理解してください」をより丁寧にした正しい敬語表現です。
「理解」について、『デジタル大辞泉』には主にふたつの記載があります。

(1) 物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。例:「理解が早い」

(2 )他人の気持ちや立場を察すること。例:「彼の苦境を理解する」

ビジネスシーンで「ご理解ください」として使われるときは、2の「察してほしい」の意味として使われることが多いようです。「ご理解ください」は「理解してください」の敬意を強めた表現ですが、「ご理解してください」とは言いませんので、注意しましょう。

■「ご容赦ください」との違いは?

「ご容赦ください」は、自分の非を認め、相手に対する謝罪の意味を込めて、許しを乞う気持ちを表す際に使われる言葉です。謝罪やお詫びをともなうビジネスシーンでは、「ご理解ください」よりも「ご容赦ください」を使うのが適切です。


【失礼にならないように使うには?覚えておきたい<注意点>】

「ご理解ください」は、正しい敬語表現ではありますが、「敬意が感じられない」あるいは「強い口調に聞こえる」と感じる人もいるようです。その理由は、文法的に「ください」は「くださる」の命令形だから。「静かにしてください」「ご着席ください」のように、「ください」が「指示」のニュアンスを感じさせるためかもしれません。

また、人によっては「ご理解ください」を、「自分に選択肢を与えることなく一方的に理解を求める」ように受け止めることもあるようです。確かに、目上の方に一方的に「察してくださいね」と申し出るのは、失礼な行為です。「どうぞ」「何卒」「恐れ入りますが」とクッション言葉を付けたり、依頼のかたちにするなど、印象を和らげる敬語フレーズを使用しましょう。

■丁寧語「ます」の命令形「ませ」を使って丁寧な敬語フレーズに

■「〜お願いいたします」「〜お願い申し上げます」など謙譲表現として使用する

また、プレゼンテーションなどで、説明の途中に「ご理解いただけましたか?」というフレーズを挟むことがありますが、こちらも言い方次第では気分を害する人がいるかもしれません。相手の理解度を問うよりも、「説明不足の点はなかったでしょうか」と、自分の落ち度を懸念した表現にしたほうが、相手への敬意が伝わります。


【会話やメールでそのまま使える「例文」6選】

丁寧さの度合いでいえば、1の「ご理解くださいませ」が一番低く、6の「ご理解賜りますようお願い申し上げます」が、一番丁寧な表現となります。

■1:「私どもではお手伝いが叶いません。どうぞご理解くださいませ」

■2:「事情をご理解いただきありがとうございます」

■3:「繰り返しになりますが、ご理解いただきたく存じます」

■4:「ご理解のほどお願い申し上げます」

■5:「ご理解いただけますと幸いです」

■6:「何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」


【似た意味で使われる「類語」「言い換え表現」】

「ご理解ください」と同じような意味で使える「言い換え表現」をご紹介しましょう。

■「お察しください」

■「ご了承ください」

「ご了承ください」は、「事情をくんで理解・納得してください」という意味を表すフレーズです。「ご理解」がすでに起きたことや現在進行していることについて理解を求めているのに対し、「ご了承」はこれからはじまることに対して理解を求める際に多く使われる言葉です。

■「ご承諾ください」

「ご承諾ください」は、自分の要求を受け入れてもらいたい場合に使われる言葉です。

■「お含みおきください」

「含みおく」という言葉は、「心に留めておく」という意味ですが、相手に対して依頼のかたちで使う場合は「(事情を察して)心の中に留めておいてほしい」というニュアンスが強くなります。

■「ご高察ください」 ■「ご賢察ください」

ご高察(ごこうさつ)・ご賢察(ごけんさつ)は、「その人が推察すること」を意味する尊敬語です。

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「ご理解ください」は、正しい敬語表現ですが、やや強い口調と捉える方もいるようです。使う相手は社内の上司までに留め、取引先や顧客に対しては、さらに丁寧な言い回しをマスターして、上手に使い分けましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :