「お目にかかれて光栄です」と感情を表現したり、「お目にかかりたく存じます」と相手を立てながら依頼したり。ビジネスでは「お目にかかる」を使用するシーンがありますね。では、取引先だけれど「仕事仲間」というような同等の間柄の人にも使えるのでしょうか? 「TPOに合わせた正しい敬語」や「感じのよい敬語」を身につけ、今日も“敬語の達人”を目指してレッスンしましょう!

【目次】

「お目にかかる」と「お目にかける」は同じ意味?
「お目にかかる」と「お目にかける」は同じ意味?

【そもそも「お目にかかる」ってどんな意味?】

■正しく意味を理解しましょう

「お目にかかる」とは「お会いする」という意味で「会う」の謙譲語、自分を低くすることで相手を敬った言い回しです。「お目」は「他人の目」の尊敬語なので「目上の人の目」のこと、「かかる」は「留まる」という意味です。「お目にかかりたい」は「お会いしたい」、「お目にかかれて光栄です」は「お会いできてうれしい」という意味になります。

■誰に対して使える?

謙譲表現ですから自分より上位の人に。ビジネスシーンなら、役付きの取引先の方や自分の上司にも使えます。主語は自分ですが、自社の人や家族など身内を主語にした場合にも使用可能。プライベートでは、久しぶりに会った恩師に「お元気そうで何よりです。今日はお目にかかれてよかったです」などと使うこともあるでしょう。

■部下や後輩には?

仕事のできる尊敬している部下に対して、「あなたのような部下にお目にかかれて安心です」などとは言いません。仕事関係でも気軽な相手に対してなら、「お目にかかる」ではなく「お会いする」を使いましょう。


【ビジネスでの正しい使い方がわかる「〇✕例文」】

では、「お目にかかる」を使った例文を見ていきましょう。実は下記のうち最後のふたつは誤用です。正しい使い方の理解を深めるため、間違い例文も見ておきましょう。

■1:「お目にかかれて光栄です(うれしいです)」

■2:「弊社の部長の○○が、ぜひ一度お目にかかりたいと申しております」  

■3:「お目にかかれるのを楽しみにしております」

■1は初対面の相手への挨拶などによく使われます。メールなどでの事後挨拶に「本日はお目にかかれて光栄でした」と加えると好印象。「光栄」だとちょっと大げさな感じがする場合は「うれしい」を。どちらも誉れや喜びを表します。■2の主語は自分ではなく〇〇部長ですが、このように身内のことであれば自分同様「お目にかかる」が使えます。■3は、電話やメールなどでの例。目の前に本人がいる場合は、「お目にかかれるのを楽しみにしておりました」でOK!

■4:(NG例)「明日○○社の△△様がお越しになりますが、お目にかかりますか?」

■5:(NG例)「先方の担当者がお目にかかりたいとおっしゃっています」

最後の■4と5は誤用です。■4は、会話の相手が上司など目上の人の場合に起こしがちなミスですが、お目にかかる(会う)のは自分ではなく相手ですから、「お目にかかりますか?」では相手を下げた言い方に。
■5も同様。それぞれ、「明日○○社の△△様がお越しになりますが、お会いになりますか?」「先方の担当者がお会いしたいとおっしゃっています」が正解です。「お目にかかる」とへりくだるのは自分(あるいは身内)、第三者が主体の文章では使わない、と覚えておきましょう。


【同じ意味で使える「言い換え例文」】

■1:「直接お会いしてご説明申し上げたいのですが、ご都合はいかがでしょうか」

同じ謙譲表現ですが、「お目にかかる」より「お会いする」のほうが少々フランクな言い回しです。

■2:「お顔を拝見しながらのミーティングは、はかどりますね」

「お顔を拝見」も「お目にかかる」同様、へりくだることで相手を立てる謙譲表現です。

■3:「今秋には新製品がお目見えするとうかがっております」

「お目見えする」には、「(高貴な人や目上の人に)初めて会う」や「新登場」といった意味が。人物以外にも使えます。


【「お目にかかる」と「お目にかける」は同じ意味?】

とてもよく似たフレーズですが、このふたつは似て非なるもの。「お目にかかる」は「会う」、「お目にかける」は「見せる」の謙譲語です。目上の相手に何かを見せることをへりくだって表現することで、相手に敬意を示します。最後に「お目にかける」の例文もご紹介しておきましょう。

■1:「来週には新製品の試作品をお目にかける予定です」

■2:「お目にかけたいものがあるのですが、お時間はございますか?」

 

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「会えたことに誉れを感じる」「会ったことに敬意を表す」「目上の人に会いたいと伝える」「初対面での挨拶」など、さまざまなビジネスシーンで使用したい「お目にかかる」という謙譲表現。相手との関係性によって、尊敬語、謙譲語、丁寧語などを上手に使い、“敬語の達人”を目指しましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :