【目次】

【「いってらっしゃい」の「意味」「語源」】

「いってらっしゃい」は、日常生活で日々あたりまえのように使われる言葉のため、「カジュアルな言葉なのでは?」「目上の人に使って大丈夫?」など、少々心配になりますよね。ビジネスシーンで使う際の注意点を含め、詳しく解説します。

「意味」

「いってらっしゃい」は、外出する人を送り出すとき、見送る側が使う挨拶言葉です。「気を付けて行ってきててください。そして無事に帰ってきてください」という意味合いで使われます。

■「漢字」で書くと?

「いってらっしゃい」は漢字なら「行ってらっしゃい」となりますが、ひらがな表記が一般的です。

「語源」 

「いってらっしゃい」は、「いって-いらっしゃい」が略された慣用表現です。

日本では江戸時代には、「いってまいります(行って参ります)」「いってらっしゃい」という挨拶が使われていたといわれています。交通や通信手段が発達した現代とは異なり、昔は旅をしたり夜道を歩いたりすることに危険が伴っていたので、外出の際には、出かける側は「いってまいります(行きますが、必ず帰ってきます)」と挨拶し、見送る側も「いっってらっしゃい(気を付け行ってきてください。そして無事に帰ってきてくださいね)と、送り出していたのでしょう。家族や友人、親しい人の無事を祈る、日本ならではの素敵な挨拶言葉です。


【目上の人に対する「敬語」「丁寧語」表現】

「目上の人に『いってらっしゃい』を使っていいの?」と心配になるかもしれませんが、大丈夫ですよ。「いってらっしゃい」に略された「いらっしゃる」は、「来る」「行く」「居る」を意味する尊敬語。正しい敬語表現です。基本的には目上の人や上司に対しても使用できますが、カジュアルなイメージがあるため、なかには「なれなれしい」と感じる人がいるかもしれません。その場合、「いってらっしゃいませ」にすれば、丁寧な印象となります。

「ませ」とは、丁寧の助動詞「ます」の命令形で、「お帰りなさいませ」、「ごめんくださいませ」などのように使われます。ただし、使う相手やシーンによっては、少々気取った印象に受け取られてしまうことも。場に応じて使い分けましょう。


【「言い換え」表現】

■「お気をつけていってらっしゃいませ」

「いってらっしゃい」の丁寧な表現は「いってらっしゃいませ」ですが、頭に「お気を付けて」を添えることで、さらに丁寧な印象にすることが可能です。

■「お気を付けて」

末尾の「いってらっしゃい」を略した「お気を付けて」は、これだけで成立する挨拶言葉です。ただし、ややカジュアルな印象に。

■「気を付けて」

さらにカジュアルな「気を付けて」。同僚や後輩など、かなり親しい関係で使われます。


【「英語」で言うと?】

日本語では、「いってらっしゃい」は誰にでも使える「人を送り出すとき使う挨拶」ですが、英語には直訳できる言葉がありません。時と場合によって表現を使い分けましょう。

・Take care and good luck with your meeting.(気をつけて行ってらっしゃい、会議がうまくいきますように)

・Hope everything goes well at the client site. Safe travels!(顧客先でうまくいきますように。いってらっしゃい)

・All the best with the presentation. Safe trip.(プレゼン頑張ってください。いってらっしゃい)

・Safe travels! Have a good trip to Kyouo.(気を付けて行ってきてください。京都出張がうまくいきますように。

・Come back in one piece.(五体満足で帰ってきてね→無事に帰ってね)

・I’ll see you later.(またね)

See you later (またあとで)

・Good luck.(がんばって)

Have a nice(good) day (よい1日を)

・Take it easy.(さよなら/無理しないで)

・Enjoy.(楽しんできて)

・ Have a good time.(楽しんできて)


【職場で「いってらっしゃい」を使うときの「注意点」】

■目上の人には「いってらっしゃいませ」

「いってらっしゃい」は正しい敬語表現ですが、カジュアルなイメージがあるので、目上の方に対しては「いってらっしゃいませ」と使うのが無難です。

■「いってらっしゃい」と言われたら、何と返す?

誰かに「いってらっしゃい」と言われたときは、「いってきます(まいります)」と答えます。あるいは、誰かに「いってきます」と言われたら、「いってらっしゃい(ませ)」と返しましょう。ちなみに、「いってまいります」は「いってきます」の謙譲表現ですが、実は「いってまいります」のほうが言葉としては古く、「いってきます」が一般化したのは明治以降だと言われています。

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「いってらっしゃい」は、出かける人に対し、見送る側が「行って、無事に帰ってきてください」という願いを込めて使う挨拶言葉です。このようなフレーズがあるのは日本だけで、直接、ほかの言語に置き換えることはできません。ビジネスに限らず、気持ちのよい挨拶は、コミュニケーションの要です。笑顔と共に爽やかな印象で挨拶したいですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :